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- 2018/01/10 掲載
バイオセンサーとは何か? 医療・食品分野の活用事例にみる今後の可能性
バイオセンサーとは何か?
普段あまり意識することはないかもしれないが、センサーは私たちの生活のいたるところで活用されている。自動ドアにも、電子レンジにも、冷蔵庫にもセンサーは使われている。
バイオセンサーは、通常のセンサーとは異なり、生体分子を識別できる分析装置である。具体的には、酵素などの生物学的要素(バイオセンシング要素)と分析物との反応を電気信号に変換することにより、検査時の検体にあるヘモグロビンや特異抗原などの特定の分子の存在もしくは濃度を感知し、測定する機能を持つ。
バイオセンサーの構成要素は、大きく3つに分けることができる(図1参照)。
1つ目は、検体の特定分子を識別する基質認識部位である。これは、センサーの基質認識部位と検体との化学反応もしくは化学反応の生成物を基に、特定分子を認識し、測定する役割を果たす。
2つ目は、「トランスデューサ(変換器)」である。これは、基質認識部位による物質識別素子となる抗体や酵素などの認識および測定を、電気信号に変換する。
3つ目は、認識された電子信号を正確に読み取るために適切な単位に変換する「増幅器(装置)」「基準点(リファレンス)」および「プロセッサー(処理装置)」がある。そこで処理されたデータを表示するために「ディスプレー(表示装置)」がある。
これらの機能により、臨床診断検査、食品産業、環境分野などにおいて、アナログでかつ複数の段階・機器で実施されてきた測定検査が、一つの装置で実施することが可能になった。バイオセンサーは、分子のレベルで細かく検査できるといった特異性と的確性、また、高速応答、コンパクトな構造および合理的な開発コストといった特徴を備えているため、従来の分析ツールを代替するようになってきている。
バイオテクノロジーの発展が需要を後押し
そもそも、なぜバイオセンサーがここまで使われるようになったのか。近年、バイオテクノロジーの発展に伴い、生体技術を用いた新規製品の開発が一般的になった。
遺伝子工学をはじめ、細胞培養、遺伝子組換作物、産業用発酵技術、バイオ燃料、環境汚染対策として使われるバイオレメディエーション技術などが、具体的な活用例として挙げられる。
特定分子を測定するバイオセンシングは、バイオテクノロジーを活用するにあたって必要な要素の1つだ。抗体抗原反応、人工的結合たんぱく質、酵素の触媒活性による分子の識別などでバイオセンシングは必要になる。
バイオセンサーを用いることで、多くの分野でバイオセンシングが実用化され、新たなビジネスが誕生することとなった。特にヘルスケア業界では、生体検査が頻繁に幅広く実施されており、人件費および時間的コストを抑えるためにバイオセンサーが導入された。
【次ページ】バイオセンサー市場を牽引するのはこの2業界
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