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- 2015/11/05 掲載
本田宗一郎氏「メーカーにとってわずかな不良率でも、買った顧客にとっては100%だ」
品質と安全はすべてに優先する
売り上げが思うように伸びないとか、利益が出ないといったことでも、もちろんおかしくなるが、最も致命傷になりやすいのが品質問題だ。たとえば売り上げの前年割れが続く日本マクドナルドはかつて「デフレ下の勝ち組」だったが、中国における鶏肉問題以降、業績の低迷が続き、いまだに復活の糸口を見つけられずに苦しんでいる。
そういうトヨタ自動車もリーマンショック後の世界的リコールによって業績が悪化、回復に数年を要することになった。そして今、三井不動産販売や三井住友建設、旭化成といった大企業が建物の安全性という品質問題に直面している。
ある程度の規模があれば、売り上げの伸び悩みや利益の低下によってすぐに経営危機に陥ることはないが、品質への信頼を失い、長い年月をかけて築き上げた「ブランド」が傷ついてしまうと、そこからの回復は決して簡単ではない。
品質改善の前提は「品質と安全はすべてに優先する」だ。モノづくりにおいてとかく企業が重視するのは「納期」であり、「コスト」となる。ましてや今日のように取引先から「もっと早く」「もっと安く」を求められると、その要求に応えようとつい「品質」や「安全」を後回しにする恐れがある。
品質や安全の追及はコストを引き上げ、納期遅れを招くからと納期やコストを優先する。たしかにその時はいいかもしれないが、たくさんの不良品が出ることは信頼の低下を招き、結果的にコストを引き上げることになってしまう。
安全の軽視も同様だ。一つの大きな事故は企業への信頼を失わせ、とても高い代償を払うことになる。だからこそモノづくりにおいては常に「品質と安全はすべてに優先する」をみんなが胸に刻んで改善に取り組むことが大切になる。
品質改善の基本は「品質は工程でつくり込む」
品質改善の基本は「品質は工程でつくり込む」だ。製品は何百点、何千点という部品から構成される。たとえば自動車なら、二万点を超える。その部品も、多くの工程を経てつくり出されている。つまり、一つの製品には膨大な工程が存在することになる。これをお客さまが満足する品質に保つには、完成品の最終検査だけでは難しい。また、最終検査で不良品をはねるのは、手直しなどのムダを生むことになる。生産効率の低下を招き、歩留まりの悪化につながるため、決して好ましいことではない。
【次ページ】不良品の存在を認めてしまうと発生する4つのムダ
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