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  • 2015/01/29 掲載

ベンチャー起業家はNo.1になるために「ONE PIECE的ムード」を作る(後編)

連載:名著×少年漫画から学ぶ組織論(23)

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ONE PIECEという漫画は、成功するために唯一にして最大に大切なものは「意思」である、という価値観に貫かれている。しかし、現実社会において「ONE PIECE的ムード」だけでNo.1になる企業は存在しない。マイクロソフトやアップルといったNo.1を勝ち取ってきた企業のように、ビル・ゲイツ氏やスティーブ・ジョブズ氏といった偉人が必要なのだ。今回は、量子力学や相対性理論、進化論など、物理学や生物学の分野で起こったパラダイムシフトを受けて生まれた名著「歴史とは何か」から、偉人の条件を紐解いてみたい。

プロジェクト進行支援家 後藤洋平

プロジェクト進行支援家 後藤洋平

予定通りに進まないプロジェクトを“前に”進めるための理論「プロジェクト工学」提唱者。HRビジネス向けSaaSのカスタマーサクセスに取り組むかたわら、オピニオン発信、ワークショップ、セミナー等の活動を精力的に行っている。大小あわせて100を超えるプロジェクトの経験を踏まえつつ、設計学、軍事学、認知科学、マネジメント理論などさまざまな学問領域を参照し、研鑽を積んでいる。自らに課しているミッションは「世界で一番わかりやすくて、実際に使えるプロジェクト推進フレームワーク」を構築すること。 1982年大阪府生まれ。2006年東京大学工学部システム創成学科卒。最新著書「予定通り進まないプロジェクトの進め方(宣伝会議)」が好評発売中。 プロフィール:https://peraichi.com/landing_pages/view/yoheigoto

前編はこちら。
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成功とは強靭なる意思の賜物か、それとも?

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「ONE PIECE的ムード」だけでは、ベンチャー企業はNo.1になれない。
名著「歴史とは何か」で示されている偉人の条件とは?
 世に偉人と称される歴史上の人物といえば、近代以前の主役は軍人や政治家が第一で、次に学者や芸術家がその中心的な位置を占めていた。一方で、トーマス・エジソン以降、現代社会における偉人といえば、ビル・ゲイツ氏やスティーブ・ジョブズ氏をはじめとする、起業家と呼ばれる人々がまず思い当たる。

 現代日本の起業家としての偉人といえば、リクルートの創業者 江副 浩正氏がその一人であるということに異論を唱える人は少ないだろう。リクルートがどうしてこのような異例の成長を遂げたのか、多くの人によって研究され、語り継がれてきた。

 例えば今現在の40~50代ぐらいのリクルートOBやOGに「リクルートが異様なまでのスピードと規模での成長を為し得たのは一体なぜだったのか」という論点で話を聞くと、「目標設定と振り返りのミーティングには、とことん時間をかけて納得感を追求する」「マネージャーがメンバーを評価するだけでなく、メンバーもマネージャーを評価する」「新卒採用では、『自分より優秀な人間』を獲得する」といった話が飛び出す。

 しかし「でもやっぱり、時代の後押しがあったのは間違いないんだよね・・・」と、少し遠い目をする。

 確かにリクルートが成功させてきた数々のビジネスは、社会の都市化や情報化を象徴しており、同時に、戦後の高度成長期ともダブって見える。OB達にとっても、リクルートの成長は時代の後押しがあっての成功であって、同じ経営手法を今の時代に繰り返したとしても、また同様の結果が得られるかどうかはわからない、という感覚がある。

 その一方で、エジソンに特許を争った無数のライバルがいたように、リクルートと同じビジョンを得ながらもその地位を得なかった企業もあったはずである。ここから導かれるのは、「成功は環境によるものなのか、意思によるものなのか?」という疑問である。

「ONE PIECE的ムード」だけでNo.1になる企業は存在しない

 ONE PIECEという漫画は、成功するために唯一にして最大に大切なものは「意思」である、という価値観に貫かれている。大雑把に言ってしまうと、ONE PIECEという作品の発するメッセージは、「目標の達成のためには意思のみが重要である=偉人の条件とは、『意思の強さ』である」ということになっている。

 では、その中で、唯一の勝者だけが勝ち残り、その他大勢が無名の海に沈んでいくのは、どのような理屈によるのだろうか?

 リクルートやグーグルと同じビジョンを持ちながらもその地位を得なかった企業もあった、という歴史的事実を考えてみても、ONE PIECEという作品は、これに応えるためには、物語の構造として、いささか単純過ぎるようである。

 実際、前編で紹介したサー・クロコダイルの「負け惜しみ」のセリフは「ナンバーワンに勝てなかったから銀メダルに終わった」というような論理的に座りの悪い、同義反復的なものだった。

 そこで紹介したいのが、前編冒頭の引用から、2巻ほど遡った、少し前のとあるシーンである。

 ここでは、主人公たちと負けないくらいに強い意志と実力を持ったライバル達が、いよいよ「ワンピース」を巡ってレースを繰り広げていく。そのなかで、「成功のために必要な、意思以外のもの」が今後描かれていくことが暗示されているような会話である。この作品が成功のための「意思」以外の要素をどのように描くのか、これは非常に興味深いところである。

(ユースタス“キャプテン”キッド)
それじゃあな麦わら・・・!!
お前に一目会えてよかった・・

次に出食わした時は
容赦しねェ・・・・・!!

(麦わらのルフィ)
・・・・ふーん
でも「ひとつなぎの大秘宝」は
おれが見つけるぞ!!!

(ユースタス“キャプテン”キッド)
おれ達の通って来た航路じゃあ
・・・そんな事口にすると大口開けて
笑われたモンだ

―――だがこの先は・・・
それを口にする度胸のねェ奴が死ぬ海だ・・・!!

“新世界”で会おうぜ

(『ONE PIECE』 52巻 第505話 “クマ”より)

 さてここでようやく、E.H.カー「歴史とは何か」の登場である。偉大なる歴史学者は、一体この「偉人の条件」をどのように考えているのだろうか?実は、その著書のなかで、カーは明確な考えを述べている。

【次ページ】偉大なる歴史学者は「偉人の条件」をどのように考えたのか

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