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  • 2015/12/16 掲載

TwitterをB2B企業がどう活かした?森田アルミ工業の「中の人」が明かした深謀遠慮(2/2)

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さまざまな企業との交流が社内を変えることに

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森田アルミ工業 営業部 プロダクトデザイン課の野際 万佐子さん。Twitterに限らず、Facebookなど、Web全般の「中の人」を手がけている

 ゆるめにツイートするといってもどの程度の“ノリ”まで許されるのか、最初の1、2年は手探り状態ながらも、それでも少しずつ手応えをつかんでいったという野際さん。1つの転機となったのは、2013年暮れ、シャープの公式アカウントが森田アルミ工業のWebサイトを取り上げてツイートしたこと。同じ大阪の企業で、おしゃれなWebサイトを持つ企業があるとシャープがツイートし、大きな反響があったそうだ。

「それをきっかけにシャープさんとTwitter上で交流が始まり、あるとき弊社に遊びに来たいという話になりました。最初は社交辞令だろうと思っていたのですが、中の人(シャープのTwitter担当者)が本当にいらっしゃることになったのです」

 その話を受けて社内は騒然。「なぜシャープのような有名な企業が、うちのような中小企業に来るのか。それもTwitter経由で…」と驚かれたという。面会には上司だけでなく社長も同席。エンドユーザーとのエンゲージという面で先行しているシャープの担当者から効果や苦労談を聞いたことで、それまではまったく関心を示さなかった社長や上司にもTwitterの重要性を認識してもらえるようになったという。

「その後はさらに色々な企業アカウントとも関わりが広がり、Twitter上でのコラボレーション企画がテレビで紹介されたりして、Twitterの効果について社内認知も広がっていきました」

 企業の公式アカウント同士のコラボレーションは話題作りとして大きな役割を担っており、注目を集めることもできるので、ユーザーとのエンゲージを強める効果も大きい。もちろんTwitterを使わなくても企業同士でコラボレーションイベントを開催することはできるが、Twitterを使うことでイベント企画の順序やスピード感が大きく変わったという。

「従来なら、企画書を書いて費用を計算して社内で承認を取り付け、それからコラボレーション可能な企業に打診して回るという順序になります。これは時間がかかるし、確実に目当ての企業とコラボレーションできるとは限りません。Twitterはこれらを全部すっとばしてしまうんです。コラボレーションしようという話が先にあり、それを上司に話して許可をもらうので、あっという間に話が決まります」

 実施すると決まれば、本人がどれだけ没頭して楽しめるか。そこにためらいがあると、フォロワーがついてきてくれない。野際さんは「公式アカウント同士の会話やコラボレーションはTwitter上に展開されるエンターテインメント」と言い切る。楽しくやっている様子を見せれば、人は集まってくる。

「でも、コラボレーションすると決まってから展開されるものばかりではありません。自社製品を他の企業アカウントに贈るのを私たちは“送りつけテロ”と呼んでいますが、これは本当に前触れなく来ることが多いです。驚きますが、それをいかに面白くしていくかが腕の見せ所で、私自身も楽しんでいます」

社内の同僚よりも他企業の公式アカウント担当者がいい相談相手に

 ゆるく楽しいツイートと他の企業アカウントとの関わりで有名アカウントのひとつとなった森田アルミ工業公式アカウントだが、そこに至るまでにさまざまな努力があったのは前述の通りだ。それらの経験から野際さんは、これからTwitter公式アカウントを開設する企業や、公式アカウントの扱いに悩んでいる企業に向けて次のようにアドバイスする。

「それぞれの企業により、Twitterを使う目的や目指すゴールには違いがあると思います。たとえば弊社はB2Bが中心なので、Twitterは製品の宣伝として使うよりも企業の認知度向上を目的にしています。ブログにはブログの、FacebookページにはFacebookページの役割を持たせており、それぞれの明確なゴールを決めた上で、各メディアからの流入など効果を示せる数字をきっちり示して、社内に重要性を理解してもらうようにしています」

 また、Twitterに投稿するネタがないと悩んでいる場合には、社内を見回してもらいたいと言う。自社では当たり前のことでも、他人から見れば非日常的で面白い話というのはいっぱいある。「自分たちの当たり前をいかに客観視できるか」、野際さんは常にその視点を忘れないよう心がけているそうだ。

「弊社では男性の新入社員は、ほとんどが製造現場を経験してからさまざまな部署へ配属されるので、だれでも加工技術を持っています。そのため、オフィスのちょっとした小物、たとえば傘立てが欲しいときには端材から簡単に作ってしまいます。社内では当たり前のことなのですが、こんな話も他業界から見れば面白いネタのひとつですよね」

 他企業の公式アカウント運用者とのリレーションを構築できると、運用が楽になるだろうともいう。ソーシャルメディアの担当者は、業界も社内での立場も年齢も違うが、同僚同士のように同じ悩みを抱えて日々ソーシャルメディアに向かっている。同じ業務に就いているという点で、社内の同僚よりいい相談相手になることもあるという。

「担当者同士で飲み会を開いて悩みを相談しあったりしているうちに、仲間意識も強くなっていきます。社内で悩んでいるのであれば、他社の公式アカウントに相談したり、集まりの場に参加してみるのもいいと思います」

 ゆるい発言の多いTwitterの公式アカウントは、ともすれば遊んでいるように見えることがある。しかし、成功しているアカウントは、その裏で明確に自社のゴールを定め、そのゴールに向けた最良の手段を常に模索しながら使いこなしている。人気の秘密は、そのたゆみない努力のたまものと言ってよさそうだ。

(聞き手:編集部 松尾慎司 構成:重森大)


【訂正情報 2015/12/16 16:59 修正】
本記事の一部に誤りがありました。ご迷惑をおかけした読者ならびに関係者にお詫び申し上げます。
(誤)シャープの公式アカウント
(正)シャープの公式アカウント
※通称白シャーさまではなく、赤シャーさまでした。

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