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  • 2013/12/04

トヨタのラインは「止まる」のではなく「止める」、問題発生を改善のチャンスに変える

連載:トヨタに学ぶビジネス「改善」の極意

「問題」というのは厄介なものだ。至るところに発生する可能性があり、どんなものになるのかもわからない。「何か問題はありませんか?」と聞かれて、「ありません」と答える人をよく見かけるが、本当だろうか?仕事をしていれば問題が起きるのは当たり前だし、時には失敗だってつきものだ。問題を避けて通るか、それとも問題を迎え撃つか。問題を隠すのではなく、問題をあえてみんなに「見える」ようにして、改善のチャンスと捉えるのがトヨタ式のやり方だ。

カルマン 代表取締役社長 若松 義人

カルマン 代表取締役社長 若松 義人

1937年宮城県生まれ。トヨタ自動車工業に入社後、生産、原価、購買、業務の各部門で、大野耐一氏のもと「トヨタ生産方式」の実践、改善、普及に努める。その後、農業機械メーカーや住宅メーカー、建設会社、電機関連などでもトヨタ式の導入と実践にあたった。91年韓国大字自動車特別顧問。92年カルマン株式会社設立。現在同社社長。中国西安交通大学客員教授。
著書に『「トヨタ流」自分を伸ばす仕事術』『トヨタ流「改善力」の鍛え方』(以上、成美文庫)、『なぜトヨタは人を育てるのがうまいのか』 『トヨタの上司は現場で何を伝えているのか』『トヨタの社員は机で仕事をしない』『なぜトヨタは逆風を乗り越えられるのか』(以上、PHP新書)、『トヨタ式「改善」の進め方』『トヨタ式「スピード問題解決」』 『「価格半減」のモノづくり術』(以上、PHPビジネス新書)、『トヨタ流最強社員の仕事術』(PHP文庫)、『先進企業の「原価力」』(PHPエディターズ・グループ)、『トヨタ式ならこう解決する!』(東洋経済新報社)、『トヨタ流「視える化」成功ノート』(大和出版)、『トヨタ式改善力』(ダイヤモンド社)などがある。

なぜ一見非効率にも見える「止める」を重視するのか

「みんなは着地を止めにいって止めているのだと思うのですが、僕は止まるところで技を終わらせていれば勝手に止まるという印象なんです」

 ロンドンオリンピックの男子体操個人総合の金メダリストにして、世界選手権個人総合でも四連覇と無敵を誇る内村航平選手の言葉である。内村選手の強さは技の難易度や完成度の高さももちろんのこと、ほとんど乱れることのない着地の見事さにある。なぜそれほどに見事な着地ができるのかと聞かれて答えたのがこの言葉だ。

 大切なのは着地の前の動作であり、それさえちゃんとしていれば、無理に止めようと意識しなくとも、自然と止まる。そこに内村選手の技の極意があるようだ。

 内村選手が「止める」ではなく「止まる」を大切にしているように、トヨタ式は「止まる」ではなく「止める」を何よりも大切にしている。

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 阪神淡路大震災の時、トヨタ関連会社も深刻な被害を受け、トヨタも2日間、生産ラインを停止している。その際、一部のマスコミが在庫をほとんど持たないジャスト・イン・タイムは考え直さなければいけないと指摘した際、9月17日にお亡くなりになった元会長の豊田英二氏はインタビューに答えて「止まったんではなく、止めたんだ。ここが肝心なんです」というコメントを口にしている。

「部品が来なくなるとか、人が集まらないとか、地震が起きたためにラインが止まるのはただの行き当たりばったりでしょう。そういうことではなく、『これはラインを止めるべきだ』と判断して、積極的に止めるのがトヨタの生産方式」(故豊田英二氏)

 トヨタの工場やトヨタ式を導入している企業の工場には、たいていラインのそばに紐のようなものがぶら下がっている。不良品が流れてくるといった異常があれば、気づいた人がその紐を引っ張ってすぐにラインを止めるというのがトヨタ式のやり方だ。

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 ほとんどの企業の場合、生産現場で働いている人に「止める」権限は与えられていないが、トヨタ式の場合はたとえ小さな異常でも、問題があれば気づいた人が自分の判断ですぐに「止める」ところに大きな特徴がある。

 なぜ一見非効率にも見える「止める」を重視するのか。それはトヨタ式が問題が起きるのは当たり前ということを前提に、問題を「改善のチャンス」と捉えているからだ。生産現場に限らず、企業の現場では何が起こるか分からない。

 筆者はこれまで何百という現場を見てきたが、何も起こらない現場は一つとしてない。人間がやる以上、体調が悪ければ思うように作業はできないし、ついうっかりというミスだってある。機械でも手入れが悪ければ問題が起きるし、材料の間違いや部品の間違いもある。もし何の問題もないという現場があるとすれば、それは隠しているか気づいていないかのどちらかだ。

【次ページ】問題を解決するために必要なことは何か

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