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  • 2020/04/14 掲載

1週間の勉強で生涯年収1億アップ? AIで仕事がどう変わるのか、教授に聞いてみた

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AI(人工知能)について、あなたはどんなイメージを持っていますか?「AIに自分の仕事が取って代わられる」「高度に発達したAIがいつか反乱する」という不安。あるいは逆に「AIに仕事を任せられるから楽になる」という期待を持っているかもしれません。AIの権威である高木 友博教授にそんな不安や期待をぶつけると、AIが得意とする仕事や自分の業務に生かす方法を、先生はざっくばらんに教えてくれました。「AIを1週間勉強すれば生涯年収は1億円増える」という衝撃の発言も……。

取材・執筆:編集部 渡邉聡一郎、撮影:大参久人、イラスト:じゅーぱち

取材・執筆:編集部 渡邉聡一郎、撮影:大参久人、イラスト:じゅーぱち

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イラストの詳細や、AIを正しく理解する方法は後述



AIが得意とする分野は?

──前編ではAIの仕組みやできること、できないことをいろいろ教えていただきました。確かに用途は限られているかもしれませんが、それでも人間よりははるかに高速な計算ができるわけですよね? 具体的に、AIはどのような分野で使えるのですか?

 一番わかりやすい例でいえば、マーケティングですね。

 AIは「推薦」が得意だと私は説明しましたね。過去の膨大な事例を参照してその人に似た買い物をしている人のデータを利用しますが、1000万人がそのサービスを利用しているとしたら、1000万人分のデータをAIはすぐに参照できます。

 これは、人間のマーケターには絶対できないことです。1000万人が過去に何を買ったかなんて、覚えていられませんからね。

 できないから、これまでは住んでいる地域、年齢、性別など少数の感覚的にわかりやすい属性で絞ったマーケティングをしていたわけです。「東京の10代の男子はこんなものを買う傾向があるから、こんな施策が効きそうだ」みたいに。

 しかし、それぞれの購買理由は、その商品のある特徴かもしれないし、特別な価格かもしれないし、直前に買った商品かもしれない。単純に性別や年令が要因で買ったと考えるのは、あまりに大雑把です。

 一方、AIは「東京の10代の男子」の1人ひとりが取った行動すべてを覚えていられる。AIは、その人の購買履歴、それまでに買った商品の特徴、時間などすべてを参照してターゲティングしますので、扱う特徴量の数は時に数万を超えます。

 当然、精度は格段に上がります。しかも、その処理速度はとてつもなく速い。これまで人間には物理的に無理だったワントゥワン(1 to 1)マーケティングが、AIによって可能になったのです。

photo
明治大学 教授
高木 友博氏

計算型人工知能の一種であるファジィ理論の世界屈指の権威。
マーケティング理論にも精通し、人の購買行動の解析、高精度ターゲティング及びマーケティング全体の高度デジタル化に関する先端的研究を行う。同時に、顧問として多くの企業で技術戦略や事業戦略、実プロダクト開発にも携わる。

──うわー、じゃあ属性で絞ったマーケティングをしているような人が、「AIに仕事を奪われる人」ってことですか?

 半分当たっていますが、短絡的にそのような結論に飛びつく必要はありません。ただ、今のAIは単純なことしかできませんが、代わりに量や速さでは人間の能力を超えます。

 だから、単純作業は機械に代替されていくでしょうね。たとえば銀行の窓口業務はすでに機械に置き換わっていますし、薬剤師のような判断が単純な仕事は置き換わっていくのでは、と個人的には予想しています。その人たちが、そこから新たな価値を生み出していく必要はあると思います。

 職業というくくりではなく、仕事の一部を代替される方が現実的だと思います。例を挙げると人事部門の、採用候補者の応募書類の1次スクリーニングはAIが得意とする領域です。

 過去の事例を参照して、「1次面接を通過した人」「落ちた人」でしきい値を引いて、どちらに属するかという「分類」ができるからです。少なくともまったく見込みのない候補者はリストから、人が担当するよりも圧倒的な低コストで除外できます。

 ざっくりとした基準を示すと、通常やっている業務の中で新入社員がやるような業務は、ほぼAIが代替可能と考えてもらって大丈夫です。マネージャークラスになると試行錯誤や業界の常識を用いて高度な判断を下すことが必要ですが、入力と出力さえ分かってしまえば真似できるような業務は、すべて置き換えられます。

「AIに反乱を起こされて死ぬ」と考える前に考えるべきこと

──なんだかそう聞くと、AIはやっぱりすごいんですね……。前編で先生が「AIはこんなことしかできない」と言うので、正直甘く見ていました。

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 私が最初に否定的な説明から入った理由は、過剰な期待をせず、正確に理解をしてほしかったからです。優秀な人間がもう1人増えたかのような認識をしてほしくはありません。言ったとおり、AIにできることは限られていますから。

 しかし、「部品」としてなら十分に使えて、しかも人間よりも優秀です。たとえば、電卓なんてはるか昔から人間の計算処理能力を超えているわけです。だからAIも電卓と同じで、ちゃんと使いこなせるかどうかが大切になるわけです。

 ついでに言うと、Webの普及とともに生活基盤がどんどんデータ化され、個人データを企業活動に利用して当たり前の時代になってきています。データが増えるということは、つまりAIを生かしやすい環境が整ってきているというわけです。

──そう考えると、やっぱりAIに仕事を奪われるんじゃ……。

 電卓だって人間を部分的には超えています。だからソロバンしかできない人がいたら、仕事を奪われていたでしょう。しかし人間は、単純計算を電卓に任せて便利な道具として使う側に回りました。AIを使いこなす側に回れば良いだけなので、AIを過剰に恐れる必要はありません。

 さらに言うと、「AIに反乱を起こされて死ぬ」なんて話もありますが、そんなことを考える必要はありません。その前にAIを使いこなせなくて職を失って死ぬ確率のほうがはるかに高いのです。「AIに仕事を奪われる」ではなく「AIを使える人に仕事を奪われる」ことを心配すべきです。

【次ページ】プログラミングは不要?AIを1週間学べば、生涯年収は1億円アップ

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