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- 2015/02/25 掲載
モノづくりになぜ人間関係が必要なのか?トヨタがタテヨコナナメの人間関係を築く理由
連載:トヨタに学ぶビジネス「改善」の極意
結局のところ、対人関係以外の問題はない
アドラーは人生には、すべての人が直面する3つの主要な課題があると説いている。
1つ目は仕事の課題だ。社会の一員として生きるための仕事をいかに見つけるかという課題である。2つ目は交友の課題だ。仲間の中でいかに自分の居場所を見つけるかである。3つ目は愛と結婚の課題だ。男女の付き合いや結婚に関する課題である。
つまり、人生の課題はすべて、人と人の結びつきに関するものになる。アドラーは人と人の結びつきを「共同体感覚」と呼んでいたが、それは他の人を「敵」ではなく、「仲間」と見なすことを基礎にしている。そうであってこそ、人と人は協力することができるからだ。
とはいえ、対人関係はいつもうまくいくとは限らない。企業を退社する時、「仕事のやりがい」や「労働条件」などさまざまな理由を人は口にするが、その根底には人間関係の難しさ、煩わしさがあることが少なくない。まして今日のように雇用形態などが多様化してくると職場で円滑な人間関係を築き上げるのはとても難しくなっている。
しかし、その一方でほとんどの人は不完全さ、弱さを持っており、一人では困難に立ち向かうことが難しい場合も、良きパートナーや友人、仲間の協力を得ることで大きな成長や成功を手にすることもできるのである。
人は対人関係に悩み、しかし対人関係によって何かを成し遂げることもできる。対人関係は個人にとってだけでなく、企業においてもとても大切な課題なのである。
トヨタは非常に早い時期から人間関係の構築にとても力を入れていた。理由は仕事が「人と人」「人から人へ」という関わりの中で進んでいく以上、そこにしっかりとした人間関係がなければ「より良いモノをより早くより安く」つくることが絶対に不可能だからである。
ある年の4月、駿河湾に浮かぶ客船「ふじ丸」に500名近いトヨタ社員が乗船していた。名古屋港を出発して一泊二日をかけて行われる「洋上セミナー」である。
日程はぎっしりと埋まっている。講演会やグループ討論のほかに、洋上夜祭なども開かれるセミナーの参加者はトヨタのあらゆる部署から集められたリーダーであり、組織をタテヨコで切り、もれなく選び出されている。
【次ページ】タテヨコナナメの人間関係を築くコミュニケーション組織
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