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  • 2017/09/25

GEやシーメンスと提携するArterysとは? AI活用の心臓MRIの画像診断ベンチャーの今

心臓MRIは動いている心筋や血流の動きを撮影できる強力な検査手法だが、その診断は複雑で専門家でも時間がかかる。米国のベンチャー企業 Arterysは、膨大な心臓MRIデータをクラウド上に蓄積し、人工知能(AI)で診断を支援するソフトウェアを開発した。その高い診断精度から、クラウド技術とAIを使った診断ソフトとしては世界で初めて米国FDAからの認可を受けた。GEやシーメンスとも提携し、資金調達にも成功したArterysは、人体の他の部位にもAI技術を応用し、さらなる業容拡大を計画している。

佐藤 隆之

佐藤 隆之

Mint Labs製品開発部長。1981年栃木県生まれ。2006年東京大学大学院工学系研究科修了。日本アイ・ビー・エムにてITコンサルタント及びソフトウェア開発者として勤務した後、ESADE Business SchoolにてMBA(経営学修士)を取得。現在は、スペイン・バルセロナにある医療系ベンチャー企業の経営管理・製品開発を行うと共に、IT・経営・社会貢献にまたがる課題に係るコンサルティング活動を実施。Twitterアカウントは@takayukisato624。ビジネスモデルや海外での働き方に関するブログ「CTO for good」http://ctoforgood.com/を運営。

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Arterysが開発したのは、クラウドに蓄積した膨大な心臓MRIデータを人工知能(AI)で解析し、診断を支援するソフトウェアだ
(© weyo – Fotolia)


心臓MRIの画像診断支援にAIの「深層学習」を活用

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 日本人の死因の中で、がんに次いで2番目に多い心疾患。心臓に血液を送る動脈が狭くなったり、血液の流れを調整する弁が上手く開かなくなったりすると、胸痛、息切れ、呼吸困難などの症状が現れる。血液の流れが滞り、酸素や栄養が心筋(心臓の筋肉)に届かなくなると致命的な症状に至る。

 心筋や血管の動きを確認するのに有効な心疾患検査の手段として、MRI(磁気共鳴画像)の利用が増えてきた。放射線被ばくの心配がないなど、人体への負担が少なく、かつ動いている心臓を画像化して分析できるため、血管異常の早期発見に有効な手段とされている。

 MRI検査では医師が白黒の画像をソフトウェア上で確認し、心臓の形状や梗塞(血管の詰まり)の有無を明らかにする。撮影時に造影剤を使用して血管を識別しやすくする手法も提案されているが、心疾患の診断は複雑で時間がかかり、高い専門性が求められる。そこで、医師の診断を補助するためにAI技術が応用されるようになったのだ。

 2007年に米国で創業されたArterysは、深層学習と呼ばれるAI技術を用いて心臓MRIの画像を分析する世界初の心疾患診断支援ソフトウェアを開発した。心臓の形状や動きを診断するのに1時間かかっていた作業がわずか数秒で終わり、より正確で一貫性のある診断ができるようになるという。

 AIを活用したこの製品 Cardio DLを用いて10分程度のMRI検査を行った後、撮影された画像データはArterysのサーバへ送信される。そして、サーバ上に蓄積された数千件の心臓MRIの画像を基に訓練されたAIによって診断が行われる。

 また、診断結果の閲覧に専用ソフトは不要で、一般的なWebブラウザで作業が完結する。心臓の容量などの定量的な数値が含まれるレポートを出力したり、必要に応じてAIが識別した心筋の輪郭を手作業で修正したりすることも可能だ。

米国FDAから承認され、欧州CEマークも取得

 Arterysによると深層学習の診断精度は極めて高い。経験のある医師が実施した診断と比べても、AIの診断誤差は許容できる範囲にある。この高い診断精度は、同社のクラウド上に蓄積された大量の心臓MRIのデータによって実現される。同社のサーバにMRI画像が転送されるたびにデータが蓄積されていくため、さらに高い精度の診断が可能になる仕組みだ。

 その高い診断精度が認められ、2017年1月、ArterysのソフトウェアはFDA(米国食品医薬品局)から医療向け機器としての認可を受けた。深層学習とクラウドを診断向けに利用するソフトウェアとしては、世界で初めての事例とされている。

 一般的に、深層学習技術は、その診断を下した理由を人間が理解できる形で出力しないため、信頼性に対する不安が叫ばれている。それでもFDAによって認可されたのは、定量的な画像解析の精度が高く、安全性が担保されていると判断されたからだろう。

 2016年12月には欧州で健康・安全に配慮した製品に付与されるCEマークがArterysの製品に認められている。欧州と米国での商品化のより一層の促進が期待されている。

 AI技術に先駆けて、同社は心臓MRIの血流を可視化するソフトウェアを発表している。3次元空間、1次元に値する時間経過、そして、血流の方向として3次元を明らかにできるため、7次元データ解析と称される。血流の方向が色によって表現され、心臓の動きがアニメーションで表現される可視化技術は、素人目に見ても息を飲むばかりだ。

 可視化技術は、MRIの装置製造の大手でもあるGEと提携してViosWorksという製品として提供されている。Cardic DLと同様、MRIで取得された画像がクラウド上へと送信され、解析結果がブラウザ上へと返される。

 従来は1時間以上かかり、ノイズを少なくするために何度も息を止めて撮影しなければならなかったMRI検査が、息を止める必要のない10~20分の短い検査で高精細の画像が得られるようになった。

 Arterysのビジネスモデルは、OEMによって加速されている。上記のようにGEのシステムと提携し、多くの顧客からデータを獲得できるようになった。また、同じくMRI装置の製造大手であるシーメンスとの提携もあり、より多くの顧客へとサービス展開が可能になるだろう。

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Arterysのビジネスモデル

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