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  • 2015/12/28 掲載

徳島県がOSSを地元開発して年5億円削減、それでもIT産業活性化には結びつかなかった理由

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徳島県は、2009年から複数のオープンソースソフトウェア(OSS)製品を業務システムに取り入れている。そもそもOSSの導入に踏み切った理由とは何だったのか。そして「Joruri(ジョールリ)」というオープンソースCMSを開発し、統一のシステム基盤「徳島県 e-県庁システム」を構築するに至った経緯とはいったいどのようなものだったのか。徳島県庁を訪ね、当時から今までシステムの変遷を見てきた徳島県 経営戦略部 情報システム課の山住 健治氏に話を聞いた。
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眉山山頂から望む徳島市街

長崎県の手法に学びOSS導入先進県として歩み始める

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 徳島県では2006年に、日本IBMで副社長を務めた経歴を持つ丸山 力氏をCIOとして招いた。CIOを設置することで、知事を本部長としたICT推進本部の活動を本格化、ICTガバナンスの強化に乗り出した。まず手を付けたのは、庁内業務とそれに使用されるシステムの洗い出しだった。

「情報システム課では全庁で利用するシステムしか見ていなかったので、各部署が個別に導入したシステムについては把握できていませんでした。そのため、まずは全体を把握するところからスタートしました」(山住氏)

 各部署の業務に特化したシステムは、それぞれの部署が発注し、個別最適化されたサイロ型で導入されていた。調査の結果、そうしたシステムが庁内に大小250以上もあり、機器やソフトウェアの重複も多いことが明らかになった。

 県庁全体のICTコストを削減し、なおかつガバナンスを強化するためには、重複するシステムを統合し、全体で最適化する必要があった。この大がかりなシステム再構築に合わせて、総務事務系のシステムも導入し、業務全体の効率化を図るという方針が定められた。

「ところがタイミングがよくありませんでした。地方交付税の削減やリーマンショックがあり、予算確保が難しい状況に追い込まれたのです。とはいえ、そのままの状態では重複したシステムの維持費を負担し続けることになります。なんとか低コストでシステムを再構築し、定期支出を抑える方法はないかとさまざまな自治体から情報収集を行いました」(山住氏)

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徳島県 経営戦略部 情報システム課 山住 健治氏
 青森県が進めていた庶務システムの導入、宮城県が進めていたシステム最適化などの視察も行ったが、最も注目したのは長崎県の取り組みだった。長崎県は総務事務系システムをOSSを使って開発し、他の自治体に無償提供するとアナウンスしていた。コスト面での課題を解決できるのではないかと、丸山CIOとともに現地へ足を運び、開発手法や徳島県に導入する場合の手順などについて詳細な話を聞いたという。

「ソフトウェア自体は無償なので、ベンダーが提供するパッケージ製品に比べて大幅なコストダウンが可能と考えました。ただし条件があったのです。それは、導入の際には長崎県のITベンダーを使うということでした」(山住氏)

 システム自体を無償提供する代わりにインテグレーションを地元企業に請け負わせることで、県外からの収入を増やすというのが長崎県の狙いだった。しかし地元の大規模案件である県庁のシステム再構築に他県のベンダーが参入するという話は、当然ながら徳島県のITベンダーが反発した。導入までは長崎県のITベンダーが担当し、その後の保守・運用は地元企業に委託するということで一時は決着しかけたが、最終的には受け入れられないという結論にたどりついてしまった。

「結局一部のシステムについて、最新のシステム設計図を作成、委託した上で徳島のITベンダーに構築してもらうという手法を取りました。それでもゼロから開発するよりはトータルコストを低く抑えることができました」(山住氏)

【次ページ】地元開発で年5億円削減、それでもIT産業活性化には結びつかなかった理由とは
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