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- 2012/08/10 掲載
大分の自治体クラウド「豊の国IaaS」の取り組みは地方経済の活性化につながるか
中堅・中小企業市場の解体新書
大分の自治体クラウド「豊の国IaaS」とは何か?
現在、全国の自治体数は市町村の合併により減少し、各自治体同士は合併により、それぞれ有していた業務を統合する必要に迫られている。なおかつITシステムに関わる費用の削減要求もあり、低いコストでの構築そして運用を余儀なくされている。この動きに呼応するように注目されているのが「自治体クラウド」だ。いわゆる自治体の業務システムをオンプレミス(社内サーバ)からクラウドサービスへ移行する動きが活発になってきている。
一方で、自治体クラウドにはいくつかの問題点がある。
まず、自治体ごとに類似システム(似ているが同じではない)が構築され、存在してしまっていることだ。クラウドで運用する際には標準化というステップが必須なために、この状態をクリアしなくてはならない。またクラウドサービスを利用する場合でも、サービスベンダーごとに独自の仕様となってしまい、契約ベンダーにロックインされる懸念があった。
ただ、この点については、IT技術の進歩は激しく、ネットワークの高速化や低価格化が進み、サーバ仮想化など技術の進化や堅牢なデータセンターの登場などが、クラウド利用へ進むための大きな追い風となった。
次に、クラウドを利用することで本当に安くなるのか、その効果や結果が見えないことも問題点として指摘される。たとえばデータセンターを利用するための経費やネットワーク経費、そして共同化する自治体数の違いがコストにどう反映されるのか、といった詳細なコストを積み上げた場合に、現状のシステム経費とどの程度コストが低減されるかが明確ではない。
また、クラウドにシフトする場合には、組織全体を通じた業務・システムの最適化を図ることが求められる。マクロな視点でいえば、縦割り組織の排除で、業務・政策、システムを総合的に見直すことが必要となる。言わば、自治体組織におけるBPR(ビジネスプロセスリエンジニアリング)を行う必要が出てくる。業務プロセスやデータ体系などの徹底的な「見える化」を行い、自治体間の連携による更なる最適化を図るといった作業を事前に行う必要がある。
つまり、自治体クラウドを実践する前に、単なる共同利用ではなく、業務を標準システムに合わせることが求められる。標準システムをどう定義するか、それに合わせて自治体側が変化できるかがポイントになる。
もちろん自治体にとって、コスト削減は大きな達成目標になっている。導入コスト、通常の運用コスト、法改正などに伴う改修費用のコスト削減など、クラウドはオンプレに比べ3割のコスト削減は見込んでいるため、期待は大きい。
一方で、住民サービスへの展開という面では、自治体間連携の強化は、行政エリア視点での連携ではなく、住民の生活視点でのサービス提供が欠かせないという問題もある。
本サービスは、大分県情報ハイウェイである豊の国ハイパーネットワーク(注1)を利用したもので、地元のSI企業であるOECが管理運営するデータセンターから、大分県内の自治体や企業向けに行政業務システムなどの基盤を提供している。
IaaS上に展開したサービスは、OECの関連会社である大分県自治体共同アウトソーシングセンター(OLGO=通称オルゴOita Local-Government cooperative Outsourcing Center)が提供している。
ITコストの低減を図りながら、自治体本来の役割を達成するためのクラウドサービスを実現するために、OECは2009年から実証事業を繰り返してきていた。
【次ページ】なぜOECは自治体クラウドを手がけるのか
注1 豊の国ハイパーネットワーク
豊の国ハイパーネットワークは県が管理しており、負担金は各自治体が支払っている。つまり使わなくても一定の費用を負担していることなるので、利用しない手はないということになる。逆にこのインフラが整っていることで、他の県と比較してもクラウドが伸びる下地は充分にあることが分かる。
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