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  • 2017/08/22

医者専用インスタ「Figure 1」の衝撃、医療のクラウドソーシングは何をもたらすのか

医師向けInstagramと聞いて、どのようなアプリを想像するだろうか。スマートフォンが普及した現在では、医師同士が症例についてメッセージや画像を送り合って議論することも珍しくない。Figure 1には、珍しい症例を示す患者の写真が多数投稿されている。医療施設の充実していない地域にいる医師であっても、Figure 1に画像を投稿すれば、世界中の同業者からセカンド・オピニオンを集め、正確な診断に役立てることができる。1000万ドルの資金調達に成功した同社は、さらなる規模の拡大と、人工知能技術開発を目指す。

佐藤 隆之

佐藤 隆之

Mint Labs製品開発部長。1981年栃木県生まれ。2006年東京大学大学院工学系研究科修了。日本アイ・ビー・エムにてITコンサルタント及びソフトウェア開発者として勤務した後、ESADE Business SchoolにてMBA(経営学修士)を取得。現在は、スペイン・バルセロナにある医療系ベンチャー企業の経営管理・製品開発を行うと共に、IT・経営・社会貢献にまたがる課題に係るコンサルティング活動を実施。Twitterアカウントは@takayukisato624。ビジネスモデルや海外での働き方に関するブログ「CTO for good」http://ctoforgood.com/を運営。

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Figure 1は症例の画像をシェアし、意見交換するSNSだ
(© auremar – Fotolia)



医師のためのInstagram「Figure 1」とは?

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 Instagramは流行のファッションや華やかなライフスタイルで溢れているが、「医師向けのInstagram」と称されるFigure 1はまったく異なる雰囲気を持つ。病気に冒された臓器や皮膚の写真が並び、一般の人では目を覆いたくなってしまうものが多い。しかし、医療関係者からは評価を受け、登録者は世界190か国から200万人以上を数え、米国の医学生の7割がFigure 1に登録したという。さらに、2017年6月には1000万ドルの資金調達に成功し、さらなる拡大を目指している。

 Figure 1の特徴として、投稿者が医療関係者(医師、看護師、看護学生)に限られている点が挙げられる。医療関係者以外は投稿内容の参照はできるが、書き込みはできない。認証を受けた医療関係者が臨床事例を投稿しアドバイスを求めると、他のユーザーがコメントを書き込み、専門的な議論が繰り広げられる。これまで、心臓、脳、骨、内臓、皮膚、歯、整形、放射線、呼吸、アレルギー、リハビリなど、あらゆる専門分野について症例が集まってきた。

 Figure 1は単なる画像共有アプリではなく、医療に関する知識データベースとなりつつある。世界中から投稿された症例は、教科書や論文にも載っていない珍しい事例かもしれない。投稿した人は、さまざまなフィードバックを同業者から受けられる一方で、投稿したことがない医療関係者も、その議論から学ぶところが大きい。医学生からの登録が多いのは、さまざまな議論に触れ、理解を深める機会になるからだろう。

 医師であっても症例の少ない疾患では診断が困難だ。そのような疾患の正確な診断には平均して米国では7年半、英国では5年半かかっているという調査がある。また、別の調査によると、ある8つの珍しい症例の疾患の患者のうち約4割は、初期に誤った診断がなされているという。 このような条件下では、Figure 1によって同業者からのアドバイスが大きな助けとなるだろう。

 Figure 1はいわば「医療のクラウドソーシング」を進めていると考えられる。クラウドソーシングとは、インターネットを通じて不特定多数からアイデアや資源を集め、問題解決を実現する手段だ。症例の少ない疾患に直面した医師が、Figure 1 に投稿し、世界中の医師からアドバイスを募り、正確な診断ができるとしたら、社会的な価値は大きい。

 興味深いケースとしては、レバノンでシリア難民を治療した国境なき医師団の医師Rogy Masri氏の例が挙げられる。米国メディアBustleのインタビューにおいて、同氏は、設備や情報の限られた施設で治療に当たり、Figure 1に写真を投稿してセカンド・オピニオンを集め、正確な診断につなげたと語っている。110万人の難民を受け入れているレバノンで診断に迷う医師であっても、アプリがあれば先進国にいるのと変わらない支援が行える可能性があることをFigure 1は示している。

医師向けInstagramのマネタイズ方法とは?

 Figure 1のビジネスモデルは「フリーミアムモデル」だ。医療関係者による投稿や書き込み、医療関係者以外のユーザーによる参照など、基本的なアプリの機能はすべて無料で提供される。現在、収益源として期待されているのはスポンサードコンテンツだ。

 スポンサードコンテンツには、3つのフォーマットがある。1つは、著名な医療機関による先進的な手術の紹介である「Grand Rounds」。ロボットによる眼科手術のようなトピックなどが医師からの興味を惹きつける。他に、有名医師と一体多数の質疑応答ができる「Figure 1 on 1’s」、特定の分野に関する調査を発表する「Figure 1 インサイト」が用意されている。医療関係者同士がお互いに知識を共有し合う仕掛けが、ここでも発揮されているのだ。

 新たに1000万ドルを調達したFigure 1は、新たな収益源として人工知能技術の開発を発表した。 具体的には、心電図の写真を読み込んで、自動的にデジタルデータへと変換し、体温や血圧と合わせて、肺炎からパーキンソン病まで多くの疾病に関する診断支援を行う計画だ。

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Figure 1のビジネスモデル

 Figure 1に対する投資家からの期待は大きく、その資金調達のスピードは目を見張るものがある。2012年の創業から、2013年の165万ドル、2014年の400万ドル、2015年には合計して750万ドルを調達してきた。Twitterなどにも投資を行っている大手ベンチャーキャピタルのユニオンスクエアベンチャーズが主な投資家となっている。さらに、今回、シリーズBとして1000万ドルの資金が投下された。

 Figure 1は医師であるJoshua Landy、ソフトウェア技術者のRichard Penner 、そしてCEOとなるGregory Levey によって創業された。集中治療室などで勤務していたJoshua Landyは、医師同士がスマートフォンでチャットしたり、画像を送ったりして、お互いに助言し合っている習慣に気づき、それをアプリによって世界的なプラットフォームに育てるアイデアを着想したという。

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