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- 2015/09/15 掲載
トヨタ生産方式「改善」の7つの手順、それでも無能な上司がよく言う口癖とは
トヨタ生産方式の導入方法(3)改善の手順
1937年宮城県生まれ。トヨタ自動車工業に入社後、生産、原価、購買、業務の各部門で、大野耐一氏のもと「トヨタ生産方式」の実践、改善、普及に努める。その後、農業機械メーカーや住宅メーカー、建設会社、電機関連などでもトヨタ式の導入と実践にあたった。91年韓国大字自動車特別顧問。92年カルマン株式会社設立。現在同社社長。中国西安交通大学客員教授。
著書に『「トヨタ流」自分を伸ばす仕事術』『トヨタ流「改善力」の鍛え方』(以上、成美文庫)、『なぜトヨタは人を育てるのがうまいのか』 『トヨタの上司は現場で何を伝えているのか』『トヨタの社員は机で仕事をしない』『なぜトヨタは逆風を乗り越えられるのか』(以上、PHP新書)、『トヨタ式「改善」の進め方』『トヨタ式「スピード問題解決」』 『「価格半減」のモノづくり術』(以上、PHPビジネス新書)、『トヨタ流最強社員の仕事術』(PHP文庫)、『先進企業の「原価力」』(PHPエディターズ・グループ)、『トヨタ式ならこう解決する!』(東洋経済新報社)、『トヨタ流「視える化」成功ノート』(大和出版)、『トヨタ式改善力』(ダイヤモンド社)などがある。

異常を「現場で、現行犯でつかまえて」こそ「真因」はつかめる
1.改善すべき点を発見する
「改善すべき点は何か」を発見する。ムダには明らかなムダもあるが、隠れているムダも多い。トヨタ式に「在庫のムダは、他のムダを隠す」という言い方があるが、多すぎる在庫はつくる力の弱さを隠し、在庫というムダも「必要なもの」と誤解させることになる。在庫をぎりぎりまで減らし、緊張感を持って仕事をすることで初めて見えてくる問題もたくさんある。
全社的に「ムダとは何か」という見方を統一したうえで、社員一人一人が現状のやり方に満足するのではなく、常に「もっと良い方法はないか」「もっと安くつくれないか」と追い求める気持ちを持つことが改善すべき点の発見につながっていく。
2.現状の方法を分析する
改善すべき点が見つかったら、「現状をあるがままに正確につかむ」ようにする。推測や主観のまじった現状把握では、正確な分析やより良い改善は望めない。
トヨタ式の基礎を築いた大野耐一氏は、若いトヨタマンを現場の床に描いた円の中に何時間も立たせたことがあったが、それは「白紙になって現場をしっかりと見る」ことの大切さを教えるためだった。
こうした姿勢は異常が起きた時も同様で、異常を「現場で、現行犯でつかまえて」こそ、異常の「真因」もつかめるし、最善の改善も行うことができるというのがトヨタ式の考え方だ。
3.アイデアを得る
現状に対する新しい方法を得る段階だ。ここではいっさいの制約、判断なしに、自由にアイデアを出すことが大切になる。着想を得る段階で、改善案をつくる段階ではないからだ。
部下の思いつきやアイデアに対して、「できるわけがない」「失敗したらどうするつもりだ」とやる気をそぐ発言をする上司をしばしば見かける。こうした上司のいる企業ほど、「うちの社員にはろくなアイデアがない」と愚痴っているが、実際には「アイデアがない」のではなく、「社員のアイデアを引き出す頭のない」上司がたくさんいるだけのことだ。
最近のことだ。あるトヨタマンが「忙しくて時間も人も足りない」とOBに愚痴ったところ、OBに「それはお前の知恵が足りないだけだ」と言われたという話を聞いた。部下の知恵を引き出すかどうか、生かすかどうかはすべて上司の知恵一つである。
良いアイデアは自由な雰囲気、失敗を前向きにとらえる風土の中でしか生まれることはない。
【次ページ】「全員参加」ではなく「全員参画」という言い方を好む理由
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