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  • 2016/05/23 掲載

GEジャパン熊谷昭彦CEOが語る、世界をリードする「次世代」製造業のあり方

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製造業を取り巻く環境は現在、大きく変わりつつある。その新たな産業の時代をリードしているのが、米ゼネラル・エレクトリック(GE)だ。ソフトウェア・アナリティクスによってさまざまな機器やオペレーションの生産性向上・最適化を図る「インダストリアル・インターネット」をはじめ、次世代型製造業に向かって新機軸を次々に打ち出すGEの挑戦を、GEジャパン 代表取締役社長兼CEOの熊谷昭彦氏が語った。
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GEジャパン
代表取締役社長兼CEO
GEコーポレート・オフィサー(本社役員)
熊谷 昭彦 氏


GEが推進する3つの“The Future of Work”とは

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 航空機エンジン、医療機器、産業用ソフトウェア、鉄道機器、発・送電機器、水処理機器、化学プロセス、鉱山機械、石油・ガス、家庭用電化製品、金融など、幅広い事業をグローバルに展開するGE。その総売上高は約1,174億ドル(2015年度)に達しており、世界最大のコングロマリットと称される同社が2000年代から進めてきたのが、大胆な事業ポートフォリオの“入れ替え”だ。

 2007年にプラスティック部門、2011年にメディア&エンターテイメント事業を売却したのに続き、2015年から進めてきたキャピタル部門の売却も最終段階にある。一時期はGE全体の利益の半分以上を占めていた稼ぎ頭であるキャピタル部門の大半を手放すというのだから、その衝撃度は半端ではない。

 もちろん事業を売却するばかりではない。一方で進めているのが、仏重電大手アルストム社のエネルギー部門の買収をはじめとする超大型のM&Aである。

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GE事業のポートフォリオ戦略
(出典:GE講演資料)


 こうした事業再編の先にGEが見据えているのが、「デジタル・インダストリアル・カンパニー」への変革だ。「ガートナー ITインフラストラクチャ&データセンター サミット 2016」の基調講演に登壇したGEジャパン 代表取締役社長兼CEOの熊谷昭彦氏は、その狙いを次のように語る。

「インダストリー領域にGEの事業をあらためて集約するとともに、デジタル技術と現実世界の統合および活用を進めるべく、ソフトウェアとアナリティクスへの投資を拡大する。また、クラウドソーシングや外部とのコラボレーションも促進していく。ハードウェア主体のテクノロジー・カンパニーからハードウェア+ソフトウェアのソリューション・カンパニーへの転換を図り、その総合力で差別化を図る」

 具体的にGEは、今後どのようなビジネスを展開しようとしているのか。「The Future of Work」として位置付けているのが、インダストリアル・インターネット、アドバンスト・マニュファクチャリング、グローバル・ブレインの3つの事業戦略である。

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The Future of Work
(出典:GE講演資料)


世界各地で成果を示し始めたインダストリアル・インターネット

 「機器同士をつなぐことで得られる膨大なデータを知見に変え、さらにその知見から成果を生み出していく」というのが、インダストリアル・インターネットの基本的なコンセプトである。

 この事業戦略を推進するためGEは2011年11月、約10億ドルという巨額を投資し、米国カリフォルニア州サフラモン(シリコンバレー)に「これまでのGEではありえなかったタイプのR&D拠点」(熊谷氏)として、「GEグローバル・ソフトウェアセンター」を開設。約1,200名のソフトウェア技術者をこの新拠点に集めた。

 この取り組みの中から生み出されたのが、「Predix」と呼ばれる産業用ソフトウェア・プラットフォームだ。「登録すればだれでも活用できる形でこの環境を広く公開し、エコシステムを築いていく」と熊谷氏は語る。

 施策の一環として「Predix.io」という開発者向けのポータルサイトを開設し、GEデジタル・アライアンス・プログラムを通じたパートナー企業の募集も開始した。

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Predix.ioのサイト
(出典:GE講演資料)


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 すでにアクセンチュアやAT&T、シスコ、インテル、日本からもソフトバンクといった有力企業がグローバルパートナーに名を連ねており、「2016年末までにPredixの利用者は2万人に増えると推定している」と、熊谷氏は見通しを示す。

 そして、インダストリアル・インターネットの展開事例として示すのが、マレーシアの航空会社エアアジアにおける「FES(Flight Efficiency Services)」の活用だ。

 FESとはPredix上に開発された航空業界向けのアナリティクスシステムで、航空機の機体や運航、気候、整備などに関する膨大なデータを、GEが長年蓄積してきたアルゴリズムに基づいてタイムリーに分析する。「そこから得られた知見に基づいて、航空機の運航調整や飛行計画を最適化できる」(熊谷氏)。この分析をもとにGEが提案した航路に変更した結果、エアアジアは2014年に約10億円のコスト削減を実現した。

 また、米国のノーフォーク・サザン鉄道は、GEの鉄道会社向け運行管理システムを活用することで、燃料使用量を6.3%削減するとともに速度を10%以上向上し、列車の運行効率を大幅に改善。ドイツのエネルギー大手エーオンも、「パワーアップ」と呼ばれるデータ分析ソリューションを289基の風力タービンに導入することで、ウインドファーム全体の発電量を最大4.1%高めるなど、インダストリアル・インターネットは世界各地で確実な成果を上げつつあるようだ。

 こうしたインダストリアル・インターネットのさらなる普及を進めるべく、GEは産業機器向けサイバーセキュリティの強化にも乗り出した。「ITセキュリティはそれなりに対策が進んだが、かたやOT(Operational Technology)セキュリティについては体制が整っておらず、深刻な危険にさらされている」と熊谷氏は現状に対する認識を示す。

 そこでGEが進めてきたのが、製油所や発電所など大型産業施設をサイバー攻撃から防護するサイバーセキュリティ会社のワールドテック社の買収だ。エンベデッド・セキュリティやフィールドセキュリティのほか、さまざまな機器のサイバーセキュリティの標準的な評価指標となっている「アキレス認証制度」、組込みシステムや産業設備向けに多重防護を提供する「オプシールド&スレッド・アップデート」など、「総合的なサイバーセキュリティ対策ソリューションを提供していく」と熊谷氏は語る。

【次ページ】3Dプリンタを積極活用したサプライチェーンの変革

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