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  • 2018/03/20

終身雇用の「幻想」が崩れ去った今、企業と個の関係性はどうあるべきか

「働き方改革」を推進する企業が増えている。人事・経営層・管理職のみならず、働く当事者として多く人が関心を寄せるトピックスだ。2018年2月15日に開催された「働き方を考えるカンファレンス2018(主催:一般社団法人at Will Work)」には、行政・企業・研究者、フリーランスから大学生など、さまざまな属性の来場者約800名が訪れた。本稿では冒頭に行われたキーノートの内容をダイジェストで紹介する。

Miho Iizuka

Miho Iizuka

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キーノートカンファレンスのトップを務めた篠田 真貴子氏(写真右下)。クリス・イェ(Chris Yeh)氏は、シリコンバレーからGoogle ハングアウトで参加した(画面中央)

終身雇用制度は労働者に何をもたらしたのか

 冒頭のキーノートには『企業と人の関係とは』をテーマに、ほぼ日 取締役CFOの篠田 真貴子氏が登壇。さらに、シリコンバレーからはUstream 1st invest or, & interim CEOとしても知られるクリス・イェ(Chris Yeh)氏もGoogleハングアウトで参加した。

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 「定年まで勤め上げる」「モーレツに働く」という言葉が美しく響く時代もかつてはあった。一家の大黒柱が稼ぎ、家族を養う。しかしそれは、戦後の高度成長と一億総中流階級構想が生み出したある種の“美談や幻”だったことに、多くの人が気づいている。「サラリーマン」という働き方だけが職業のかたちではないにせよ、大きな組織に忠誠を誓い、そこに属することで身分を補償された人々がある一定のレベルで文化的な生活を享受できたからこそ、経済も豊かに回っていた。

 しかし、この10年で状況は変化した。世帯年収の格差を見ればそれは明らかだ。にもかかわらず、いまだに「転職はリスキーなもの」として家族の反対を理由に踏み留まる人も存在する。自己犠牲の上に成り立つストイックさをたたえ、自己保身や家族的協調・同調を好む日本人の気質にフィットしているからこそ、終身雇用制度は美しく成り立っているのかもしれない。

 研修制度にせよキャリア形成にせよ、住居、扶養、そのほか福利厚生にいたるまで自身の生活をすべて委ねてしまうことは安定をもたらす。反面、それが失われたときの個の自立した生産性の確立や豊かな生活を奪うものでもある。むろん、1社に骨をうずめるという選択や覚悟への尊敬は変わらないにせよ、はたしてどれくらいの人が、このままの老後まで安泰に過ごせるという確信が持てているだろうか。あるいは前向きな計画をしているだろうか。

 ここ数年、働き方に関する取材を通じて思うことは、組織に属している現場の人々の声、特に経営者、管理職からの言及が想像以上に得にくいことだ。うかつには口に出せないことであろうとは、察するに余りある。もしかしたら考えたことすらなかったのかもしれないし、前例がないことに取り組まなくてはいけない。義務感でこのテーマと接している人も少なくはないのだろう。

企業との関係性は「家族」から「パートナー」に

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『ALLIANCE アライアンス―――人と企業が信頼で結ばれる新しい雇用』(ダイヤモンド社)2015/7/10,リード・ホフマン、ベン・カスノーカ、クリス・イェ(著)篠田 真貴子、倉田 幸信(翻訳)
 キーノートのトップに登場した篠田 真貴子氏とイェ氏は、2015年に「ALLIANCE アライアンス―――人と企業が信頼で結ばれる新しい雇用」という書籍を刊行している。予測することが難しく変化の激しい時代に対応する雇用形態として、終身雇用以降のシリコンバレーで実践されている企業と人との新たな関係性について提言したものだ。

 篠田氏によると、出版当時はスタートアップやフリーランス界隈では話題になったものの、大企業の社員からの反応は、あまり芳しいものではなかったという。

 米国の企業にもかつては終身雇用が存在していた。しかし、その概念はすでにない。従業員は約2~3年で成長できる機会を求めジョブチェンジすることもイレギュラーな話ではない。

 たとえばスタートアップ企業のUberなどでは、約1年で離職する人も多いという。これは日本国内の労働市場においても同じようなことが起きている。商社や金融などの大手企業を経て、スタートアップへ転じ、再び古巣に戻るなどのパターンもある。

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これまでの日本の終身雇用が「親子や家族のような関係」だったとすると、今後はより対等な「友人同士やパートナーとしての関係」に変わっていくのかもしれない、と篠田氏は述べた

 「アライアンス」という雇用概念においては、働く人も仕事に対してコミットするかわりに、企業への忠誠心や関係性はおのずと変わってくるものだ。イェ氏がこの本で描きたかったのはこの「企業と人との関係」の変化だという。イェ氏と篠田氏は以下のように説明する。

イェ氏:日本も米国も側面は違いますが、実は同じ問題に直面しているのかもしれません。米国では終身雇用がなくなり、働く人もどんどん企業を変えていきますが、自身のキャリアを積み上げていくにはどうしたらよいのかを中心に考える必要があります。日本は反対で、これから変化をしていかなくてはならない中で、長い間同じ企業で働き続けているとしても、働く人が企業に対してどのような貢献ができているのかが課題になっているはずです。

篠田氏:大企業、外資系企業、オーナー企業、というサイズの異なる企業で働いてきた私自身の経験からですが、終身雇用という仕組みは一定の大企業には存在します。しかし、この20年の間に企業と働き手の関係はずいぶん変わっていて、もしかしたら信頼関係というものが崩れてきているのかもしれないと感じています。どこであれ、働く以上は信頼関係を結びたいと思うものですが、そうではないことも起きるからこそガッカリするんですよね。

イェ氏:企業としては、「あなたを一生雇うという保証はできないけれど、あなたの次のキャリアでそれが活かせる価値を提供してあげましょう」という約束はすべきです。働いている間に得られたキャリアは、同じ企業の中でのほかの仕事で活かされるのかもしれませんし、もしかしたらほかの企業かもしれないのです。

 「終身雇用はできません」と真正面から企業も働く人に告げる。それを、どれだけの人が「わかりました」と受け入られるだろうか。それでも働きたいと思う会社だろうか。自身が望んでいるものは「安定」「保証」だけなのだろうか。「キャリアの選択による自己実現」なんて浮ついた言葉にあおられて、これまで積み上げてきたものを手放しにできるだろうか。守るべきものがあればあるほど、そのような不安が勝るのも現実だ。

 変化の速い時代に対応するためには、企業側も新たな雇用スタイルの提唱や、優秀な働き手とアライアンスを組むため、より魅力的な仕事の機会を提供し続ける必要がある。働き手自身も、今後の生産性を高めるためのキャリアを選択し、決断する勇気を持つ必要がある。

 「そんなことは一部の企業や人にしかできないよ」という声もチラホラ聞こえてきそうだが、加えてひとつ誤解してはいけないところもある。「優秀な働き手」というのは、ハイキャリアや専門性の高い人に限ったことではないということだ。

 終身雇用せずとも人を雇うことが可能になると、ミッションとギャランティさえ整えばハイキャリアや専門性の高い人とどんどん組んでいきたいという動きに舵を切るのは、雇用側からすれば何も不自然な話ではない。

 かといってそのように“デキる”といわれる人だけに仕事が集まる傾向でよいのか。事業スピードのサイクルが速いものにしか適応できない人材だけを配置しても、企業は継続性や存続性にかけてしまう。一年後コンタクトしたら担当者がすべていなくなっているような企業を、あなたは信頼できるだろうか?

【次ページ】選択権は「働く人側」が握る

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