- 会員限定
- 2017/06/19 掲載
「世界一の空港」が日本のロボットベンチャー Doogを採用したワケ
スマート国家を目指すシンガポール
そして日本同様、高学歴化と少子高齢化が進んだシンガポールは「スマート国家」を目指すことを政府の方針としており、ロボットにも力を入れている。多民族国家ではあるが外国人労働者の受け入れを抑制したため、人手不足になり、ロボット導入が必要になっているのだそうだ。どこの国も事情は同じである。
建国50周年を迎えた2015年には「National Robotics Programme」を発表。2016年からの3年間で4億5000万シンガポールドル(およそ360億円)をロボット開発や社会実装に投じて支援している。
日本との関係も密接で、1000床を超える大規模公立病院であるチャンギ総合病院では、新棟の拡張に合わせて、2015年からパナソニックの自律搬送ロボット「Hospi(ホスピー)」が使われている。カルテ、医薬品や検体などを運搬するロボットだ。また離床アシストベッド「リショーネ」の実証実験も行っていた。
ニトリグループの物流会社であるホームロジスティクスは物流倉庫ロボット「BUTLER」を導入している。「BUTLER」は、2011年に設立され、シンガポールに本社を置くGreyOrange社によるロボットで、それを日本国内ではGROUNDが販売・インテグレーションしている。
ロボットが使われるチャンギ空港
シンガポールのチャンギ国際空港は「世界の空港ランキング」で5年連続で世界最高に選ばれた空港である。利用者数は年間5000万人になるという。村田機械はロボット床面洗浄機「Buddy(バディ)」を2016年4月にチャンギ空港に納入した。国内ではアマノから販売されているロボットだ。同社独自の自律移動制御システム「It’s Navi」を搭載しており、最初に人が操作して周回させるだけで環境地図を作成して、走行経路を決められる機能がある。
2017年5月24日には、空港の地上業務を運営するシンガポール空港ターミナルサービス(SATS)、経済開発庁(EDB)、シンガポール民間航空局(CAAS)の三者によって、1億1000万シンガポールドルを投じてロボットなどを活用するという発表が行われた。現地メディア「The Straitstimes」の記事の動画を見ると、空港ターミナル内のプレミアムラウンジで提供される麺類(ラクサ)を茹でるロボットアームなども紹介されたようだ。
このなかの一つ、プレミアムラウンジにケータリング用の食品・水を運ぶロボットは「Dolly(ドリー)」と呼ばれている。一人の職員がトローリーを押して先導し、その後ろをロボットが自動追従していくことで、一人で三台のトローリーを運ぶことができるようになり、かつ、作業自体も楽になったという。
この「ドリー」、実は日本製のロボットである。人追従運搬ロボット「サウザー」を開発しているロボットベンチャー「Doog(ドーグ)」によるもので、SATSでは「ドリー」と呼んでいるが、中身は「サウザー」そのものだ。
同社の「サウザー」はライントレースのほか、レーザーセンサーを使うことで屋内外問わず人を追従できるAGV型の移動ロボットだ。2015年10月に発売されたあと、最近は、日本電産シンポやアルミ製機器製造販売のSUS、包装・梱包事業のタナックスなどと提携して販売するほか、共同でシステム開発を行って実地に使われている。
同社は今回の導入に合わせて5月27日付でシンガポールに子会社としてDoog International Pte. Ltd.を設立。現在、チャンギ空港では7台の「サウザー」が使われているという。どういう経緯で使われるようになったのか、Doog 代表取締役社長の大島章氏に話を伺った。
広い空港で活躍する運搬ロボット
ターミナルは広大だ。それだけではなく床面もハードフロアだけでなくカーペットを敷かれたエリアもあり、カートなどの手押し運搬は結構な重労働なだけでなく人手が必要だ。そこでSATSは人の後だけでなくカートの後を追うことができるロボットを使うことで、一人で3人分の仕事ができるようになったと見なしているという。
なお「サウザー」はSATSによる買取で、価格は一台あたりおおよそ250万円。荷物を積載する上物が大きかったため、提携しているSUS社のシンガポール支社にも協力してもらって納品したという。SATSは空港で運用する車両や機材のメンテナンスセンターを自社で持っており、今後サウザーの導入台数がさらに増えてゆけば、保守などはSATS側で行う可能性もある。
SATSは第1航空貨物ターミナルで「eコマース エアハブ」という配送拠点も運営している。そこでの活用なども想定して、今後さらに導入を進めていきたいと言っているそうだ。SATSの作成した現場ビデオはDoog社の英語版ウェブサイトで閲覧できる。
【次ページ】国を挙げてロボットを迎え入れるシンガポール
関連コンテンツ
関連コンテンツ
PR
PR
PR