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  • 2015/11/05 掲載

本田宗一郎氏「メーカーにとってわずかな不良率でも、買った顧客にとっては100%だ」

トヨタ生産方式の導入方法(5)品質と安全はすべてに優先する

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改善を進める時は、「改善が競争力をつけることになる」とはっきり意識する必要がある。同業他社と違いを持たない企業は競争力を失っていくため、改善ではセールスポイントをどこに求め、どれだけ磨き上げるかが問われることになる。メーカーにとってのセールスポイントは「品質」「納期」「コスト」の3つに絞られるが、なかでももっとも大切なのは「品質」であることを企業は決して忘れてはならない。

カルマン 代表取締役社長 若松 義人

カルマン 代表取締役社長 若松 義人

1937年宮城県生まれ。トヨタ自動車工業に入社後、生産、原価、購買、業務の各部門で、大野耐一氏のもと「トヨタ生産方式」の実践、改善、普及に努める。その後、農業機械メーカーや住宅メーカー、建設会社、電機関連などでもトヨタ式の導入と実践にあたった。91年韓国大字自動車特別顧問。92年カルマン株式会社設立。現在同社社長。中国西安交通大学客員教授。
著書に『「トヨタ流」自分を伸ばす仕事術』『トヨタ流「改善力」の鍛え方』(以上、成美文庫)、『なぜトヨタは人を育てるのがうまいのか』 『トヨタの上司は現場で何を伝えているのか』『トヨタの社員は机で仕事をしない』『なぜトヨタは逆風を乗り越えられるのか』(以上、PHP新書)、『トヨタ式「改善」の進め方』『トヨタ式「スピード問題解決」』 『「価格半減」のモノづくり術』(以上、PHPビジネス新書)、『トヨタ流最強社員の仕事術』(PHP文庫)、『先進企業の「原価力」』(PHPエディターズ・グループ)、『トヨタ式ならこう解決する!』(東洋経済新報社)、『トヨタ流「視える化」成功ノート』(大和出版)、『トヨタ式改善力』(ダイヤモンド社)などがある。

品質と安全はすべてに優先する

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納期やコストを優先し、品質や安全を後回しにしていると、結果としてさらに大きな対価を支払うことになる
 企業の経営はどこでおかしくなるか。

 売り上げが思うように伸びないとか、利益が出ないといったことでも、もちろんおかしくなるが、最も致命傷になりやすいのが品質問題だ。たとえば売り上げの前年割れが続く日本マクドナルドはかつて「デフレ下の勝ち組」だったが、中国における鶏肉問題以降、業績の低迷が続き、いまだに復活の糸口を見つけられずに苦しんでいる。

 そういうトヨタ自動車もリーマンショック後の世界的リコールによって業績が悪化、回復に数年を要することになった。そして今、三井不動産販売や三井住友建設、旭化成といった大企業が建物の安全性という品質問題に直面している。

 ある程度の規模があれば、売り上げの伸び悩みや利益の低下によってすぐに経営危機に陥ることはないが、品質への信頼を失い、長い年月をかけて築き上げた「ブランド」が傷ついてしまうと、そこからの回復は決して簡単ではない。

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 「名声を打ち立てるには一生かかるが、台無しにするには5分とかからない」は世界一の投資家ウォーレン・バフェット氏の言葉だが、品質を軽んじることはせっかくのブランドも業績もほんの一瞬で台無しにするほどの怖さがあることを肝に銘じることが何より大切になる。

 品質改善の前提は「品質と安全はすべてに優先する」だ。モノづくりにおいてとかく企業が重視するのは「納期」であり、「コスト」となる。ましてや今日のように取引先から「もっと早く」「もっと安く」を求められると、その要求に応えようとつい「品質」や「安全」を後回しにする恐れがある。

 品質や安全の追及はコストを引き上げ、納期遅れを招くからと納期やコストを優先する。たしかにその時はいいかもしれないが、たくさんの不良品が出ることは信頼の低下を招き、結果的にコストを引き上げることになってしまう。

 安全の軽視も同様だ。一つの大きな事故は企業への信頼を失わせ、とても高い代償を払うことになる。だからこそモノづくりにおいては常に「品質と安全はすべてに優先する」をみんなが胸に刻んで改善に取り組むことが大切になる。

品質改善の基本は「品質は工程でつくり込む」

 品質改善の基本は「品質は工程でつくり込む」だ。製品は何百点、何千点という部品から構成される。たとえば自動車なら、二万点を超える。その部品も、多くの工程を経てつくり出されている。つまり、一つの製品には膨大な工程が存在することになる。

 これをお客さまが満足する品質に保つには、完成品の最終検査だけでは難しい。また、最終検査で不良品をはねるのは、手直しなどのムダを生むことになる。生産効率の低下を招き、歩留まりの悪化につながるため、決して好ましいことではない。

【次ページ】不良品の存在を認めてしまうと発生する4つのムダ

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