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- 2016/05/12 掲載
無印良品のアプリ「MUJI passport」、APIベースの開発だから克服できた3つの課題
アプリ介した売上は全体の3割に!
リアル店舗の売上アップに貢献するため、スマホアプリの開発を計画
「私の所属するWEB事業部は、デジタルマーケティング全般をグローバルに統括しており、ネットストアの運営も担当している。しかしこれは当たり前のことで、売上の残り92~93%に対して、さらにどう貢献できるのかを考える必要があった。ネットからリアルへの送客、あるいはデジタルメディアを利用したお客さまとのコミュニケーションの構築が、我々の大きな課題だった」
同社では2009年から、再販依頼や新商品の要望を投稿してもらうオウンドメディアの「IDEA PARK」を運営しており、実際にここから生まれた商品もある。
またソーシャルメディアでもFacebbokで100万人以上からのいいね!を、LINEでも297万人の友だちを獲得している。さらに2012年11月には、有楽町店のマネキンに着せたコーディネートをFacebook上にも展開し、いいね!が付くと店舗のマネキンの胸に付けたカウンターが、音と共にアップするという仕掛けも実施した。
「かなり頑張って色々な取り組みを行ってきたが、ただそれでも2012年までの総括として、施策が局所的あるいは部分的に留まっており、なかなか店舗の売上には直結しづらいという課題認識があった」
そこで同社が現状を打開するための新たな施策として計画したのが、スマホアプリ「MUJI passport」の開発だった。その目的は、ネット/リアルの区別なく無印良品のファンとのコミニケーションを図ること、持続的な来店客数の増加をベースに売上アップを狙うこと、そしてマーケティング施策の効果を可視化することだ。ポイントカードとしての機能に加え、ニュース配信、商品検索、店舗検索、店舗チェックインの機能も提供する。
APIベースの開発アプローチを採用し、基本設計からリリースまでを5か月で完了
「しかしMUJI passportの開発に際しては、予算が豊富にあるわけではなく、スピード感も求められた。また既存会員の手を煩わせることなく、アプリをダウンロードしたらすぐにMUJI passportの利用を始められるようにしたい、アプリ上で各会員IDをつなげられるようにしたいという考えもあった」具体的には、400万人いるネットストア会員が、何もせずにアプリでもマイルを貯め、ポイントを使用できるようにすること、40万人のMIJI Cardの保有者が何もせずに、MIJI Cardをアプリと連動した会員カードとして利用できるようにすること、あるいはユーザーがネットストア/MIJI Card/ソーシャルの各IDをつなぐと、インセンティブとしてマイルやポイントが合算されるといった仕組みを実現することだ。
「アプリを作るというよりも、“新たなサービスを作る”という感覚だ。そこで今回採用したのがAPIベースの開発アプローチで、アプリ開発と言いながら、実はPOSレジやネットストアも巻き込んだ全社的な仕組みになっている」
まず仕組み全体の中央に、サービスのコネクタに相当するMUJIマイルサービスを据え、このMUJIマイルサービスとMUJI passport、POSレジ、ネットストア、さらにはコールセンタや実店舗と連携するAPIを開発した。
「たとえばMUJIマイルサービスとPOSレジとの連携については、POSレジを担当してもらっているNCRに協力してもらい、XMLでデータをやり取りする機構を備えた。またMUJI passportやネットストアについては、JSON形式でデータをやり取りするようにしている」
こうした取り組みの結果、同社ではPOSレジとネットストアの改修まで含め、基本設計からアプリのリリースまでを、わずか5か月で完了させた。実際のMUJI passportのリリースは、2013年5月(ver1.0)だ。その後、クラウドベースのビッグデータ分析プラットフォームであるTreasure Dataと、AWSのAmazon Redshift(データウェアハウス)、Tableau(BIツール)を導入して、同年12月にはデータ分析基盤もリリースした。
【次ページ】MUJI passportを介した売上は3割にまで到達
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