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  • 2017/12/29 掲載

語られなくなった「地方創生」、5か年計画の折り返しを総括する

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地方創生と東京一極集中の是正を目指す政府の5カ年計画「まち・ひと・しごと創生総合戦略」が、折り返しの3年を過ぎた。地方創生という言葉が社会に定着し、ブームになったが、この間にも東京一極集中がさらに進み、政府が鳴り物入りで打ち上げた中央省庁や民間企業本社機能の地方移転は成功していない。安倍晋三首相も「一億総活躍社会」、「働き方改革」、「人づくり革命」など新しいキーワードを次々に打ち出す一方、地方創生を語ることが減っている。地方創生はどこへ行ったのか、地方大学の若手研究者4人に総括してもらった。

政治ジャーナリスト 高田 泰(たかだ たい)

政治ジャーナリスト 高田 泰(たかだ たい)

1959年、徳島県生まれ。関西学院大学社会学部卒業。地方新聞社で文化部、地方部、社会部、政経部記者、デスクを歴任したあと、編集委員を務め、吉野川第十堰問題や明石海峡大橋の開通、平成の市町村大合併、年間企画記事、こども新聞、郷土の歴史記事などを担当した。現在は政治ジャーナリストとして活動している。徳島県在住。

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シャッター通りとなり、人影もまばらな岡山県笠岡市の商店街。地方創生はこうした苦境を打開できる力にまだなっていない
(写真:筆者撮影)


中央省庁移転などことごとく外れた政府の思惑

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 まち・ひと・しごと創生総合戦略が策定されたのは2014年末。東京五輪がある2020年に東京圏(東京、神奈川、埼玉、千葉)の転入、転出者数を均衡させるのが目標で、地方で毎年10万人分の雇用を創出し、東京圏からの移住を促すとしている。

 地方自治体には将来の目標人口を示す「人口ビジョン」と、それを実現するために必要な施策をまとめた「地方版総合戦略」の策定を求めた。地域振興に貢献する先進的な取り組みを財政支援することも掲げている。

 地方での雇用創出策としては、中央省庁や政府機関、企業の本社機能の地方移転を進める方針を打ち出した。安倍首相もことあるごとに地方創生の必要性を訴え、政権の看板政策としてきた。

 ところが、現実は政府の思惑通りに進んでいない。中央省庁で全面移転が決まったのは、京都府へ移る文化庁だけ。総務省統計局が和歌山県、消費者庁が徳島県へ一部機能を移すものの、東京を離れたくない官僚の抵抗を破れず、政府が範を示そうとした当初の思惑は空振りに終わった。

 東京23区からの本社機能移転も優遇税制の適用を受け、地方に一部機能を移した企業は2016年末までで12社にとどまっている。地方で生まれた新規雇用は限定的で、東京から地方へ大きく人を移す流れは作れていない。

 その結果、東京一極集中はさらに進んでいる。総務省がまとめた2016年の人口移動報告では、東京圏の転入者は転出者を11万7,868人上回った。前年より1,489人少ないとはいえ、転入超過は21年連続。成果を上げたとはいえないのが現状だ。

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東京圏の転入超過数
(出典:総務省「住民基本台帳人口移動調査2016年結果」)


格段に高まった国民の地方への関心

 弘前大大学院地域社会研究科の平井太郎准教授(社会学)は地方創生がスタートした結果、大都市部で地方への関心や知識が格段に高まったと考える。地方で働く地域おこし協力隊員の増加などがその表れだ。

 ただ、自治体の地方創生事業は訪日外国人観光客の誘致や農業の6次産業化など多くが似たり寄ったり。独創性に欠けることへ厳しい目を向けられるようになったが、平井准教授は「こうしたネガティブな反応も地方に関心が向けられてきた証」という。

 自治体の計画に独創性が欠ける原因は、計画策定から情報発信まで大都市部のコンサルタントや広告代理店に依存してきたからだ。平井准教授は「計画のデザインやマーケティングなどを担える人材を地方に定着させ、育てる仕事の場が欠けている」と指摘した。

【次ページ】停滞する地方経済、浮上の兆し見えず

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