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- 2014/04/22 掲載
ジョブズとベゾスの成功に共通する「権力」の使い方、仕事は権限か理解・納得か
連載:トヨタに学ぶビジネス「改善」の極意
1937年宮城県生まれ。トヨタ自動車工業に入社後、生産、原価、購買、業務の各部門で、大野耐一氏のもと「トヨタ生産方式」の実践、改善、普及に努める。その後、農業機械メーカーや住宅メーカー、建設会社、電機関連などでもトヨタ式の導入と実践にあたった。91年韓国大字自動車特別顧問。92年カルマン株式会社設立。現在同社社長。中国西安交通大学客員教授。
著書に『「トヨタ流」自分を伸ばす仕事術』『トヨタ流「改善力」の鍛え方』(以上、成美文庫)、『なぜトヨタは人を育てるのがうまいのか』 『トヨタの上司は現場で何を伝えているのか』『トヨタの社員は机で仕事をしない』『なぜトヨタは逆風を乗り越えられるのか』(以上、PHP新書)、『トヨタ式「改善」の進め方』『トヨタ式「スピード問題解決」』 『「価格半減」のモノづくり術』(以上、PHPビジネス新書)、『トヨタ流最強社員の仕事術』(PHP文庫)、『先進企業の「原価力」』(PHPエディターズ・グループ)、『トヨタ式ならこう解決する!』(東洋経済新報社)、『トヨタ流「視える化」成功ノート』(大和出版)、『トヨタ式改善力』(ダイヤモンド社)などがある。
やりたいことのために圧倒的な権力を利用する

アップルが「iMac」の開発を進めていた時、デザイン部門の責任者ジョナサン・アイブがつくり上げたのは、鮮やかな色の筐体のCRTディスプレイ一体型コンピュータだった。
ところが、製造を担当するエンジニアの所に持っていくと、「これは無理だ」という38個もの反対理由が挙がってきた。
このこと自体はどこの会社でもよくあることだが、違っていたのはそこにスティーブ・ジョブズがいたことだ。ジョブズはエンジニアに「いやいや、これをつくるんだよ」と言ったが、それでもエンジニアは「なぜです?」と異を唱えようとした。ジョブズの答えは明快だった。
「CEOの私が、これは可能だと思うからさ」
iMacはよく知られているように世界的大ヒット製品となった。
こちらも世界的大ヒット製品となった「Kindle」の開発を進めていた時、PCを経由しないで本をダウンロードする方式にベゾスはこだわった。その時、こう提案したと言われる。
「空港に行くんで、途中読む本が欲しい。車の中からこの機器を使ってダウンロードしたい。こういう状況を想定しているんだ」
エンジニアが「そんなことはできませんよ」と反論すると、ベゾスはこう言い返した。
「何ができるか、決めるのは僕だ」
それでも異を唱える相手にはこんなセリフさえ口にしている。
「この問題について君の口を閉じさせるには、この会社のCEOは僕だという証明書をどっかでもらってこないといかんのか?」
ここまで言われて反論できる人間はそうはいない。
やりたいことのためには圧倒的な権力を利用する。それはたしかにビジョンを実現するための最短距離ではある。しかし、日々の仕事の現場でこれほどの権力を持つことはそうは望めない。
【次ページ】仕事は権限か、それとも理解と納得か
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