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- 2012/10/15 掲載
政府CIO遠藤紘一氏が語る、新しい電子政府のあり方とは
「政府のIT戦略は20年前のレベル」
組織の体質改善は、生活習慣病を治すことに似ている
遠藤氏によれば、「この原因は、IT戦略が政治主導で行われ、民間の意見を取り入れても、意図することが正確に理解されず、結果としてIT戦略に民間の知見があまり反映されなかったからだ。」と説明する。
一連の取り組み自体は大いに評価できるが、民間レベルで考えると「やはり動きが遅すぎる」(遠藤氏)。まだ法的な整備もされておらず、来年の通常国会までに政府CIOの位置づけを明確にし、実務を推進していくことになるという。
「このような状況でも、政府CIOに期待される役割はとても大きいものがある。民間の知見や人材を投入し、各方面でご協力をいただきながら、新しい電子政府を実現していきたい。」(遠藤氏)
だが、長年同じ思考パターンに慣れてしまった組織を改善することは並大抵のことではない。
「組織の体質改善を人間に例えれば、日常の生活習慣病を治すことに似ている。これまで当たり前だった習慣を少しずつ努力しながら変えていき、ようやく生活習慣病を治すことができる。」(遠藤氏)
大臣や官僚がコロコロと変わる現体制では、政府の情報システムや行政サービスの改革を本腰を据えて行うことは容易ではない、というところが本音であろう。
電子行政の改革は、お客さまを重視する民間視点によって推進
前述の「政府情報システム刷新のための共通方針」に基づき、先ごろ政府情報システム刷新有識者会議がスタートした。この中で、政府の省庁全体で一体どのくらいのシステムが存在し、そこに何人の担当者が張り付いているのかを把握するために棚卸しを行ったという。すると、スタンドアローンのコンピュータを除いて、約1500ものシステムがあることが分かった。このような綿密な棚卸調査の結果、新たな電子政府への課題も見えてきた。「たとえば業務の分析・改善のために役立つ基本情報が揃っておらず、情報が可視化がされていなかったり、縦割り組織やシステムのおかげで、システムの重複や組織間の連携(府省間、府省-自治体、自治体-自治体)ができていないといった課題が浮かび上がった。」(遠藤氏)
自ら業務で使うシステムでさえ統一できない有様なので、国民を相手にする行政サービスではさらに課題も大きい。実際に現場の職員も国民の声を汲み取りきれず、そのニーズをちゃんと理解できていないことも問題点の1つだ。また専門家が不足していることも深刻だ。これは単なるITの専門家ではなく、業務革新のためにITを融合させることができる経験者が求められているということだ。
【次ページ】政府CIOが手がける今年度の取り組みとは?
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