• 会員限定
  • 2012/10/15 掲載

政府CIO遠藤紘一氏が語る、新しい電子政府のあり方とは

「政府のIT戦略は20年前のレベル」

  • icon-mail
  • icon-print
  • icon-hatena
  • icon-line
  • icon-close-snsbtns
記事をお気に入りリストに登録することができます。
2012年8月に内閣官房政府情報化統括責任者(政府CIO)に任命された遠藤紘一氏は、リコーの副社長として、ITを含めた全社構造改革を担当し、余剰人員を成長事業に振り向けることに成功した人物としても知られている。政府CIOに就任してまだ間もないが、民間企業での経験を生かし、新たな電子行政の実現に向けて舵とりを始めている。その遠藤氏はCEATEC JAPAN 2012の講演で、「日本政府のIT戦略は、我々が(リコーで)20年前に通り過ぎてきたレベルだ。遅れている部門が1つでもあると、総合的に足を引っ張られてしまう。」と手厳しく指摘した。

フリーライター 井上 猛雄

フリーライター 井上 猛雄

1962年東京生まれ。東京電機大学工学部卒業。産業用ロボットメーカーの研究所にて、サーボモーターやセンサーなどの研究開発に4年ほど携わる。その後、アスキー入社。週刊アスキー編集部、副編集長などを経て、2002年にフリーランスライターとして独立。おもにロボット、ネットワーク、エンタープライズ分野を中心として、Webや雑誌で記事を執筆。主な著書に『キカイはどこまで人の代わりができるか?』など。

組織の体質改善は、生活習慣病を治すことに似ている

photo
内閣官房 政府CIO
遠藤 紘一氏
 日本のIT戦略はこれまで、2001年から始まった「e-Japan戦略」を皮切りに、「e-Japan戦略II」「新IT改革戦略」「i-Japan戦略2015」「新たな情報通信技術戦略」という形で進んできた。これらの戦略に沿って、ブロードバンドインフラの整備についてはそこそこ現実したものの、それ以降のIT利活用や、ITによる構造改革、デジタル技術による恩恵などは、まだほとんど実現できていないのが実情だ。

 遠藤氏によれば、「この原因は、IT戦略が政治主導で行われ、民間の意見を取り入れても、意図することが正確に理解されず、結果としてIT戦略に民間の知見があまり反映されなかったからだ。」と説明する。

画像
これまでの日本のIT戦略の流れ。E-Japan戦略から始まり、ブロードバンドインフラは整備されたが、ITの利活用など、まだ不十分なものも多い
(出典:遠藤氏講演資料,2012)


関連記事
 実は、政府CIO設置に向けた取り組みが始まったのは最近のこと。2001年の「IT基本法」に伴って、IT戦略本部が設置された後、紆余曲折を経て2010年に策定された「新たな情報通信技術戦略」の中で、政府CIO設置が明記された。その後、「電子行政推進に関する基本方針」や「政府情報システム刷新のための共通方針」が決まり、2年後のようやく今年8月になって遠藤氏が政府CIOに任命されたという経緯がある。

 一連の取り組み自体は大いに評価できるが、民間レベルで考えると「やはり動きが遅すぎる」(遠藤氏)。まだ法的な整備もされておらず、来年の通常国会までに政府CIOの位置づけを明確にし、実務を推進していくことになるという。

「このような状況でも、政府CIOに期待される役割はとても大きいものがある。民間の知見や人材を投入し、各方面でご協力をいただきながら、新しい電子政府を実現していきたい。」(遠藤氏)

 だが、長年同じ思考パターンに慣れてしまった組織を改善することは並大抵のことではない。

「組織の体質改善を人間に例えれば、日常の生活習慣病を治すことに似ている。これまで当たり前だった習慣を少しずつ努力しながら変えていき、ようやく生活習慣病を治すことができる。」(遠藤氏)

 大臣や官僚がコロコロと変わる現体制では、政府の情報システムや行政サービスの改革を本腰を据えて行うことは容易ではない、というところが本音であろう。

電子行政の改革は、お客さまを重視する民間視点によって推進

 前述の「政府情報システム刷新のための共通方針」に基づき、先ごろ政府情報システム刷新有識者会議がスタートした。この中で、政府の省庁全体で一体どのくらいのシステムが存在し、そこに何人の担当者が張り付いているのかを把握するために棚卸しを行ったという。すると、スタンドアローンのコンピュータを除いて、約1500ものシステムがあることが分かった。このような綿密な棚卸調査の結果、新たな電子政府への課題も見えてきた。

「たとえば業務の分析・改善のために役立つ基本情報が揃っておらず、情報が可視化がされていなかったり、縦割り組織やシステムのおかげで、システムの重複や組織間の連携(府省間、府省-自治体、自治体-自治体)ができていないといった課題が浮かび上がった。」(遠藤氏)

 自ら業務で使うシステムでさえ統一できない有様なので、国民を相手にする行政サービスではさらに課題も大きい。実際に現場の職員も国民の声を汲み取りきれず、そのニーズをちゃんと理解できていないことも問題点の1つだ。また専門家が不足していることも深刻だ。これは単なるITの専門家ではなく、業務革新のためにITを融合させることができる経験者が求められているということだ。

【次ページ】政府CIOが手がける今年度の取り組みとは?

関連タグ

関連コンテンツ

あなたの投稿

    PR

    PR

    PR

処理に失敗しました

人気のタグ

投稿したコメントを
削除しますか?

あなたの投稿コメント編集

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

通報

このコメントについて、
問題の詳細をお知らせください。

ビジネス+ITルール違反についてはこちらをご覧ください。

通報

報告が完了しました

コメントを投稿することにより自身の基本情報
本メディアサイトに公開されます

必要な会員情報が不足しています。

必要な会員情報をすべてご登録いただくまでは、以下のサービスがご利用いただけません。

  • 記事閲覧数の制限なし

  • [お気に入り]ボタンでの記事取り置き

  • タグフォロー

  • おすすめコンテンツの表示

詳細情報を入力して
会員限定機能を使いこなしましょう!

詳細はこちら 詳細情報の入力へ進む
報告が完了しました

」さんのブロックを解除しますか?

ブロックを解除するとお互いにフォローすることができるようになります。

ブロック

さんはあなたをフォローしたりあなたのコメントにいいねできなくなります。また、さんからの通知は表示されなくなります。

さんをブロックしますか?

ブロック

ブロックが完了しました

ブロック解除

ブロック解除が完了しました

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

ユーザーをフォローすることにより自身の基本情報
お相手に公開されます