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  • 2014/01/09

アップルの歴史が物語る、「変えていいもの」と「変えてはいけないもの」

連載:トヨタに学ぶビジネス「改善」の極意

改善とは変えることである。かつてある企業の経営者は「奥さんと子ども以外はすべて取り換えろ」と猛烈な檄を飛ばして企業改革に取り組み、その後の躍進につなげることに成功したが、「変える」は「何でも変える」ではないと知ることもまた大切なことだ。トヨタ式改善に必要なのは「何を変え、何を変えないか」をしっかりと見極めたうえで、「変える」ことをためらわない文化を築き上げていくことである。

カルマン 代表取締役社長 若松 義人

カルマン 代表取締役社長 若松 義人

1937年宮城県生まれ。トヨタ自動車工業に入社後、生産、原価、購買、業務の各部門で、大野耐一氏のもと「トヨタ生産方式」の実践、改善、普及に努める。その後、農業機械メーカーや住宅メーカー、建設会社、電機関連などでもトヨタ式の導入と実践にあたった。91年韓国大字自動車特別顧問。92年カルマン株式会社設立。現在同社社長。中国西安交通大学客員教授。
著書に『「トヨタ流」自分を伸ばす仕事術』『トヨタ流「改善力」の鍛え方』(以上、成美文庫)、『なぜトヨタは人を育てるのがうまいのか』 『トヨタの上司は現場で何を伝えているのか』『トヨタの社員は机で仕事をしない』『なぜトヨタは逆風を乗り越えられるのか』(以上、PHP新書)、『トヨタ式「改善」の進め方』『トヨタ式「スピード問題解決」』 『「価格半減」のモノづくり術』(以上、PHPビジネス新書)、『トヨタ流最強社員の仕事術』(PHP文庫)、『先進企業の「原価力」』(PHPエディターズ・グループ)、『トヨタ式ならこう解決する!』(東洋経済新報社)、『トヨタ流「視える化」成功ノート』(大和出版)、『トヨタ式改善力』(ダイヤモンド社)などがある。

「変えていいもの」と「変えてはいけないもの」を見極める

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スティーブ・ジョブズ氏
 今日のように変化の激しい時代には何よりも「変える」とか「変わる」ことが重視されるが、その際、最も気をつけなければならないのは企業でも個人でも「変えていいもの」と「変えてはいけないもの」をしっかりと見極めるということだ。この見極めを誤ると、せっかくの「変える」が大切な「強み」を失う原因となってしまう。

 スティーブ・ジョブズが創業したアップルはアップルⅡ、そしてマッキントッシュによってコンピュータ業界の寵児となったものの、1985年にCEOのジョン・スカリーがジョブズをアップルから追放して以降、徐々に輝きを失ってしまった。

 やがてアップルについて囁かれる噂は「身売り」や「倒産」といったネガティブな情報ばかりになり、ジョブズが特任顧問としてアップルに復帰した1996年頃には、かつてのライバルだったデル・コンピュータのCEOマイケル・デルから「俺なら会社を畳んで株主にお金を返すね」と言われるほどの惨状だった。

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 その後、倒産寸前のアップルの暫定CEOとなったジョブズは短期間のうちにiMacやiPodといった世界的大ヒット製品をつくり上げ、アップルを復活させたばかりか、IT業界ナンバーワン企業へと押し上げることとなるが、これほどの可能性を持っていたアップルが危機に陥った理由をのちにこう話している。

「問題は、急速な成長ではなく、価値観の変化だったんだ」

 ジョブズが去った後のアップルはマッキントッシュのお陰もあり、数年は売上げ、利益とも絶好調だったが、ジョブズによると、この時期にアップルの生命線とも言える「すぐれた製品の開発」を忘れ、「多額の利益」を優先したことが間違いの原因だったという。

アップルが世界中のユーザーに愛されたのは圧倒的に優れた製品をつくったからだ。にもかかわらず、スカリーは製品づくりよりも売上げや利益を優先することでアップルの一番大切なものを失ったことが、その後の凋落につながることとなった。

イノベーションが得意なジョブズが頑なに守り続けていたもの

 「製品」か「利益」か。違いはごくわずかに思えても、どちらを優先するかで人の採用も、昇進の仕方も、そして資源の使い方も変わってくる。アップルがアップルであるためには何よりも「製品づくり」こそを第一に考えるべきで、それを忘れた企業運営をすればアップルはアップルらしさを失い、どこにでもあるパソコンメーカーになってしまう。

【次ページ】「変えていいもの」と「変えてはいけないもの」の見極め

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