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- 2012/09/20 掲載
野中郁次郎氏:持続可能なイノベーション企業のリーダーに求められる6つの能力
モノではなくコトを作れ!
モノではなくコトを作れ
野中氏は冒頭で、「21世紀は知識社会である」というピーター・ドラッカーの提言を紹介した。ドラッカーは「ポスト資本主義社会」の中で、知識は有用な経済資源であり、知識を富の創造過程の中心に据えた経済理論のみがイノベーションや経済成長を説明すると定義した。
知識は、人によって作り出される。市場はこうした知識の集合体だ。経済学者マイケル・ポーターは、企業や消費者は誰もが「完全情報」を持っていて、自己利益を追求するために合理的な行動をとれば、市場の需要と供給の均衡は保たれるとした。これに対して、フリードリヒ・ハイエクはむしろ市場には多くの「暗黙知」が埋め込まれており、完全情報だけで均衡は保たれないとした。
暗黙知とは、個人が経験を通じて芽生える、言葉にならない知識のことだ。企業はこの暗黙知をいかに言語化、理論化して実現するか、その理論を戦略の基本に据え、イノベーションを創造しなければならない。
ここで野中氏はiPodを例に挙げた。「iPodは、それ自体が優れているのではない。自己編集できる感動経験を、モノを媒体に作りだし、顧客との絶えざる相互作用を起こすApple Storeという仕組みで大きな利益へ昇華させた」。つまり、モノありきではなく、コト(プロセス)ありきの発想が成功につながったということだ。「モノの機能的価値は定量化できるので、ついそちらにばかり目がいってしまうが、実際はコトの方が重要だ」(野中氏)。
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