トライポッドワークス社はどんな会社なのか?
トライポッドワークスの創業は2005年11月。宮城県仙台市に本社を構え、現在では社員数28名、2014年5月決算では売上金額が初めて10億円を突破した。売り上げ構成はセキュリティ関連商品が全体の80%を占め、研究開発事業が約10%、その他が約10%だ。東京に営業拠点、北海道には研究開発拠点を置く。
ちなみに同社代表の佐々木賢一氏は創業前には、日本総研、日本オラクルと、純日本企業とグローバル企業というまったく性格の異なる企業戦士として奮闘してきた背景を持っている。
同社の主力ビジネスは中小企業のネットワークにおけるセキュリティシステム、ハードウェアとソフトウェアを組み込んだアプライアンス製品として提供する事業だ。ハードウェアもソフトウェアも競合製品は多いが、中小企業とアプライアンス、そして訪問販売、そしてリース販売、つまり中小企業にはお馴染のコピー機の販売と似たビジネスを主軸としている。
同社の立ち上げに際して、企業向けオンラインストレージ製品「GIGAPOD」を投入する際に重視したのは、「早く出す」ことだったという。セキュリティの対策はスピードが命。だから、今も「早く出す」ことにはこだわっている。
またセキュリティ製品は、米国、ロシア、イスラエル、韓国のベンダーの実績が高いということが分かっていた。中でも韓国のプロダクトはユニークなものが多い反面、日本市場においてはシェアがなかなか確保できていないという点に着眼して、韓国の技術を日本国内でも認められるように、品質面を補い、不足分をアドオンし、さらにはサポート体制も構築することで事業化。これが同社におけるセキュリティ事業の始まりである。さらには、中小企業にも導入しやすいように、アプライアンス製品に仕立てることで市場を確保した。
韓国の製品は、品質は問題ないが、実際のところは日本国内のニーズとは若干のギャップがあった。これは、韓国の技術が追いつかないのではなく、日本と韓国の文化の違いであると判断している。つまり日本では、製品化された時点で100%のものを求められる。一方、韓国では使いながら進化させて最終的に100%に持っていく考えである。ゴールは一緒であるが、その過程が違う。このギャップを埋め、日本と韓国の共同開発製品であれば日本市場でも売れる。価格も安くできることで、日本国内でもシェア確保が可能であると考えた。
セキュリティ事業以外でも着目しているのが農業、医療などの事業だ。現在同社では大手メーカーやキャリアなどとの共同開発を通じて研究開発を行っている。
また、創業期には、国の競争的資金(注1)を積極的に活用しながら成長を遂げてきた。仙台という限定されたエリアであることがさまざまな制度情報の入手やキーマンとの人脈形成をしやすくし、佐々木氏のかつてのビジネスキャリアと相まって、同社の強みを生かせる分野となった。この点は後で詳しく言及するが、仙台を拠点にした理由のひとつでもある。
注1 競争的資金
研究課題などを(自組織内に限らず)広い範囲から募集して、応募してきた研究課題を評価づけし、それによって採用する研究(と採用しない研究)を分ける、という手順を経て、結果として採用された研究を行う研究者などに配分する(される)研究資金のこと
(出典:Wikipedia)
創業当初、競争的資金を活用した技術開発は、資金繰り面、ノウハウの蓄積において大きなプラスであり、同社を成長させる要因のひとつであったことは間違いない。
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