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- 2018/05/14 掲載
復活のウーバー、トヨタも危惧する「交通の未来」で何を握ろうとしているのか
もう単なるライドシェア企業ではない
相次いで新業態を発表
今年に入ってウーバー関連の最大の話題といえば、東南アジアでのビジネスをライバル企業のGrab社に売却したというニュースではないだろうか。撤退、と大きな見出しが踊ったが、ウーバーにとってはライドシェアというのは今後のビジネス展開の一部であり、より広範な事業拡大のための戦略とも捉えられる。実際にウーバーは今年に入りさまざまな新業態を発表している。まず電動自転車シェアリングサービス企業であるJUMP Bikes を1億ドルで買収。続いて本社のあるサンフランシスコ一帯でウーバー・レントと名付けたレンタカーのパイロットプログラムをGetaround社との提携で開始した。Getaround社は元々カーシェアリングを展開していた企業で、従来のカーシェアリングよりは少し期間が長め、しかしスマホアプリで簡単に車を借り出せるというシステムだ。
さらにウーバーはロンドンのモバイル・チケット会社Mosabiとも提携、スマホから公共交通のチケットを購入できるというシステムまで確立しつつある。
さらに2017年にはロサンゼルス空港周辺で「空飛ぶタクシー」構想を打ち出し、実現に向けての整備も現在急ピッチで進んでいる。
ライドシェア企業でありながら、アルファベットの自動運転部門ウェイモと訴訟になるほどに自動運転の導入、テスト走行にも力を入れている。ウーバー・イーツと名付けたレストランからのデリバリーサービスにも注力。さらにはドローンによる食品宅配も計画している。
いたずらな多角経営か? ウーバーが目指す未来とは
こうしたウーバーの動きに対し「コアとなるビジネスで黒字を打ち出すことができず、いたずらに多角経営化して自分の首を締めることになる」という批判がある一方で、「ウーバーが目指すのはあらゆる交通に関するニーズを1本化するまったく新しいアプリの開発」を期待する声もある。つまり、ウーバーアプリを開くことで、ライドシェア、カーシェアリング、自転車レンタル、デリバリー、公共交通チケット予約、とさまざまなことができるようになる。
これらのサービスは現在でも独自のアプリがあり、簡単な操作でオーダーすることができるが、一々別のアプリを立ち上げなくても一つのアプリですべてが可能になるという点が新しい。
「ラストマイル・ソリューション」の観点から見るとわかりやすい
ラストマイル・ソリューションとは、国土の広い米国で公共交通が抱える最大の問題点と言われる。たとえばロサンゼルス市を抱えるロサンゼルス郡にはメトロという公共交通(バス、高速バス、鉄道を含む)があるが、利用率は低く、赤字続きとなっている。
その理由は簡単で、自宅からバス停あるいは鉄道駅までが遠く、利用が不便であるためだ。
そのため、メトロでは独自に貸し自転車事業を立ち上げ、特にロサンゼルスダウンタウン地区のほとんどの鉄道駅付近に貸し自転車を常備するようになった。
さらにメトロでは公共交通利用促進のため、現在ウーバーのようなライドシェアと提携して「駅、あるいはバス停から自宅まで」の部分を埋めようという新たな試みを進めている。
特にロサンゼルスのような広大な都市ではライドシェア、自転車などのサービスなしに公共交通を利用するのは非常に困難なのだ。ウーバーはまさにこのラストマイル・ソリューションを総合的に提供し、公共交通の一環、すなわち都市インフラの一部になろうとしているのだ。
【次ページ】フォードもトヨタも危機感を抱く
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