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  • 2018/07/20

VR/ARが「まだ」成功していないワケ

デジタルの予言者デイビッド・シング氏が語る

ITツールの革新を背景にマーケティングの在り方は大きく変貌を遂げつつある。すでにスマホはグローバルで20億台以上も普及し、“個客”の把握にも広く活用されている。VR(Virtual Reality:仮想現実)やAR(Augmented Reality:拡張現実)など、新技術の登場も相次ぐ。ただし、成果を上げるためには、それらを単に利用するだけでは不十分だ。デジタル広告事業とTechCrunchやEngadgetなどのメディアブランド運営事業を展開するOath(旧AOL)のDigital Prophetであるデイビッド・シング氏が、スマホやウェアラブルデバイスに代表されるITツールで目指すべき方向性と活用の在り方について、自身の見解を披露した。

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Digital Prophet(デジタル領域の預言者)として海外のカンファレンスに招かれることも多いOathのデイビッド・シング氏


コミュニケーションには「文化」と「規約」が必要

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 マーケターにとっての最終目標は、価値に対価を支払ってもらえるよう、ターゲット顧客の心を動かすことである。ITの革新を背景に、そのためのツールや手法は多様化と高度化を続ける一方だ。

 「ただし、そこには1つ大きな欠落が存在しているのではないでしょうか」――こう問いかけるのは、Digital Prophet(デジタル領域の預言者)として海外のカンファレンスに招かれることも多いOathのデイビッド・シング氏だ。

「たとえば、スマートグラスは確かに新たな情報の配信チャネルといえます。しかし、マーケティングに活用できるかといえば話は別です。そこには能動的に使いたいと思わせるだけの“楽しさ(fun)”がなく、コミュニケーションの成立が極めて困難だからです」(シング氏)

 人がコミュニケーションを取ろうとするのは、何らかの楽しさがあるからだ。シング氏によると、楽しさの醸成にはコミュニケーションの土台としての文化(culture)と、その上で情報をやりとりするための規約(code)の2つが不可欠だ。

 スマートグラスは、規約は備えるが文化に欠け、現段階ではコミュニケーションの重要性が増すマーケティングのツールにはなり得ない。VRやARが大きな話題を呼びながら、いまだ決定的な成功例がないことも、同様の理由で説明できるという。

ウェアラブルデバイスに欠けている「新体験」

 とはいえ、ツールの進化自体にはシング氏は非常に肯定的だ。同氏の苦言は、現状のままでは新ツールが将来的にニッチな存在になりかねないことへの危惧があってのことである。

「我々は、いわば線状(linear)の世界を生きています。対して、VRを使えば、たとえば映画で監督以外の視点から世界を眺めるといった具合に、異なる視点を手に入れることができます。その魅力は決して小さくないことは明らかです」(シング氏)

 好例としてシング氏が紹介したのは、VRゴーグルを使った高級スポーツカーの精巧なドライビングシミュレータだ。自動車は多くの人にとって身近なものだけに、語り合うに足る文化となり得る。加えて、気軽には乗れない高級車だけに、現状の延長とは異なる視点での運転体験が可能だ。これを試すことを嫌がる自動車好きはいないはずだ。また、試してみれば、運転体験を他人に伝えたいと思うのは当然のことだろう。

 一方、現在のコンシューマー向けITツールは、IoTの進展を背景に、前述したスマートグラスをはじめウェアラブルな方向で進化を続けている。そこでシング氏が問題視するのが、多くの製品での「新たな経験」の欠如だ。

「代表例がスマートウォッチです。確かにきれいで、アクセサリーとして使うこともできますね。ですが、基本的にスマホ以上のことはできません。これでは新体験は望むべくもないのです」(シング氏)

 対してシング氏が期待するのは、次のような製品だ。まずはウェアラブル型の物理的な衝撃を装着者に与えるリストバンド。この製品を応用すれば、たとえばリビングルームでのスポーツ観戦中に、選手が受けた衝撃を体感することも可能だ。また、ICタグを埋め込んだスマートスーツを着用すれば、袖をかざすだけで決済が行えるようになり、財布を気にすることなく外出できるようになる。

「マーケティング戦略が各種データを基に緻密に立案されていることを考えると、これらの新製品はばかばかしいものに思えるかもしれません。ニーズに直結していない技術も確かに多い。しかし、テレビや映画、スマホ、ウェアラブルなどのチャネルで、それらがどう使えるかをぜひ想像してほしいのです。これまでなかった体験から新たなマーケティングの突破口を見出すことも、決して夢物語ではないのですから」(シング氏)

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