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  • 2019/03/26

「自動運転」をトラックに応用、ドライバー不足にいよいよ現実解か

高速道路で、3、4台のトラックの隊列の先頭車だけドライバーが乗り、後続車は無人でそれについていく「隊列走行・後続車無人」のシステムの実証実験が行われている。最新のテクノロジーを活用して運送業界の喫緊の課題「ドライバー不足」を解消する国家プロジェクトで、政府は2022年の商業化を目指している。トラック単独での無人自動走行よりも技術を早く確立できる「現実解」として注目されている。

経済ジャーナリスト 寺尾 淳

経済ジャーナリスト 寺尾 淳

経済ジャーナリスト。1959年7月1日生まれ。同志社大学法学部卒。「週刊現代」「NEXT」「FORBES日本版」等の記者を経て、経済・経営に関する執筆活動を続けている。


新東名高速道路での実証実験終了

 2月28日、国土交通省と経済産業省が1月22日から新東名高速道路で実施していた「トラック隊列走行の後続車無人システムの公道実証」が終了した。25トントラックが10m間隔で最大3台連なり、後続車は前のトラックを追尾する無人自動運転(今回は安全のために人を乗せる)で、浜松SA~遠州森町PA間の約15キロを平均時速70キロで往復した。

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 経済産業省製造産業局自動車課によると事故もなく無事に終わり、技術確立に向けてのデータを収集、蓄積できたという。2019年度の実証実験の詳細はまだ検討段階だが、国土交通省が2018年12月に立ち上げた有識者会議が、近く中間報告をまとめる。

 トラック隊列走行の後続車無人システムとは、トラックが一列に隊列(コンボイ)を組んで走行し、そのうち先頭車だけドライバーが運転し、後続車は無人の自動運転で先頭車の後を追っていく仕組みを指す。車間距離を一定に保ち、車線変更も行う。

 先頭の機関車だけ運転士が乗務し貨車は無人の貨物列車の仕組みを、トラックで行うようなイメージだ。ただしトラックとトラックの間に連結器もロープもあるわけではない。無線通信など最新のテクノロジーで先頭車を追尾していく。

 システムとしては、通信を交わして先行車の制御情報を受信し、加減速を自動で行い車間距離を一定に保つ機能「CACC(Cooperative Adaptive Cruise Control)=協調型車間距離維持支援システム」「先行車追跡制御(トラッキング)システム」、道路の白線を検知して車線内の走行を維持できるようステアリングを調整できる「LKA(Lane Keeping Assist)=車線維持支援システム」、GPSや三次元レーザーレーダー「LiDAR(ライダー)」などを搭載している。

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公道実証実験のシステム概要
(出典:国土交通省)

 トヨタグループの豊田通商が経済産業省から受託し、東大発の自動運転技術ベンチャー、先進モビリティ(本社・東京)とともに技術開発と実証を行っている。車両は日野自動車の「プロフィア」を改造した。

 世界初の公道実証実験は2018年1月から行われている。今回の実証実験では、車間距離を35mから10mに縮めてほかの車両が割り込みにくくし、さらに車線変更を初めて行っている。

 「隊列走行・後続車無人」の安全性が実証され、商業化にこぎ着けることができれば、大型トラックが3、4台で連なって走ってもドライバーは1人ですむ。それは慢性的なドライバー不足に悩むトラック業界にとって「福音」になると期待されている。なぜなら、トラックドライバーの不足は「業界存亡の危機」と言っても大げさではないほど、深刻化しているからだ。

深刻化するトラックドライバーの不足

 国土交通省の統計によると、日本国内の貨物総輸送量は年間47億8700万トンで、そのうち43億7800万トン、91.5%をトラックが占めている。内航海運は7.6%で、鉄道は1%にも満たない(2016年)。日本の産業も国民生活も、トラック輸送が支えている。

 総務省の「労働力調査」によると、道路貨物運送業の就業者数は2015年の185万人から2017年の191万人へ、2年で3.2%増加した。もっとも、全就業者に占める比率は2014年から2017年まで2.90~2.92%でほとんど変化はない。

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道路貨物運送業の就業者数、全就業者に占める比率の推移

 リーマンショック後の2010年に全就業者数が6257万人で底を打った時も181万人で2.89%だった。不況時でもそれほど人は減らないが、好況時も人が大きく増えることはなく、貨物量の伸びに追いつかずに労働力不足に悩まされるという構造がある。

 全日本トラック協会は四半期ごとに「トラック運送業界の景況感(速報)」というレポートで「雇用状況」という労働力不足指数を発表している。0が均衡点で、マイナスなら労働力過剰、プラスなら労働力不足だが、2011年7~9月期以来ずっとプラス(労働力不足)が続き、ほぼ右肩上がりで推移している。

 2016年4~6月期に60.9に下がったことがあるが、2017年10~12月期に100を超えた後は88.9~96.4という高い水準で推移し、協会では2019年1~3月期、再び100を超えると見込んでいる。

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トラック運送業界の労働力不足指数の推移

 厚生労働省がハローワークの職業紹介データを基に算出する「自動車運転業」の有効求人倍率は、全国平均3倍前後に張りついたまま。運送業者はドライバーがいなければトラックを動かせず、1円の売上も利益もあげることができない。労働力不足が経営の危機に直結してしまうのが、この業界である。

 トラックドライバーに人気がない最大の理由は労働時間が長いこと。厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」によると、年間労働時間は全産業平均2136時間に対し、大型トラックのドライバーは2604時間で21.9%多く、中小型トラックのドライバーは2592時間で21.3%多かった(2017年)。その差は何年たっても縮まらない。

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トラックドライバーの年間労働時間の推移

 複数のドライバーが乗務する長距離トラックの場合、途中で運転を交代して走行中のトラック内で休憩や仮眠をとっても拘束時間にカウントされ、労働時間よりさらに長い。労働基準法では拘束時間は1日最大16時間までに制限され、トラックを降りて8時間以上の休憩をとるように定められている。しかし、「働き方改革」が叫ばれながら、実態はなかなかその通りにはいかないという。

 労働時間が長くても賃金水準が高ければまだいいが、厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」によれば全産業平均の年間所得額491万円に対し、大型トラックのドライバーは454万円で7.5%低く、中小型トラックのドライバーは415万円で15.5%低くなっている(2017年)。かつてはそのへんのサラリーマンよりも実入りのいい職業だったが、バブル崩壊後、逆転してしまった。

 長い労働時間、他産業より見劣りする賃金水準も影響し、トラックドライバーの労働力不足は慢性化した。総務省の「労働力調査」によると就業者の44.8%は40~54歳で、29歳以下の若年層は9.4%にすぎない。このまま10年、20年経過したら、ドライバーがいなくて動かせないトラックが大量に出て「人手不足倒産」が続出してしまう。

【次ページ】現実的なドライバー不足解決策として期待

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