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3月18日、公益社団法人企業情報化協会(以下、IT協会)の主催で「IoT for ビジネス革新シンポジウム2016」が開催された。基調講演に登壇したのは、セブンアンドアイホールディングス(以下、セブン&アイ)執行役員 システム企画部 シニアオフィサーの粟飯原 勝胤氏。粟飯原氏は講演の中で、同社が進めるオムニチャネル戦略とその中核を担うECサイト「Omni7(オムニ7)」について、最新の動向を解説した。
IoTによるビジネス革新コンソーシアム準備委員を旗揚げ
「IoT for ビジネス革新シンポジウム2016」の開催にあたり、理事長である大森俊一氏は「IoTの“I”は、本来はインターネットの意味だが、どうも国内ではイントラネットの“I”に思われる」と指摘。
「バリューチェーンやサプライチェーンのように、なかなか外に広がる発想が少ない」と懸念を表明した。
「インダストリー4.0でも、今後はコネクティビティが重要視されている。当然ながら見える化も求められる。IT新潮流のなかでは、これらの技術を統合し、最適化していくことが重要なポイントになる」(大森理事長)
一方、グローバル対応についても、まだイントラネット的な領域が企業内で統合できていないとして、「このバリアーを外すために、まさにIoTが情報部門の最適化ツールになりえる」と語り、IoTによるビジネス革新コンソーシアム準備委員を立ち上げることも併せて発表した。
守り続けてきた「変化への対応」と「基本4原則の徹底」
続いてセブン&アイの粟飯原氏が、同社のオムニチャネル戦略をテーマに基調講演を行った。粟飯原氏はまず、セブン&アイが、世界でも類を見ないほど多種多様な業態を有する特殊な流通グループであると説明する。
「セブン-イレブンは、国内に1万8500店舗を構えている。また総合スーパーのイトーヨーカドー、食品スーパーのヨークマート、ベビー用品店の赤ちゃん本舗、外食のデニーズ、通販のニッセン、ネット通販のセブンネットショッピング、セブン銀行など、すべてを数えると150にも上る」(粟飯原氏)
また店舗数の多さも大きな特徴だ。セブン-イレブンも含めると、国内で2万店舗に手が届く勢いだ。
「国内では、1日に2050万人のお客さまが訪れる。日本の人口を考えると、ほぼ2割が利用し、一秒間に換算すると250人が来店する計算だ。グループ総売上高は10.2兆円で、ウォルマートに次ぐ世界2位に位置している」(粟飯原氏)
これだけ多くの顧客に支持されていることがセブン&アイの大きな財産になっているが、実は同グループの成長基盤は目に見えない部分にもあるという。
「それは、経営基盤とビジネスインフラに磨きをかけていることだ。経営基盤については、当たり前を愚直にやり続けていることが外部から評価されている。またビジネスインフラについては、ITシステムはもちろん、専用工場や、ロジスティックス、流通などを進化させてきた。なかでも時代に応じた“変化への対応”と“基本4原則の徹底”という2つの方針は、40年間ずっと一貫したスローガンになり、守り続けてきた」(粟飯原氏)
たとえば変化への対応という点では、公共料金や銀行ATMも、同社が初めて導入したものだ。一部地域では、マイナンバーを使って、コピー機で住民票や印鑑証明などの証明書も受け取れるようになっているという。
一方、基本4原則では「品ぞろえ」「鮮度管理」「クリーンネス」「フレンドサービス」という基本を守り続けるマネジメント体制も重視してきた。さらに商品の売れ筋をみて品ぞろえを充実させ、商品発注後に検証を繰り返す「単品管理」の思想も徹底。ちなみに米国の流通業界では「タンピンカンリ」という言葉が日本語で通じるようになったそうだ。
セブン&アイならではの独自オムニチャネルを模索
では、順調に成長を持続してきた同社が、なぜオムニチャネル戦略に舵を切ったのか。その理由には小売業を取り巻く社会環境の変化があった。1970年代の高度経済成長から、1980年代のバブル後、日本経済は低迷期に入り、失われた20年間が続いたが、その間はマーケットはそれほど拡大しなかった。
そして、いよいよ高齢化社会に突入し、65歳以上の比率も上がってきた。そうなると遠くに買い物にいけない「買い物困難者」も増えてくる。セブン-イレブンは、いつも顧客の近くにあり、すぐに商品を買えることが売りだ。さらに女性の社会進出により、外食の比率も高まってきた。また単身世帯の増加によって、健康へのニーズも出てきた。
粟飯原氏は「これらの社会的な背景に加え、ネットの普及の影響が非常に大きくなった。いまや電車のなかでスマートフォンを操作する乗客の姿は当たり前だ。買い物もインターネット経由でダイレクトに済ませてしまうことも多くなった。そこで我々はオムニチャネルに注力することにした」と説明する。
かつてはインターネット通販を行うと、リアル店舗の売上が減るという懸念を示す経営者もいた。またリアル店舗に少しのネット売上が上乗せされるだけとも言われた。
「しかし、いまは違う。リアルとネットが足し算ではなく、掛算になる。リアルが10でネットが10なら、100になるという実感だ。我々のオムニチャネル“
omni7(オムニ7)”は、リアルとネットが融合し、いつでもどこでも好きなときに買い物ができ、店舗のカウンターで商品の受け取りも返品も行える。特に返品が可能な点がポイントだ」(粟飯原氏)
もともとオムニチャネルの概念は2010年に米国百貨店のメイシーズのCEOが提唱したものだ。この動きにセブン&アイも敏感だった。2013年8月には戦略会議にて、グループ全体としてオムニチャネルに取り組むことを決定したそうだ。
「そしてグループ間の意思統一を兼ね、社長と幹部を含め総勢50名で米国へ視察に行った。ユーザーの立場から実際にオムニチャネルを体験し、全米小売協会で討論を行い、多くのセッションにも参加した。最大の成果は、グループ・社長間で同じベクトルを向きながら議論できたこと。このなかで我々は、米国とはまったく違うオムニチャネルのモデルができると感じた。多種多様な店舗に多くのお客さまが来店するからだ」(粟飯原氏)
【次ページ】セブン&アイのオムニチャネル戦略は第二ステージへ
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