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  • 2015/01/30 掲載

大阪市が生活保護費支給にVisaプリペイド活用、自治体の電子決済採用のメリットと課題

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大阪市は4月から、国内で初めて公的給付に「Visaプリペイドカード」を活用するモデル事業をスタートする。公的給付にプリペイドカードを活用することで、どのようなメリットがあるのだろうか? さまざまな理由から注目を集める本取り組みだが、本稿では自治体の電子決済活用という視点から見てみたい。

TIプランニング代表取締役 池谷 貴

TIプランニング代表取締役 池谷 貴

編集などの仕事を経て、カード業界誌の版元において、雑誌編集、プランニング、セミナー、展示会などの運営に携わる。電子決済、PCI DSS/カードセキュリティ、ICカード、ICタグなどのガイドブック制作を統括。2009年11月にマーケティング、カード・電子決済、IT・通信サービスなどのコンサルティング、調査レポート・書籍の発行、セミナー運営、ポータルサイト「payment navi(ペイメントナビ)」「PAYMENT WORLD(ペイメントワールド)」などのサービスを手掛けるTIプランニングを設立した。

生活保護費の一部をチャージして提供、データ活用も

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 2015年4月から大阪市役所が開始するモデル事業では、大阪市がプリペイドカードでの支給を希望する生活保護受給者2000人に対してVisaプリペイドカードを配付し、生活保護費の一部(3万円)をチャージして提供する。

 Visaプリペイドカードを受け取った受給者は、Visaブランドが利用できる店舗およびインターネットサイトで、日常生活に必要な物品などの購入をVisaプリペイドカードで支払える。また、カード決済された利用状況やチャージ残高を電子メールやインターネットで確認することが可能だ。

 大阪市では、受給者に対して家計支援を実施する際に、必要に応じて利用状況を照会し、そのデータを活用するという。

 今回のモデル事業では、富士通総研、三井住友カード、Visaが協力。また、NTTデータの「国際ブランド付帯プリペイドカード」の発行やカード残高管理、会員管理、利用加盟店制御に必要となる各種機能をワンストップに提供するクラウドサービス「PaySpreme」を活用するという。

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大阪市のモデル事業におけるそれぞれの役割

 大阪市では、半年~1年程度のモデル事業を実施。その後、効果検証が行われ、本格導入を含めた生活保護施策への活用について検討が行われるそうだ。大阪市長の橋下徹氏は、モデル事業がうまくいった後は「他の事業者からの申し出があった場合には、事業主体についてはいろいろな企業に入ってもらえるような制度設計にしたい」と語っている。

 国際ブランドのプリペイドカードは、KDDIの「au WALLET」やココカラファインの「ココカラクラブカード」を思い浮かべていただけば分かりやすいかもしれない。VisaやMasterCardといったクレジットカード同様のインフラを活用でき、国内450万店の加盟店で支払いが可能だ。

 国内の非接触電子マネーで最も加盟店が多いと言われる「Suica」や「PASMO」、「ICOCA」といった交通系電子マネーが60万店強、「楽天Edy」が35万店強だから、それ以上に利用範囲は広いと言える。

 それでは、都道府県・窓口での住民に対しての自治体からの給付におけるプリペイドカード活用について、まずはどのようなメリットがあるのかを見ていこう。

プリペイド活用のメリット、見守りや家計管理、事務負担軽減も

連載一覧
(1)事務負担の軽減

 国内では社会保護費の支払いは、窓口での現金給付、もしくは銀行振り込みで行われるケースが多い。たとえば、口座振替の場合は、初期登録や銀行口座の変更処理を行う必要がある。

 また、現金による給付の場合、金銭を扱う必要が出てくる。実際、自治体では銀行口座による受給がほとんどと思いきや、現金による受給者も未だに多く、毎月の業務がオペレーションの負担になっているという声もある。特に給付初日は窓口に受給者が殺到するそうだ。

 プリペイドカードであれば、本人手続き後は毎月チャージできるため、事務負担の軽減になる期待もある。また、場合によっては民間にアウトソースすることで、特定業務に特化した運用が実現する。

(2)誰でも持つことができる

 与信審査上、クレジットカードの場合は、持つことができない人もいるが、プリペイドカードであれば、18歳未満であっても高齢者であっても誰でも持つことができる。たとえば、高齢者であれば、インターネット決済でお米や水を購入し、宅配サービスを利用したり、一定期間利用がない場合に注意を払うといった見守り支援にも役立てることが可能だ。

(3)受給者自身の家計管理の把握

 2014年7月に改正された生活保護法では、自立支援の後押しや不正受給対策の強化が狙いとなっている。改正保護法では、生計の状況を適切に把握することが受給者の責務として位置づけられたが、プリペイドカードを活用することで、利用を可視化する狙いがある。また、特定業種の加盟店での利用をストップすることもできるため、過度なギャンブルなどの利用を防止する狙いもある。

【次ページ】海外では災害支援や育児支援での活用事例も

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