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- 2014/05/08 掲載
ディズニー映画 絶好調の根底にある、「制約」がもたらす創造性
連載:トヨタに学ぶビジネス「改善」の極意
1937年宮城県生まれ。トヨタ自動車工業に入社後、生産、原価、購買、業務の各部門で、大野耐一氏のもと「トヨタ生産方式」の実践、改善、普及に努める。その後、農業機械メーカーや住宅メーカー、建設会社、電機関連などでもトヨタ式の導入と実践にあたった。91年韓国大字自動車特別顧問。92年カルマン株式会社設立。現在同社社長。中国西安交通大学客員教授。
著書に『「トヨタ流」自分を伸ばす仕事術』『トヨタ流「改善力」の鍛え方』(以上、成美文庫)、『なぜトヨタは人を育てるのがうまいのか』 『トヨタの上司は現場で何を伝えているのか』『トヨタの社員は机で仕事をしない』『なぜトヨタは逆風を乗り越えられるのか』(以上、PHP新書)、『トヨタ式「改善」の進め方』『トヨタ式「スピード問題解決」』 『「価格半減」のモノづくり術』(以上、PHPビジネス新書)、『トヨタ流最強社員の仕事術』(PHP文庫)、『先進企業の「原価力」』(PHPエディターズ・グループ)、『トヨタ式ならこう解決する!』(東洋経済新報社)、『トヨタ流「視える化」成功ノート』(大和出版)、『トヨタ式改善力』(ダイヤモンド社)などがある。
制約を与えられることによって創造性が刺激される

フロリダにあるウォルト・ディズニー・リゾート。世界でもっとも人気のあるエンターテイメントスポットになっている。
ラセターは、元々はディズニーの出身だが、若くして「君の居場所はない」として解雇されている。そんなラセターの才能に目をつけ、即座に採用したのが、のちにピクサーを故スティーブ・ジョブズとともに創業するエド・キャットマルだ。
やがて、CGの天才キャットマルと、アニメの天才ラセターはジョブズと出会い、ピクサーで世界初のフルCGアニメーションづくりを目指すこととなった。
最初の10年はひたすらジョブズの個人資産を食いつぶすばかりだったが、ディズニーと提携することで『トイ・ストーリー』を大ヒットさせ、さらに株式上場も果たすことで一躍ハリウッドの注目企業へと成長している。
トイ・ストーリー以来、14本の映画を公開し、いずれも商業的に大成功をおさめたピクサーだが、そのすべてが順調だったわけではない。
その一例が、ビデオ用作品として制作していた『トイ・ストーリー2』をディズニーの要求で、急遽劇場公開用につくり変えることになった時だ。
劇場公開となると素材の追加も必要になるが、与えられた時間はわずか9カ月しかなかった。しかもその時期は『バグズ・ライフ』の製作も進めており、人も不足していた。
時間不足を心配したラセターやキャットマルが、ジョブズに公開日の延期を申し入れたが、返ってきた答えはこうだった。
「自分のキャリアを振り返ると、こうした状況、最善とは言えない状況でやった仕事に、一番誇りを感じるんだ」
結果、難局を乗り切った『トイ・ストーリー2』は『トイ・ストーリー』の興行成績を塗り替えるほどの成功を収めることとなった。以来、ピクサーではこんなセリフが口にされるようになった。
「優れた芸術家は、制約を与えられることによって、創造性が刺激されることを理解している」
【次ページ】ジョブズ「研究開発費の多い少ないなど、イノベーションとは関係ない」
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