• 会員限定
  • 2016/05/19 掲載

トヨタ、ウーバー、京都府京丹後市などが挑戦、自動車x自治体xITは交通難民を救うか

  • icon-mail
  • icon-print
  • icon-hatena
  • icon-line
  • icon-close-snsbtns
記事をお気に入りリストに登録することができます。
買い物難民や医療難民が増え続ける過疎地の高齢者に新たな移動手段を提供する実証実験が、愛知県豊田市など全国各地で進められている。過疎地を抱える自治体は民間のバス路線廃止やタクシー会社の廃業を受け、これまでもコミュニティーバスの運行や予約制の相乗りタクシー導入などを進めてきた。しかし、すべての地域を網羅することができないばかりか、過疎の進行に対応が追いつかない。そこで情報通信技術や超小型電気自動車など最新技術を導入し、新しい移動手段を模索しているわけだ。名古屋大未来材料・システム研究所の三輪富生准教授(交通計画学)は「高齢者に多様な新移動手段を提供することが過疎地の課題解決につながる」と指摘する。新たな移動手段は過疎地を救うことができるのか。

政治ジャーナリスト 高田 泰(たかだ たい)

政治ジャーナリスト 高田 泰(たかだ たい)

1959年、徳島県生まれ。関西学院大学社会学部卒業。地方新聞社で文化部、地方部、社会部、政経部記者、デスクを歴任したあと、編集委員を務め、吉野川第十堰問題や明石海峡大橋の開通、平成の市町村大合併、年間企画記事、こども新聞、郷土の歴史記事などを担当した。現在は政治ジャーナリストとして活動している。徳島県在住。

photo
過疎地で増加する交通難民。自治体は自動車業界、配車サービス、研究機関と連携して実証実験に力を入れ始めている。

豊田市ではマイカーへの相乗り実験

関連記事
 豊田市足助地区では、名古屋大、トヨタ自動車、豊田市、足助病院などが協力して実証実験を進めている。トヨタ自動車系のトヨタ・モビリティ基金(東京)が名古屋大と共同研究契約を結び、今後3年間で3億6,000万円を助成する。高齢化が進む地域で住民の足となる交通モデルを構築するのが狙いだ。

 名古屋大は1月から、住民がスマートフォンやタブレット端末でマイカーへの相乗りを予約できる手配システムを開発、10世帯を対象に試行運用してきた。4月からはトヨタ自動車が加わり、実証実験を本格化させた。対象者も最大200世帯を目指している。

 マイカーへの相乗りを実験の中心に据えているが、1~2人乗りの電気自動車からバスへ乗り換える方式も試す計画。「今後、バスの利用やタクシーの予約も管理できるシステムを開発する」と名古屋大の三輪准教授。最終年には自動運転機能を持つ車の導入も考えている。

 足助地区は豊田市のほぼ中央部に位置し、2005年の平成の大合併で市に編入された。中山間地域が多く、人口約8,000人のうち、4割弱を高齢者が占める。市全域の高齢化率(65歳以上人口が総人口に占める割合)は21%だが、足助地区は37%に達している。

 公共交通機関は週に1日走るコミュニティーバスしかないところもある。運転免許を持たない高齢者の中には、買い物や病院通いに苦労する人が少なくない。

 市交通政策課は「地区内でも場所ごとに最適の移動手段があるはず。実証実験を通じ、それぞれの場所にどんな方法が合っているのか見極めたい」と狙いを語る。

 トヨタ・モビリティ基金理事長の豊田章男トヨタ自動車社長は「足助地区の事業で中山間地域の高齢者が自由に移動できる新しい交通モデルを構築し、それが地域活性化につながることを願う」とのコメントを発表している。

上里町では超小型電気自動車に住民が試乗

 埼玉県上里町は2015年11月から2016年2月まで、軽自動車より小さい2人乗りの電気自動車の試乗実験を実施した。群馬県境に接した埼玉県最北端にあり、人口約3万人。南東部に大規模な工業団地を持つが、北部は田園地帯が広がり、公共交通機関が発達していない。

photo
上里町内を走る超小型電動自動車のこむぎっちカー=プラン提供

 実験に使用された車は、町内の環境関連企業プラングループの「HTM-Japan」(大村広司社長)がイタリア製の車両を国内仕様に改良した「こむぎっちカー」。全長2.2メートル、幅1.2メートル、高さ1.6メートルで、最高時速50キロ。一般的な駐車場1台分のスペースに3台駐車できる大きさだ。

 高性能の鉛電池を搭載し、家庭用のコンセントで8時間充電すれば、約60キロの走行が可能になる。長距離走行には不向きだが、買い物や病院通いなど近距離の移動には支障がない。燃費は一般車両の5分の1ほどで済むという。

 町はこむぎっちカー6台を町内16世帯に貸し出し、実際に公道を走ってもらってデータを集めた。さらに太陽光発電による充電もテストした。すぐに購入を希望する世帯はなかったが、乗り心地はおおむね好評で、地球環境に優しい点をその理由に挙げる利用者が多かったという。

 報告会が近く開かれ、実証実験の結果が発表される見通しで、町まち整備環境課は「今回の実験結果も踏まえ、さまざまな可能性を模索して高齢者らの利便性向上につながる新移動手段を見つけたい」と意欲を見せた。

過疎地の足として導入、実証実験された主な事例
自治体事例
北海道帯広市タクシーと路線バスを融合させた予約式相乗りタクシー
青森県佐井村ボランティアが住民を運送
山形県川西町公共施設向けに限定した相乗りタクシー
山形県川西町NPO法人による自家用車有償運送
京都府舞鶴市地域住民によるバス運行
徳島県上勝町構造改革特区指定による自家用車有償運送
徳島県上勝町事前予約制の相乗りタクシー
熊本県水俣市市によるコミュニティバスの運行
(出典:国土交通省)
【次ページ】各地で行われたウーバー導入、その反応は

関連タグ

関連コンテンツ

あなたの投稿

    PR

    PR

    PR

処理に失敗しました

人気のタグ

投稿したコメントを
削除しますか?

あなたの投稿コメント編集

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

通報

このコメントについて、
問題の詳細をお知らせください。

ビジネス+ITルール違反についてはこちらをご覧ください。

通報

報告が完了しました

コメントを投稿することにより自身の基本情報
本メディアサイトに公開されます

必要な会員情報が不足しています。

必要な会員情報をすべてご登録いただくまでは、以下のサービスがご利用いただけません。

  • 記事閲覧数の制限なし

  • [お気に入り]ボタンでの記事取り置き

  • タグフォロー

  • おすすめコンテンツの表示

詳細情報を入力して
会員限定機能を使いこなしましょう!

詳細はこちら 詳細情報の入力へ進む
報告が完了しました

」さんのブロックを解除しますか?

ブロックを解除するとお互いにフォローすることができるようになります。

ブロック

さんはあなたをフォローしたりあなたのコメントにいいねできなくなります。また、さんからの通知は表示されなくなります。

さんをブロックしますか?

ブロック

ブロックが完了しました

ブロック解除

ブロック解除が完了しました

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

ユーザーをフォローすることにより自身の基本情報
お相手に公開されます