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  • 2014/11/18 掲載

「働きマン」の休載は、女性の活躍が簡単ではないということを示唆している(後編)

連載:名著×少年漫画から学ぶ組織論(19)

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漫画「働きマン」で問題提起されているのは、女性と社会進出でも男性社会との闘争でもなく、「働くとは一体なんなのか」という、男も女も関係ない当たり前の問いである。物語のなかばで「働きマン」が中途半端な形で休載を迎えたという事実は、現代社会で起こっている混乱の複雑さを物語っており、第2次安倍改造内閣発足時に安倍 晋三首相自身が言い放った「女子力開花内閣」という言葉の響きは、なんとも虚しく、現実味がないものに感じられる。

プロジェクト進行支援家 後藤洋平

プロジェクト進行支援家 後藤洋平

予定通りに進まないプロジェクトを“前に”進めるための理論「プロジェクト工学」提唱者。HRビジネス向けSaaSのカスタマーサクセスに取り組むかたわら、オピニオン発信、ワークショップ、セミナー等の活動を精力的に行っている。大小あわせて100を超えるプロジェクトの経験を踏まえつつ、設計学、軍事学、認知科学、マネジメント理論などさまざまな学問領域を参照し、研鑽を積んでいる。自らに課しているミッションは「世界で一番わかりやすくて、実際に使えるプロジェクト推進フレームワーク」を構築すること。 1982年大阪府生まれ。2006年東京大学工学部システム創成学科卒。最新著書「予定通り進まないプロジェクトの進め方(宣伝会議)」が好評発売中。 プロフィール:https://peraichi.com/landing_pages/view/yoheigoto

前編はこちら。
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「働きマン」の華々しさと裏腹に語られていく「鬱展開」

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漫画「働きマン」が示すのは「女性の社会進出」という課題を超越した
本質的な社会問題だった!?

 「働きマン」は、経済的にはネットバブルで好景気に湧くなかの作品でもあり、若い女性の威勢の良さ、きっぷの良さのイメージが強い。しかし、当時大きな話題を呼び一世風靡したこの作品を改めて読み返すと、意外なほどに暗い印象を受ける。

 第2巻以降、徐々に姿をあらわすのがいわゆる「鬱展開」的なエピソードだ。

 たとえば、作中に登場する雑誌「週刊JIDAI」の契約記者である野島 貴史(28)がその一番バッターだ。彼は、第二巻の影の主人公とも言える。

 第11話「一人前の働きマン」で、主人公の松方は、編集者として初めて、増刊号の編集長を任されることになる。自ら発案した企画がヒットし、その拡大版を出すという、願ってもない仕事。体調を崩しながらも必死になってまとめ上げる大活躍が描かれる。

 野島は契約社員として彼女を手伝う、そのプロジェクトの「いち兵隊」であったのだが、松方の投げかけた言葉を気に病んで仕事を放棄し、失踪してしまう。その失踪の顛末が描かれるのが第12話「逃げマン」である。

野島のこの独白に宿るリアリティこそ、本作品の眼目である。

野島 編集部に入って2年 はじめの半年は必死だった
   署名で記事を書けるまでは遠い道のりだ
   それまでは編集者が立てた企画のために
   下調べしたりデータとったり 取材行ったり記事書いたり

   一所懸命やってれば きっと いつか自分の企画の記事書けて
   次につながると信じていた
   やったらやった分ちゃんと報われるなんてのは
   理想であって 現実はそうじゃない

   サッカーの記事を書く記者になりたかった
   でも 日々の仕事に追われるうちに
   目標は「署名記事」に変わり
   「今週の仕事をこなす」に変わった

(回想)

松方 野島くん 例の「50人」なんだけど 記事はやらなくていいです
   取材とテープ起こしだけやってください

(『働きマン』 第12話 逃げマンより)

 野島は、不器用かもしれないが夢も目標もあり、真面目で一途な青年である。マネージャーである松方の一言が彼の気持ちを切れさせ、それが失踪に繋がった。第11話で描かれた華々しいお話の裏側が描かれている。

 このようなエピソードに一回を割いているということは、普通に考えると、作者である安野モヨコ氏の問題意識のあらわれである。だが、マネージャーである松方がそれに対する反省をするような描写はなされない。この一件で深く反省して、彼女のリーダーシップが改善されたとか、編集部の組織的な課題が浮き彫りになったとか、そういった話にはならない。

 この文脈はぷつんと切断され、それから先では何事もなかったかのように、全く違う話が語られていくのだ。

【次ページ】主人公が倒れる寸前まで、物語はつづく

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