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  • 2016/03/08 掲載

医療のビッグデータ活用最前線 アメリカ国立衛生研究所、セネガル通信会社の事例

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医療現場はビッグデータの宝庫です。電子カルテをはじめとして、心電図・血液検査・画像診断など無数のデータが蓄積されています。大量の情報から意味のある知見を見出すビッグデータ技術が医療業界でも活用される期待が高まってきました。ビッグデータは、医療の質を向上させ、人体の秘密を解明し、難病の治癒へつなげることができるのでしょうか。アメリカ国立衛生研究所の「ヒトコネクトーム計画」や、セネガルのオレンジ・テレコムによるエボラ出血熱のリスク推定の事例を紹介します。
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グローバルで進む医療のビッグデータ活用

医療業界の諸問題解決の糸口となるビッグデータ

 日本の医療費は38兆円を超えるとされ、ヘルスケア業界は一大産業となっています。高齢社会の加速による治療・介護の需要拡大、医療費高騰とそれを抑えるための健康管理、地域ごとの偏在を含む医療従事者不足、難病・伝染病対策といったさまざまな問題が指摘されてきました。しかし、医療業務の複雑さ、リスクの高さなどから、効果的な対策がとれず、新たな解決策が求められているのが現状です。

 アメリカでは投薬ミスなどの医療過誤で年間4万4000人以上の患者が死亡し、交通事故やエイズよりも大きな死因になっているという調査が示されています。特に、慢性疾患を抱え、複数の症状に対して治療を受けている患者が異なる医師から診療を受ける際に、どのような薬が処方されているのかといった情報が共有されておらず、禁忌の薬を処方してしまうなどの人的過誤が散見されています。医療データを収集し、共有する仕組みが必要とされているのは明らかでしょう。

 また、製薬業界では高い開発コストが問題になっています。ひとつの薬が患者の手元に届くまでには2000億円以上の研究開発費用がかかり、その歳月は10年に及ぶ場合があります。特に、脳関連の創薬には困難があり、アルツハイマー病に関する創薬の成功確率は0.4%に過ぎないと言われます。

 この理由としては、未だに問診などの主観的な診断に頼っており、薬の効用を正確に計れない点が指摘されました。効能が存在すると信じて数年間の治験を行った後で、やはり効能がなかったと分かるケースがあるため、研究費用や開発期間が跳ね上がる結果に陥るのです。最近では、画像診断・遺伝子解析などの客観的なデータによる研究開発が進んできました。

 こうした中で、医療業界にある多くの問題を解決する鍵を握るのが“ビッグデータ”です。もともと医療現場には多くのデータが存在しています。血液検査・レントゲン写真・脳波・遺伝子・脈拍などの生体情報や、カルテ・処方箋・家族病歴などの診療情報などが蓄積されています。また、フィットビットなどのウェアラブル端末による生体情報、周辺環境の計測により、手に入れられるデータは増える一方です。ビッグデータ技術の発展と共に、現代特有の解決法が医療業界に必要とされています。

医療とビッグデータの組み合わせは、やはりお金になる

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 患者の視点からビッグデータに期待されるのは、医療の質を向上させる点に尽きるでしょう。どのような病歴でどのような治療がなされてきたのかを明確にし、テーラーメイド治療の実現が望まれます。また、居住地域、家族の病歴、生活習慣などから羅漢リスクを推定し、病気を未然に防ぐ取り組みも価値が高いと考えられます。

 医療関係者の観点からは業務負荷の軽減が期待されます。症例の少ない事例や専門外の疾患を扱う場合など、人工知能技術を活用した診断支援ツールの活躍の余地は大きいと見られます。最適な医療業務の共有や、遠隔地での医療行為、ナースコールの自動化・高度化など、生産性向上のアイデアは尽きません。

 産業界からは大きなビジネスが生まれる期待が膨らんでいます。過去にあった医療業界における大きな発明は、少しずつビジネスにもつながってきたからです。例えば、ヒトゲノム計画は人間が持つ遺伝子を明らかにする国際的なプロジェクトでした。

 新しい遺伝子解析技術とスーパーコンピュータによる情報処理の力により、医学の発展に貢献しています。この間、1988年に始まったアメリカ政府による140億ドル以上の投資は1兆ドルの経済効果を生んだとされ、2010年単年でも310億ドルのGDPに寄与したとの調査があります。医療とビッグデータは大きな産業につながっているのです。

【次ページ】セネガルのオレンジ・テレコムがエボラ出血熱リスクを推定

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