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2017年05月25日

トヨタの大幅減益は「ビジネスモデル」への大きな課題の表れだ

主要自動車メーカー3社(トヨタ、日産、ホンダ)の2017年3月期(2016年度)決算が出揃った。各社とも売上高が減少したほか、トヨタは30%もの営業減益となった。これまで自動車各社は好調な北米市場に支えられ、堅調な伸びを示してきたが、今回の決算は市場の変調を予感させる結果となった。それは何も北米市場の問題にとどまらない。

執筆:経済評論家 加谷珪一

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トヨタ自動車 代表取締役社長 豊田 章男氏

(出典:トヨタ自動車)



すでに販売台数の減少は始まっていた

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 決算発表に臨んだトヨタ自動車の豊田章男社長は終始、厳しい表情を崩さなかった。同社の売上高は前年比2.8%減の27兆5,971億円、営業利益は30.1%の減の1兆9,943億円と減収減益だった。売上高と営業利益が前年度を下回るのは、東日本大震災翌年の2012年3月期以来のことである。

 30%もの減益と聞くと、同社の業績が急激に悪化したかような印象だが、必ずしもそうとは言い切れない。2016年度の販売台数は897万台と前年(868万台)をわずかに上回ったが、2013年度は911万台も売っていた。好業績を維持してきたように見える同社も、水面下では販売台数の落ち込みが始まっていたことが分かる。今回の大幅減益はこうした状況が、数字になって表れてきたと考えたほうが自然だろう。

 日産の売上高は11兆7,200億円とこちらも前年比3.9%のマイナスとなった。トヨタほどではないものの、営業利益も落ち込んでおり、前年比マイナス6.4%の7,422億円にとどまっている。ホンダは2016年3月期の決算が大幅減益だった反動もあって今期は増益となったが、売上高は前年比4.1%減の13兆9,992億円だった。

 国内の自動車市場は以前から縮小が続いており、各社は収益の多くを北米市場に依存している。米国経済はリーマンショック以降、順調に回復しており、雇用や賃金も伸びるなど市場環境は良好である。だがここにきて、北米市場の伸び悩みが顕著となっており、これが収益の足を引っ張った。

 トヨタの北米における販売台数は283万台とほぼ前年並みにとどまっている。日産は5.9%増の213万台と健闘したが、前年と比較すると伸び率は鈍化した。基本的に北米の販売は鈍化傾向が鮮明となっており、その影響をもっとも大きく受けたのがトヨタという図式だ。

インセンティブを使いすぎて需要を先食い

 経済が好調であるにもかかわらず北米市場の伸びが鈍化している原因のひとつとして考えられるのが、多額の販売奨励金(インセンティブ)である。自動車メーカーは販売代理店(ディーラー)に対して販売台数に応じてインセンティブを提供しており、ディーラー側はこれを原資に値引きなどの販促活動を行う。

 トヨタの北米市場における営業利益は1,700億円ほど減ったが、減少分の半額がインセンティブに費やされたと仮定すると、1台あたり3万円ほど増額された計算になる。

 同社は2018年3月期の予想についても発表しているが、営業利益が3,000億円と2期連続での減益を見込んでいる。北米における販売台数は前期を1万7000台下回る282万台にとどまる見通しだ。営業減益の内訳のうち、インセンティブが含まれる項目は約1,300億円となっており、このうちの大半がインセンティブの増額に充てられたと仮定すると、1台あたりのインセンティブ増額分は約4万6,000円になる。

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(クリックで拡大)

トヨタ、日産、ホンダの業績


 これまでは、多額の奨励金をバラ撒くことで販売台数を稼いできたわけだが、こうしたやり方は場合によっては需要の先食いにつながってしまう。市場自体が好調でも新車の買い換え需要が一服してしまえば市場の伸びは鈍化する。

 インセンティブの正確な数字は分からないが、各社とも北米市場に依存するあまり過剰にインセンティブを支払い、これが収益を圧迫している可能性は否定できない

 もっとも、トヨタがディーラーに支払うインセンティブの絶対額はそれほど大きいものではなく、1台あたり4000〜5000ドルに達するGM(ゼネラル・モーターズ)やフォードなどと比較すると半分程度といわれる。

 ただ米国ではトランプ政権が誕生しており、日本メーカーがインセンティブを武器に無理にシェアを拡大することは得策とはいえない。これ以上、インセンティブに頼ることは困難というのが現実だろう。

【次ページ】トヨタの強みである垂直統合モデルはいつまで通用するか

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