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- 2014/02/20 掲載
アマゾンのジェフ・ベゾスが、小売のコストコから「厚かましく盗んだもの」
1937年宮城県生まれ。トヨタ自動車工業に入社後、生産、原価、購買、業務の各部門で、大野耐一氏のもと「トヨタ生産方式」の実践、改善、普及に努める。その後、農業機械メーカーや住宅メーカー、建設会社、電機関連などでもトヨタ式の導入と実践にあたった。91年韓国大字自動車特別顧問。92年カルマン株式会社設立。現在同社社長。中国西安交通大学客員教授。
著書に『「トヨタ流」自分を伸ばす仕事術』『トヨタ流「改善力」の鍛え方』(以上、成美文庫)、『なぜトヨタは人を育てるのがうまいのか』 『トヨタの上司は現場で何を伝えているのか』『トヨタの社員は机で仕事をしない』『なぜトヨタは逆風を乗り越えられるのか』(以上、PHP新書)、『トヨタ式「改善」の進め方』『トヨタ式「スピード問題解決」』 『「価格半減」のモノづくり術』(以上、PHPビジネス新書)、『トヨタ流最強社員の仕事術』(PHP文庫)、『先進企業の「原価力」』(PHPエディターズ・グループ)、『トヨタ式ならこう解決する!』(東洋経済新報社)、『トヨタ流「視える化」成功ノート』(大和出版)、『トヨタ式改善力』(ダイヤモンド社)などがある。
いいアイデアがあれば厚かましく盗むもの
しかし、この言葉には異論を唱えたくなる人も少なくないはずだ。たとえば出版社や書店などから見れば、アマゾンは自分たちがこれまで営々と築き上げてきた事業から顧客と利益を根こそぎ奪っていく征服者以外の何物でもない。「アマゾンされる」(To be Amazoned)という言葉があるくらいだから、アマゾンが自らを「征服者ではなく探検者」と呼ぶのには抵抗を感じるのも無理からぬことだ。
もっとも、ここで言う「探検者」は他社の成功したアイデアに目をこらし、貪欲に取り入れていくという意味でベゾスは使っている。2001年、ベゾスはアマゾンがITバブルの崩壊による株価の低迷に苦しむ中、1人の人物に会っている。コストコの創業者ジム・シネガルだ。
シアトルのスターバックスで二人は会い、シネガルはベゾスにコストコが年会費を支払ってくれる忠誠心あふれる顧客を軸に運営されていること、安い値付けで大量に売りさばくことでサプライヤーから有利な条件を引き出していること、長期的な視点で会社を育てていることなどを説明した。
この会合の翌々日、ベゾスはアマゾンもコストコやウォルマートのような「エブリデーロープライス」にすべきだとして、書籍やCD、DVDの価格を20%から30%下げている。年会費を払えば、送料や出荷で優遇される「アマゾンプライム」も、その後に実現している。
シネガルにとっては、のちのライバルに知恵を授けてしまったことになるが、シネガルはこう話しているという。
「いいアイデアがあれば厚かましく盗むものだと思ってきましたからね」
後年、シネガルがキンドルを購入したところ不良品だったためアマゾンに連絡したところ、ベゾスから「今後はあなた専用のカスタマーサービスとして私が処理します」というメールが届いたという。ベゾスの優れたアイデアを貰ったことへの感謝の印だったのではと、このエピソードを紹介した記者のブラッド・ストーンは『ジェフ・ベゾス果てなき野望』で書いている。
ベゾスはアマゾンのアイデアのすべてをゼロから構築したわけではない。他社の成功したアイデアを貪欲に探し、評価し、そして自分たち独自のひねりを加えることでより良いアイデアに昇華させている。
【次ページ】トヨタの「創意くふう運動」は何が違ったか
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