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  • 2017/10/17

遺伝子解析ベンチャー「23andMe」、評価額1900億円は何が評価されたのか

ヒトの遺伝子には人体に関するあらゆる情報が含まれる。短時間で安価に解析できる遺伝子解析サービスが登場し、アルツハイマー病などの病気を発症するリスクを手軽に診断できるようになった。米国のベンチャー企業23andMeは、直接消費者へ遺伝子解析サービスを提供する企業としては初めて、米国FDA(食品医薬品局)からサービス提供の認可を受けた。実は同社は2013年に一度FDAから販売を差し止められており、その後99%の診断精度を証明し、2017年の認可へとこぎつけた。

佐藤 隆之

佐藤 隆之

Mint Labs製品開発部長。1981年栃木県生まれ。2006年東京大学大学院工学系研究科修了。日本アイ・ビー・エムにてITコンサルタント及びソフトウェア開発者として勤務した後、ESADE Business SchoolにてMBA(経営学修士)を取得。現在は、スペイン・バルセロナにある医療系ベンチャー企業の経営管理・製品開発を行うと共に、IT・経営・社会貢献にまたがる課題に係るコンサルティング活動を実施。Twitterアカウントは@takayukisato624。ビジネスモデルや海外での働き方に関するブログ「CTO for good」http://ctoforgood.com/を運営。

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23andMeは唾液のサンプルから遺伝子情報を解析し、罹患リスクを診断する


199ドルで病気発症のリスクを診断する遺伝子検査サービス

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 唾液の検査だけで疾患のリスクがわかるなら、その検査を受けたいと思う人も多いだろう。米国のベンチャー企業23andmeは米国FDA(食品医薬品局)から消費者向け診断サービスとしての認可を受け、唾液のサンプルから遺伝子情報を解析し、罹患リスクを診断するサービスの展開を大々的に開始した。

 人間の持つ遺伝子、DNAには体質に関する情報が含まれている。そして、がんなどの病気の発症には遺伝的要因が約3割、生活習慣を含めた環境的要因が約7割関係しているといわれる。

 遺伝子検査を受けると、罹患するリスクの高い病気の傾向が明らかになるため、それを防止するような生活習慣をとり、健康状態を維持できるメリットがある。

 遺伝子の情報は生涯変化しないため、一度検査を行えば、再検査の必要はないとされる。DNA解析は近年、解析技術の急速な進歩によって、分析にかかる費用が低減し、短時間に行えるようになった。唾液を使って簡単に健康診断が行えるため、消費者からの期待も高い。

 23andMeのサービスでは、オンラインでユーザー登録を行い、検査キットを入手する。唾液をスポイトのような容器に入れ、同社へ返送するだけで検査結果が得られる。病気の発症リスクが診断できるのは、199ドルのプランだ。50万以上のDNA情報を分析し、パーキンソン病・アルツハイマー病・筋失調症を含めた10の疾患に関するリスクを表示する。

 疾患リスクのほかにも、複数の診断結果がレポートには含まれる。太りやすさや食物不耐症の可能性といった健康情報や、先祖がどの地域・民族に属しているかといった情報も検査が可能だ。健康状態を維持するために、軽い気持ちで楽しみながら診断結果が得られるとして消費者からの評価も高い。



B2Cで収集したデータから製薬企業の研究を支援するB2Bモデル

 病気の予防をしたいというニーズの高まりと、それに応える技術的な進歩が相まって、遺伝子解析市場は大きく拡大してきた。全世界では年平均で16%の急成長が見込まれており、2022年には100億ドルの市場規模に達するとの予測がある。

 23andMeのビジネスモデルは遺伝子解析サービスとしてのB2Cモデルと、製薬企業に対する研究開発支援を行うB2Bモデルの側面がある。まず、消費者向けサービスは2007年から提供されるようになった。FDAからの承認が下りるまでは健康診断を行っていなかったが、2017年4月の承認を受け、遺伝子解析による健康診断サービスとして成長を遂げている。

 B2Cサービスの成功は、23andMeにとって、収益を上げる以上に大きな意味があった。200万人以上の遺伝子データベースを構築した同社は、そのデータを使って、医薬品開発の支援を行えるようになったからだ。効果の高い薬を開発できれば、その収益は莫大なものになるため、製薬会社との協業は23andMeに大きな収益をもたらす可能性がある。

 パーキンソン病をはじめとする病気は、そのメカニズムが未だに明らかになっていないため、医薬品開発は困難が多い。23andMeは遺伝子データベースを製薬企業に提供し、発症リスクが高い人にはどのような特徴があり、どのような治療が有効かを明らかにする共同研究を行っている。

協業先にはファイザーなどの大手企業も名を連ねる

 23andMeが協業する製薬会社にはファイザーなどの大手企業も含まれる。米国のバイオベンチャー企業Genentech(ジェネンテック)や米国老化研究所(NIA)が42万5000人のデータを使って発表したパーキンソン病に関する論文では、実に75%以上のデータが23andMeによって取得されたものだったという。

 医薬品開発の観点からは、すでに病気を発症した人の遺伝子情報は重要だ。発症した人とそうでない人の遺伝子を比較し、その発症リスクをより正確に判断できるようになる。パーキンソン病の団体The Michael J. Fox Foundationや全身性エリテマトーデス(SLE)の研究支援を行うLupus Research Allianceとの提携を行い、より多くの患者からの遺伝子情報提供を募っている。

 遺伝子情報を提供した消費者のうち、80%は製薬会社との共同研究にデータを利用することを許諾しているという。難病の治療方法を確立する社会的な意義を考えれば、匿名化された状態でデータを転用されるのも消費者に受け入れられやすい。B2Cで健康診断を行い、B2Bで活用する基礎データを収集するというビジネスモデルは、データを中心に事業が展開される遺伝子解析業界では、極めて強力だといえる。

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23andMeのビジネスモデルはB2C、B2Bの両面がある

【次ページ】FDA認可により、2億ドルの資金調達が報じられるユニコーン企業へ

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