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  • 2010/12/20 掲載

【対談インタビュー】CIOに聞く情報システム部門の自己改革<第4回>大成建設 柄 登志彦氏、成瀬 亨氏

CIO・システム部長に聞く、対談インタビュー連載

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ユーザー部門の業務改革を期待される情報システム部門の中には、自部門の改革も着実に進めているところがある。彼らは、どのような自己改革を成し遂げたのだろうか。本連載では、情報システム部門のトップに自ら語っていただこう。第4回は、大成建設 社長室 情報企画部長の柄 登志彦氏と、同 情報企画部 企画室長 成瀬 亨氏に話をうかがった。大成建設がこれまでに進めてきたシステム部門の自己改革は、ITのコストを大きく下げながら、投資効率を向上させる仕組みの確立である。

アクト・コンサルティング 取締役 経営コンサルタント 野間 彰

アクト・コンサルティング 取締役 経営コンサルタント 野間 彰

アクト・コンサルティング 取締役
経営コンサルタント

大手コンサルティング会社を経て、現職。
製造業、情報サービス業などの、事業戦略、IT戦略、新規事業開発、業務革新、人材育成に関わるコンサルティングを行っている。
公益財団法人 大隅基礎科学創成財団 理事。
関連著書『正しい質問』アマゾン、『イノベーションのリアル』ビジネス+IT、『ダイレクト・コミュニケーションで知的生産性を飛躍的に向上させる 研究開発革新』日刊工業新聞、等

アクト・コンサルティング
Webサイト: http://www.act-consulting.co.jp

これまでの連載

IT投資を厳しく評価する仕組みを作る


 大成建設では、トップからの大幅なITコスト削減指示に対応し、新たなIT投資評価の仕組みを構築した。まず、それまで管理部門にあったシステム部門を全社横断的な経営課題を掌っている社長室に移し、ガバナンスを効かせ発言力を確保した。そして、IT投資を詳細に把握するため、情報企画部にIT予算の編成と実施の統括機能を集約し、全社のIT投資を見える化した。

 この仕組みを維持するためには、厳しい評価と、この評価に耐える妥当な企画策定が必要である。そこでまず、情報企画部内に、室長以上からなる評価体制を作った。情報企画部には、企画(インフラや部門を越えたIT企画)、コンサルタント(ユーザー窓口、企画支援)、推進(プロジェクトの推進と、セキュリティなど全社的な施策の推進)、IT調達という4つの機能をもった室が存在する。1人で妥当な評価を行うことは難しいが、それぞれの室長が、専門分野の知見を基に協力して評価を行うことで、厳しく、妥当な評価が実現できる。たとえばIT調達室は、開発手段や運用方法、コスト相場観や先行事例に基づくリスクとコントロール方法に関して、評価することができる。企画室は、インフラの実現性や全体最適の観点で評価できる。各室長の知見を駆使した評価の後に、情報企画部長が判断を下し、案件の規模と影響度によってはそれ以上の決裁者が最終判断を下すのである。

 合わせて、コンサルタント室をユーザー部門の窓口として設置し、あらゆる相談を受け、協力してITテーマの企画提案を行う体制とした。いかに業務を理解しているユーザーといえども、システムの専門家の支援なしに妥当な企画は難しいからだ。コンサルタント室のメンバーには、情報技術のバックグラウンドを持ち他部門を経験してきた人間や、技術畑の人間など、多種多才の人材を配している。これによってコンサルタント室に、業務とシステムの両方を理解し、ユーザーを支援して企画提案を共同で進める力を持たせた。

 ただし上記仕組みを維持するためには、情報企画部が、ユーザー部門に信頼されることが前提となる。そこで情報企画部では、透明性、公平性を確保するため、予算の審議状況、執行状況をすべて見える化し、社内イントラで公開している。さらに、ユーザー部門とSLAを結び、これを達成することをコミットメントしている。実は今回のような情報企画部の社外メディアへの発信も、信頼獲得の一環として、積極的に対応している。

 信頼獲得には、確実な開発、運用を実施できることも必要だ。そこで、システム子会社の社長を情報企画部長が兼任し、一体経営を進めている。たとえば開発・保守・運用の強化では、ITIL、COBITを導入し、プロセスの標準化を徹底した。

自由闊達な風土がシステム部門の改革を支える

 上記一連の改革は、同社が大成スピリットとして維持してきた、自由闊達な風土によって支えられている。大成建設の自由闊達な風土は、業界で初めて株式公開を行い、社名に「建設」と用いたことからも、よくわかる。情報企画部の場合、たとえばリスクをテイクして先進技術を導入し早期に効果を上げることに、この風土を見ることができる。

 1991年という早い段階で、部門主導で1人1台のパソコン導入が始まったという。R&D部門がApple社のMacでいち早く始めたのである(現在はWindowsパソコンで統一されている)。オープン化については、基幹系のフルJava化を2005年に完成させた。ただし、やみくもにリスクをテイクして新技術を採用しているのではない。これはと思われる技術が出ると、準備に時間をかけ、調査を徹底し、自社内で必要な技術や知識を積み上げ、リスクをコントロールしているのである。技術は、積み上げなければ使い物にならない。そのためには時間がかかる。そこで、検討に早く着手するのだ。(たとえばオープン化の場合、準備は2000年から開始している。)

 先に示したIT投資評価の仕組みも、この自由闊達な風土が支えている。情報企画部の社員には、なぜ予算権限を情報企画に集めて、このような仕組みを作ったか、その背景や狙いを示し、納得させている。その上で、自由にさせるのだという。しかし、上述のとおり厳しい評価を実施しているため、詰めが甘い企画やリターンが曖昧な企画、新しい業務プロセスが明快に示されていない企画は、容赦なく落とされる。このような自由かつ厳しい仕組みが、社員のやる気を引き出し、高いモチベーションを維持しているのである。

 柄氏は、このような自由闊達な風土に、さらに新たな力を加えようとしている。それは、「モットー」と呼ぶ思考行動の指針だ。現在「コミュニケーションエキスパートを目指す」というモットーを徹底している。たとえITILなどを用いたプロセスの標準化が徹底されても、突発的な事態には思考や行動の背骨になるような指針がなければ対応できない。だからといって、チェックリストやさらに細かなマニュアル化などに走らず、骨格となる考え方を示し、あとは自由にやらせ、各自に考えさせるところが、大成建設らしいやり方と言えるだろう。

 では、次ページより、柄氏、成瀬氏との鼎談インタビューの全体を紹介しよう。

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