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  • 2019/03/08 掲載

23年連続で「東京一極集中」、繁栄する東京と疲弊する地方の構図は変わらない

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東京一極集中の是正が一向に進まず、むしろ加速傾向にあることが総務省の2018年住民基本台帳人口移動報告で分かった。東京圏1都3県(東京、神奈川、埼玉、千葉)の外国人を除いた転入超過数は過去最高で23年連続。安倍政権は2020年までに東京圏の転出入を均衡させる目標を掲げているが、達成は絶望的な状況に追い込まれている。明治大政治経済学部の加藤久和教授(人口経済学)は「東京一極集中はもうしばらく続くとみられる。弊害を考えると真剣に対策を考え直す時期に来ているのでないか」と指摘する。史上最長の好景気といわれる中、繁栄する東京の裏側に疲弊を続ける地方の姿が浮かび上がる。

政治ジャーナリスト 高田 泰(たかだ たい)

政治ジャーナリスト 高田 泰(たかだ たい)

1959年、徳島県生まれ。関西学院大学社会学部卒業。地方新聞社で文化部、地方部、社会部、政経部記者、デスクを歴任したあと、編集委員を務め、吉野川第十堰問題や明石海峡大橋の開通、平成の市町村大合併、年間企画記事、こども新聞、郷土の歴史記事などを担当した。現在は政治ジャーナリストとして活動している。徳島県在住。

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神戸市の中心部三宮地区。人口減少に歯止めをかけるには、重厚長大産業からの脱却が求められている
(写真:筆者撮影)

東京圏の転入超過、日本人に限れば4都県とも増加

 総務省によると、東京圏の転入超過は外国人を除いて13万5,600人で、前年に比べて1万5,821人増えた。内訳は東京都8万2,774人、神奈川県1万8,866人、埼玉県1万7,036人、千葉県1万6,924人。日本人の転入超過数は4都県とも拡大している。

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外国人を除く東京圏転入超過数の推移

 東京圏の転入超過数はリーマンショック直後、減少が続いていたが、景気回復とともに拡大に転じ、歯止めがかかる兆しが見えない。2012年に登場した安倍政権の経済政策アベノミクスが効果を発揮するとともに東京一極集中が加速する皮肉な結果が出ている。

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 年代別に見ると、0~4歳、55~74歳で転出超過となったが、それ以外の世代は転入が超過した。特に目立つのが15~29歳の若者で、転入超過数の9割以上をこの年代が占めている。大学進学や就職、転職を機に東京圏へ移動する若者が増えていることがうかがえる。

 転入超過の都道府県は東京圏以外だと、大阪府、愛知県、福岡県、滋賀県だけ。残り39の府道県は転出超過となっている。しかも、東京圏の転入超過数が4都県そろって1万人を超えているのに対し、他の転入超過4府県はいずれも5,000人に満たない。

 三大都市圏でみても大阪圏(大阪、京都、兵庫、奈良)は外国人を除いて7,907人、名古屋圏(愛知、岐阜、三重)は7,440人の転出超過。人口獲得の点では、東京圏が依然として独り勝ち状態を続けている。

 転出超過数が大きい都道府県は、茨城県がトップで、福島県、新潟県、長崎県、青森県と続く。転出先はほとんどの都道府県で東京圏の比率が高い。全国1,719の市区町村別にみると、転出超過が全体の8割弱の1,325を占めるのに対し、転入超過は2割強の394にとどまった。転入超過の市区町村の約4分の1が東京圏に位置している。

効果がまだ見えない安倍政権の地方創生策

 安倍政権は東京一極集中の是正に向け、2014年から専任の担当大臣を置いて地方創生を看板政策の1つに掲げてきた。地方の活性化策を積極的に支援するとともに、2020年までに東京圏の転出入を均衡させる内容だ。

 それを達成するために打ち出したのが、地方に10万人の雇用を創設、東京圏への転入者を6万人減らし、東京圏からの転出者を4万人増やす計画。このため「地方創生バブル」といわれるほど多額の予算を投入し、数々の施策を展開してきた。

 主な施策は

・地方創生関係の交付金を設けて地域活性化事業を支援
・中央省庁や政府機関の地方移転
・民間企業の本社機能地方移転
・東京23区内での大学新増設の抑制


 など。しかし、中央省庁などの地方移転は文化庁の京都移転が決まった以外、大きな成果を上げられていない。民間企業の本社機能移転も少数にとどまっている。国の交付金を受けた事業はどこも似たり寄ったりで、効果を疑問視する声が出ている。

 子育て施策の充実で人口のV字回復を達成した兵庫県明石市や、過疎の山村であるにもかかわらず若者の移住で人口減少に歯止めをかけつつある岡山県西粟倉村のような事例はあるが、いずれも自治体独自の工夫と努力で現状を打開したものだ。安倍政権の地方創生策が十分な効果を発揮しているように見えない。

【次ページ】高度成長支えた港湾、工業都市の苦境が深刻に

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