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  • 2018/07/12 掲載

野田総務相が語った「MOVE FAST」戦略とは?慶応大 村井純氏と若手政務官が議論交わす

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2018年に開催された、ICT活用のオピニオンリーダーが集まった「Interop Tokyo2018」。本稿では、そこで行われた野田聖子総務大臣の講演および、それについての慶應義塾大学 村井純氏、総務大臣政務官・衆議院議員 小林史明氏のセッションをレポートする。 日本が抱える困難と、未来をどのように切り拓くのか?「MOVE FAST」8カ条がそのカギとなる。
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総務大臣・女性活躍担当大臣・内閣府匿名担当大臣 衆議院議員 野田聖子氏

日本で徐々に進行する「静かなる有事」とは何か?

 20年ぶりに「Interop Tokyo」の講演に立った総務大臣の野田聖子氏は「この20年間にICTの力が、社会的弱者や障害を持った人々の困難を取り除くパートナーになりました。しかし、これから日本自体が、ますます困難な時代に入っていきます。これに対して、さらにICTを活かし、豊かさを堅持しながら、次のイノベーションにつなげていきたい」と語った。

 総務大臣 野田聖子氏が指摘する日本の困難とは、一言でいうと人口減少だ。これまでは日本は、人の質と量を頼りに経済成長を果たしてきたが、すでに製造業は海外にシフトしている。

「今後は知財で生きなければならないが、知財にも人手が要る。一方で、とりわけ知力・体力のある若い世代が少なくなるという厳しい現実もある。これを我々は〝静かなる有事”と呼んでいる」(野田氏)。

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「静かなる有事」。これから人口減少、地域経済の縮小、交通インフラの縮小とインフラ維持への不安が顕在化するだろう。

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 経済についても、かつてのような勢いは衰え、大きな成長は見込めない。そして今、一番厳しい局面に立つのが地方行政だ。総務省は地方とテレコム(電気通信)の問題を抱え、まずはテレコムでイノベーションを起こし、疲弊する地方自治を支えようとしている。

「しかし、それにも限界が来ている。自治体が独立性を発揮し、まさに地方自治として地域経済を担わねばならないが、このままのアナログ社会では、残念ながら自治を維持することは難しい。そこでICTとのコラボを進めて行く必要がある」(野田氏)

 このように非常に厳しい状況だが、少し明るい兆しもあるという。それは国の組織体制の話だ。

 総務省は自治省と郵政省が合体して10年目を迎えた。これまで地方の自立化がうまくいかなかったのは、省庁が再編しても、うまく機能しなかったからだ。テレコムの実証実験を行っても、なかなか見える化ができなかった。

「しかし、ようやくテレコムと地方自治の部局が“結婚”し、決定権者の組長に話が直接通るようになった。多くのICT実証実験の成功事例を横展開し、小さな自治体が救われる道が開けるだろう。たとえば、鳥獣被害対策もICTの力で解決できるようになった。同様の悩みを抱える市町村でも、同じ対策が広がるようにすることが大切だ」(野田氏)。

 このほかテクノロジーの進化により、解決が難しかった問題にも見通しがついてきた。5Gを活用した遠隔技術も進んでいる。

「妊婦の遠隔診療では、産婦人科が減少する中で、若い世代が安心して診察できるようになった。また建機の遠隔操作は、これまでの仕事のあり方を一変するだろう。ICTによって性別の関係がなく働ける好事例になると思う」(野田氏)。

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静かなる有事を解決する、テクノロジーによる未来像。遠隔医療や、建機の遠隔操作などは、従来のあり方を一変させるだろう。

ピンチをチャンスに! 未来をつかむ戦略の8カ条「MOVE」と「FAST」

 冒頭で触れた“静かなる有事”に対し、今国は逆手にとってチャンスと捉え、その武器となる戦略を立てている。それが「未来をつかむTECH戦略」だ。その戦略には変革実行の8カ条「MOVE」と「FAST」があるという。

 MOVEは「Moonshot」(未来の姿を描いて逆算で対策する)、「Opportunity」(機会を逃さずに柔軟・即応で挑戦)、「Value」(価値基準を量から質に変える)、「Economics」(生産性を高めて国内外の需要を掘り起こす)の頭文字をとった施策だ。

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“静かなる有事”に対する変革実行8ヶ条その1「MOVE(=「Moonshot」「Value」「Opportunity」「Economics」)

 一方のFASTは「Focus」(選択と集中で無駄を排す)、「Superdiversity」(年齢区分などを改め、誰もが活躍する制度を策定する)、「Aggressive」(ICTを果敢に推進する)、「Trust」(進展する技術の信頼を高める)の頭文字をとったものだ。

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“静かなる有事”に対する変革実行8ヶ条その2「FAST(=「Focus」「Superdiversity」「Aggressive」「Trust」)

 このような施策により、社会全体がデジタルを前提とし、2020年の東京オリ・パラを迎える際に、諸外国に技術先進国としての日本をアピールしなければならないという。

「とはいえ大事なことは、根幹を支えるセキュリティだ。特に2020年はテロやサイバー攻撃を想定しなければならない。新幹線もダイヤが乱れると大混乱になる。便利な時代だが、一方でサイバー的に脆弱な国家になっている。そこで身近なところで、IoTセキュリティ総合対策を打ち上げ、ICTの進展と表裏一体で取り組んでいるところだ」(野田氏)。

 現在注目を浴びている人工知能(AI)に対する取り組みも、国内だけでなく、国際的な枠組みの中で日本の役割を果たして行く必要があるという。同氏は「シンギュラリティの問題もあるが、何が起きるかわからない中で、人間に身近で優しく、人間中心のルールを作れるように主体的に活動して行きたい」と強調した。

 最後に野田氏は、これからのICTのイメージとして、AI、5G、4K/8Kの技術を遊園地の観覧車に見立てた図を紹介した。

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国が描くICTの未来とセキュリティの役割。AI、5G、4K/8Kの技術を観覧車に見立て、その土台となるサイバーセキュリティがある。

「これらの要素技術を組み合わせると、遠隔医療のように人を幸せにできる技術が生まれる。消費者ベースで物事を考え、だまされないようにサイバーセキュリティという大きな土台もある。ICTにより弱者が社会に参加できる暖かい未来をつくりたい」とまとめた。

【次ページ】社会に対してインターネットコミュニティはどう向き合うか?慶応大 村井純氏と若手政務官が議論交わす

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