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  • 2016/03/31 掲載

女性活躍推進法が本格スタート、ANAや関電らの先行事例と直面する課題

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昨夏に成立した女性活躍推進法がいよいよ明日から施行され、企業や国、自治体に女性登用のための行動計画づくりが義務づけられる。政府はこの法律で、働く女性を後押しし、2016年を「女性活躍元年」にしようと意気込んでいる。しかし、保育所の待機児童問題や長時間労働など女性が働くための課題はまったく解消できていない。明治大商学部の藤田結子准教授(社会学)は「長時間労働など社会環境を改善せずに数値目標を掲げても、幹部を目指す女性は少ないのではないか」と厳しい見方を示している。女性活躍推進法は民間企業の女性課長15%達成など、政府が掲げる目標の追い風となることができるのだろうか。

政治ジャーナリスト 高田 泰(たかだ たい)

政治ジャーナリスト 高田 泰(たかだ たい)

1959年、徳島県生まれ。関西学院大学社会学部卒業。地方新聞社で文化部、地方部、社会部、政経部記者、デスクを歴任したあと、編集委員を務め、吉野川第十堰問題や明石海峡大橋の開通、平成の市町村大合併、年間企画記事、こども新聞、郷土の歴史記事などを担当した。現在は政治ジャーナリストとして活動している。徳島県在住。

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女性活躍推進法が実を結ぶために必要なこととは

企業に求められる4段階の取り組み

 厚生労働省均等業務指導室によると、女性活躍推進法は301人以上の従業員を抱える企業、国、自治体、学校、病院などの事業主に対し、
(1)各事業所の女性活躍に関する状況を把握し、課題を分析する
(2)行動計画を策定し、公表する
(3)行動計画を所轄の労働局へ届け出る
(4)行動計画に従って取り組みを進め、定期的に効果を測る
の4段階で取り組みを求めている。

 把握すべき状況には
□採用者に占める女性比率
□勤続年数の男女差
□平均残業時間の状況
□管理職に占める女性の割合
が含まれ、そこから各事業所の課題を分析する。例えば、女性が従業員全体の6割を占めるのに、管理職が1%しかいなければ、女性管理職の割合の低いことが課題となるわけだ。

 行動計画には「男女の勤続年数差を5年以内に縮める」、「総務部門で働く女性の比率を5割まで引き上げる」など具体的な数値目標が必要になる。計画期間や取り組みの実施時期を明記し、公表しなければならない。

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 行動計画に基づいて施策を進め、定期的に数値目標の達成状況を調べた結果、新たな課題が見つかれば、最初の段階から取り組みを繰り返して改善する。

 最大のポイントといえるのが、各事業所の現状や取り組みが厚労省のサイトで公開されることだ。他の事業所と簡単に比較でき、各事業所の本気度がひと目で分かる。

 企業からすれば自社のブランド戦略や採用に影響が及びかねない。厚労省均等業務指導室は「女性幹部の登用や長時間労働の解消に消極的だった企業の姿勢を変えることができる」と期待する。

日本の女性の社会進出は先進国で最低水準

 政府が女性活躍推進法制定へ動いた背景には、少子高齢化による労働力人口の急激な減少がある。総務省がまとめた2060年の生産年齢人口の予測では、2013年末で7,883万人いた15~64歳の生産年齢人口が4,418万人に落ち込むと推計している。

 多くの企業がこれまで女性社員の育成を二の次としてきたが、確実に減っていく労働力の新たな担い手として女性を登用しなければならない事態が迫っている。

 働く女性の多くが仕事と子育ての両立を目標としてきた。女性が労働力の担い手となれば、キャリアと子育ての両立が新目標になる。だが、それを実現するためには職場の環境づくりが欠かせない。旧態依然とした男尊女卑の企業風土を変えなければ、女性の活躍推進も形だけに終わる。

 日本の女性の就業率や管理職に占める割合は、先進国最低水準にとどまっている。内閣府のまとめでは、2014年で民間企業の課長相当職に占める女性の割合は9.2%、衆議院議員選挙立候補者に占める女性の割合は16.6%に過ぎない。

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女性管理職比率の国際比較
(第4回経済財政諮問会議 内閣府資料「雇用と所得の増大に向けて」をもとに編集部が作成。日本は2011年、オーストラリアは2008年、その他の国は2010年のデータ。)



 外国の女性管理職の割合は2011年で米国43%、フランス39%、英国36%。列国議会同盟(Interparliamentary Union。1889年,イギリス,フランス両国議員の提唱で国際仲裁期成列国議員会議として発足した団体。女性の政治参画にも取り組んでいる)が調べた2012年の国会議員の女性比率は世界平均で20.3%。日本の11.9%とは大きな差がある。

 OECD(経済協力開発機構)がまとめた日本の女性就業率は71.8%。80%前後を記録する欧州やカナダには及ばない。しかも、日本の場合、就業者のざっと6割が派遣やパートといった非正規労働者だ。実態は数字以上の格差があるとみていい。

【次ページ】ANA、関西電力の女性活躍に対する先進的な取り組み事例

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