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  • 2017/03/16 掲載

オイシックス奥谷氏のオムニチャネル論、未来のECは「B to C」から「B with C」へ

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オムニチャネル時代のマーケティングを考える上で、オイシックス 執行役員 統合マーケティング部 部長/Chief Omni-Channel Officerである奥谷孝司氏は、「顧客時間」という考え方に注目する。単に「誰が何を買ったか」のようなピンポイントではなく、検討から購入、使用、評価にいたる顧客の行動プロセスを時間軸でとらえ、ネットとリアルを適切に使い分けながら、あらゆるポイントで顧客との接点づくりを行う「エンゲージメント コマースを実現するプラットフォーム」が必要だと指摘する。
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「誰が何を買ったのか」より大切なことがある
(© Monet – Fotolia)


顧客時間=顧客の行動プロセスの流れに注目する

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 「ガートナー カスタマー 360 サミット 2017」に登壇したオイシックスの奥谷氏は、まず「なぜ顧客時間なのか?」について説明した。

 従来のいわゆるマーケティングでは、POSデータを中心とした購入時点のみなど、ピンポイントでの評価が主体だった。だがここだけで見ていては、「何が売れた」のかはわかっても、その売れた理由まではわからない。

 たとえば、ある人が喉が渇いてコンビニでお茶を買った。だが、さかのぼって調べると最初は水を買うつもりだったのが、たまたまあるお茶がセールだったのでそちらに変えたということがわかったりする。

 この人の行動には、「水を買おう(動機)→安いお茶の方が得では?(検討)→お茶の方を買う(購入)」といった一連のプロセスがあり、このプロセスに寄り添う形で流れているのが「顧客時間」だと奥谷氏は主張する。

「ネットの世界は、このプロセスの情報が取りやすい。しかし、リアルの店舗はどうするか? いずれにしても購入時点だけを見つめていても答えは出ない。顧客時間全体を見渡して答えを見つけることが必要だ。それにはオフラインにも、ECの手法を落とし込んでゆくのが有効だ」(奥谷氏)

 オムニチャネル時代になると、ネットデータと店舗データを紐づけることによって、この顧客時間をかなりの範囲で網羅できるようになる。

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 奥谷氏は前職の良品計画Web事業部長時代に、「MUJI passport」を作ったことで知られている。これはスマホのモバイルアプリMUJI passportを使って、無印良品の各店舗の在庫の検索や預貸価格での買い物ができ、ショッピングの金額に応じてクーポンやマイルがもらえるというものだ。

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 奥谷氏がこれを作ったのは、顧客時間のプロセスを明確に「見える化」したいと思ったからだ。無印良品ではネットストアのIDとMUJI passportのIDを紐づけることで、リアル店舗とネットでの買い物履歴をすべて把握できる。

「MUJI passportは自社独自のアプリだが、そうした仕組みがなければSNSやインスタグラムなどを利用するのもよい。オムニチャネル マーケティングでは、顧客の時間を可視化してくれる仕組みが必要であり、企業のデジタル部門はそうした顧客時間をつないでいくのが仕事ではないかと考えている」

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オムニチャネル時代の「顧客時間の重要性」
(出典:奥谷氏講演資料)


顧客の近くにコミュニケーションチャネルを置く

 さらに奥谷氏は、顧客時間に加えて「カスタマージャーニーを可視化したい」と考えているという。

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 オムニチャネルではオンラインとオフライン、ネット店舗とリアル店舗のように複数のチャネルが用意されているが、実際に顧客が買い物をする場合は、当たり前だがどれか一つしか選択しない。つまり重要なのは、多くのチャネルを作ることではなく、顧客が自由に選択できるオンとオフのチャネルをきちんと用意しているかなのだ。

「それがお客さまの評価につながって、カスタマージャーニーの善し悪しを左右するし、チャネルを網羅することで必要十分な顧客時間を通じたデータが採取できる。正確なデータが取れれば、企業の側もそれをもとにオムニチャネルのどこにリソース配分を行うのか。オンとオフのどちらに、より多くのエネルギーを割くのかという戦略が決められる」。

 その点でも、MUJI passportのようなカスタマージャーニーを可視化できる仕組みは有効だ。MUJI passportがユニークなのは、買い物でポイントがつくだけだと購入時点だけのデータしか取れないので、地域内の店舗を訪ねるとマイルというインセンティブが与えられる工夫をしている点だ。

 購入ポイントとは別だが、いずれにしても顧客は訪れた先でマイルをもらうためにチェックを受けるので、その間の行動=カスタマージャーニーは顧客時間に紐づけられて把握できる。

 顧客のニーズや行動パターンを知るために、企業は常に顧客とつながりたがっている。だが、企業からのメッセージというのは、おおむね広告と取られてしまい、なかなか顧客に届かなくなっている。そうした現状で顧客にもっとも近いコミュニケーション チャネルを配置すると考えると、スマホ以外にないと奥谷氏は指摘する。

 オイシックスも無印良品も、人の身近にある商品を扱っているため、エヴァンジェリストがオンライン上に数多く存在している。ネットでは従来の広告以上に、こうした人々の存在が強い味方になる。また、店舗の情報をオンライン経由で可視化し、顧客との絆づくりに勤めることも必要だ。

「いわば、お客さま=生活者に一番近い場所にコミュニケーション チャネルを配置する戦略だ。これからの時代、お客さまの肩を押すようなコミュニケーションをスマートに実現する上で、ソーシャルメディアは非常に重要なカギになる」。

【次ページ】未来のECは「B to C」から「B with C」、さらに「B for C」へ

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