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  • 2018/03/06

広告枠減少のフェイスブック、それでも「無敵」な理由

連載:米国経済から読み解くビジネス羅針盤

フェイスブックは2017年1月、多くの「フェイクニュース」をユーザーに配信したために、結果として世論を歪めてしまったと批判を受け、Facebookのフィード方針を変更した。友人や知人からのフィードが企業やブランドからのものに優先され、コンテンツの質の向上が図られる。これにより、広告主にどのような影響がもたらされるのか?代替プラットフォームは?

在米ジャーナリスト 岩田 太郎

在米ジャーナリスト 岩田 太郎

米NBCニュースの東京総局、読売新聞の英字新聞部、日経国際ニュースセンターなどで金融・経済報道の基礎を学ぶ。現在、米国の経済を広く深く分析した記事を『週刊エコノミスト』などの紙媒体に発表する一方、『Japan In-Depth』や『ZUU Online』など多チャンネルで配信されるウェブメディアにも寄稿する。海外大物の長時間インタビューも手掛けており、金融・マクロ経済・エネルギー・企業分析などの記事執筆と翻訳が得意分野。国際政治をはじめ、子育て・教育・司法・犯罪など社会の分析も幅広く提供する。「時代の流れを一歩先取りする分析」を心掛ける。

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フェイクニュース騒動を受けてフィード方針を変更したフェイスブック。これからの方針と勝ち筋はどこにある?
(© Production Perig – Fotolia)


「質を追求する」発言は自信の表れ

 食品・日用品の世界大手である英蘭ユニリーバは2月12日にフェイスブックに対し、「偽ニュースや人種差別的な表現、児童に悪影響を及ぼすコンテンツなどの監視体制が十分に確立できない場合、広告出稿をやめる」と警告した。収益の大部分を広告収入に依存するフェイスブックにとっては、重い意味を持つ。

 だがフェイスブックは、すでに先手を打っている。同社は1月に、ニュースフィードに表示される投稿の優先順位を変更すると発表した。これを受けて市場では、ユーザーの滞在時間の減少が広告収入下落につながると受け止められ、直後の1月12日の株価が6%も下がった。ところがその後、投資家たちはこの方針変更の持つ本当の意味を理解し、株価はやや持ち直している。

 なぜ投資家たちは、ユーザーの滞在時間が減っても「フェイスブックは大丈夫」と見ているのか。

 それは、フェイスブックの広告料金が「入札制度」を採用しているからだ。フィード広告枠が減少すれば、限られた供給に対する相対的な需要がさらに高まり、広告料金が上昇して同社の収益増大に貢献する。

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フェイスブックの四半期ごとの前年比収益の伸びは、限られたニュースフィードの広告枠がすべて埋まり、さらに枠が削減されることで鈍化しているものの、依然として高い数字を維持している。
(出典:TechCrunch


 事実、2017年10~12月期にフェイスブックの広告料金は前年比で43%も伸びている。1日当たりのアクティブユーザー数(DAU)や広告料金の増加のペースは以前に比べて落ちているものの、10~12月期現在のDAU が14億人と圧倒的なスケールを誇るため、広告主は無視できない。

 金融大手RBCキャピタルなどの調査によれば、フェイスブックが開発した広告主向けの顧客ターゲティングツールは投資利益率が極めて良好で、0から8の満足度のスケールの中で、6.7という好成績を叩き出している。

 シェリル・サンドバーグ最高執行責任者(COO)は、10~12月期にアクティブな広告主の数が600万を突破したと明かしているが、これは1~3月期と比較して100万社が新たにフェイスブックの広告を利用し始めたことを意味する。このように広告主の数が増える一方、広告枠はフェイスブックにより減らされているのが現状である。

 マーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)が1月、「ユーザーの滞在時間を犠牲にしてでも質を追求する」と発表したのは、「広告枠が減って、料金が上がっても、広告主はより多くのお金を払う」という自信から来る読みと、収益の裏付けがあったからこそなのだ。フェイスブックはまさに、「防弾チョッキを着ている」(米投資サイト『モトリー・フール』)無敵の状態だ。

フェイスブックの“YouTube"計画、「Watch」

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 こうした中フェイスブックは、「Watch(ウォッチ)」と呼ばれる、YouTubeのような無料動画共有サービスを立ち上げ、静的ウェブページにおける広告枠の減少を補う、広告収入の新たな柱に育てようと計画している。

 従来のフェイスブック上の広告よりでも60秒~90秒程度の動画広告は配信できるが、Watchではさらに長い動画を配信できる。フェイスブックにとっても広告主にとっても可能性が広がるといえる。10~12月期、ユーザーの滞在時間が1日当たり5,000万時間も少なくなった分を、新たに動画で補完できるかもしれない。

 動画をアップロードするクリエーターには、YouTubeと同様に広告収入の中から報酬が支払われる。クリエーターたちにとっては、報酬基準の厳格化で収益性が落ちてきたYouTube以外の新たな収入源ができることになり、「ウィン・ウィン」の関係になる可能性がある。

 オンライン広告における技術的標準規格の策定、動向調査や法整備などを行う組織であるインタラクティブ・アドバタイジング・ビューローによれば、2017年の上半期におけるYouTubeなどデジタル動画広告市場の規模は52億ドル(約5,544億円)に達しており、現在はYouTubeに集中する広告の一部が「Watch」に流れるかもしれない。広告代理店の間での前評判は上々だという。新たな顧客向けの料金割引なども、注目したいところだ。

ユーザーターゲティング能力は広告主にとって大きな魅力

 さらに広告主の企業にとって朗報となるのが、フェイスブックが特許を取得した、ユーザー属性を特定するアルゴリズムだ。多くの情報から導き出されるデータポイントを使い、ユーザーの最終学歴、旅行歴、保有するデバイス数、居住地、住居が持ち家か賃貸かの状況などを正確に推定できる。これにより、収入・時価総額・居住地郵便番号などの分類できめ細かく広告を目的の層に届けることができる。

 加えてフェイスブックは、ユーザーの感情・行動・計画のシェア機能である「リスト機能」を充実させる。この機能も広告主がよりきめ細やかで正確な広告を打てるようにするツールのひとつだ。ザッカーバーグCEOが「フェイスブックは友人や家族とのつながりの原点に立ち返る」と宣言したのは、実は広告収入の成長の確保が念頭にあったと見るべきだろう。

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2月13日に導入されたリスト機能。ユーザーは関心のあるトピックをリストで表現し、友人や家族とシェアできる
(出典:フェイスブック 報道発表)


 こうして、広告主にとって満足度の高いフェイスブックの広告料金はさらなる値上がりが予想される。これに対して、広告主である企業側が打てる対策には、大きく分けて2種類がある。

 「Watch」の動画広告や、新たなユーザー属性絞り込みなど、フェイスブックの新たな広告形態を利用すること、あるいは代替の効果的な媒体を探すことである。

【次ページ】勝機を見出すグーグルとアマゾン、それぞれの戦略は?

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