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  • 2012/07/11

関西流ベタベタIT商法の挑戦88~つまようじ、手作りITで世界市場を拡大

合同会社 関西商魂 代表 中森勇人

年間40兆円に膨らむ国民の医療費だが、全体の4割強は70歳以上の高齢者が占めている。しかも、高齢化が進み健康保険の原資は切迫している。もはや四面楚歌ともいえるこの状態に待ったをかけるべく立ち上がったのが、大阪府河内長野市に本社を構える広栄社の稲葉修会長(70)だ。河内長野といえば明治時代から爪楊枝の産地として知られ、国内生産の大半を占めてきた。広栄社も大正末期からこの地で爪楊枝の生産を開始し、日本で初めて白樺による機械大量生産を始めた老舗メーカーである。はたして、爪楊枝と膨れ上がる医療費問題の解決とは一体どのような関係があるのだろうか。

中森勇人

中森勇人

合同会社 関西商魂
代表

極めれば道は開ける

 まずは爪楊枝の歴史を振り返ってみたい。爪楊枝の前身である“楊枝(ようじ)”は奈良時代に仏教とともにインドから中国、朝鮮半島を経て日本に伝わってきた。当時は歯木(しぼく)と呼ばれ、木の枝の一端を噛んで筆の毛先状にして歯を磨いていた。

 社屋に併設されたようじ資料室の室長でもある稲葉会長は「そもそも紀元前500年ごろにお釈迦様が弟子達に歯を清潔にするようにと教え伝えたものだと言われています。歯木にはタンニンやフッ素が含まれることから、今の歯磨き粉と同じ役割も果たしているのです」と爪楊枝と歯のケアに密接な関係があると話す。

 「一方、狩猟民族が多いヨーロッパでは歯間ケアのための爪楊枝は必需品で金や銀に宝石などで細工をしたものが重用され、先祖代々から引き継がれるという風習があります。また、歯茎のケアを目的とするため先端の形状を三角形にするのが主流です。これは上の二面でクリーニング、下の面で歯茎のマッサージをするという効果をもたらします。日本と同じ高齢福祉社会である北欧では“三角ようじ”が歯ブラシ売場で売られ、歯科医が使用を推奨しています」こう語る稲葉会長は“三角ようじ=歯間ようじ”の必要性を感じ、国内だけでなく欧米諸国に輸出販売をしている。

 実は広栄社は日本ではじめて歯間ブラシを薬局で販売したメーカーであり、三角ようじに関してはJ&Jなどと並ぶ世界の9大メーカーの一つとして国内外の多くの企業にOEM供給をおこなっている。

 稲葉会長は続ける「欧米のように三角ようじをケースに入れて持ち歩き、食事のたびにクリーニングと歯茎のマッサージをする。こうすれば自ずと8020運動(80歳で20本の残存歯を持つ運動)が推進され、充実した食生活と健康を手に入れることができるでしょう。将来的にはこの小さな三角形の爪楊枝が日本の医療を救うことになるかもしれません」と。

 広栄社では25年前から従来の丸い形状の爪楊枝の生産をやめ、三角ようじや歯間ブラシ、歯茎マッサージブラシやタン(舌)クリーナーの製造に切り替えた。これは稲葉会長が爪楊枝のルーツを研究し、歯と歯茎のケアとの関わりについての論文を学会で発表していることに起因する。そして稲葉会長は自動化にもこだわる。

 「当時、三角ようじを自動で作る機械は国内にはなかった。そこで自作をすることになるのですが、産学共同開発で京都の龍谷大学の先生にもお手伝いをいただいています。若い社員がCADで図面を描いて、先生に見てもらって部品を工作機械で作って組み立てて実際に製品が出てくるところまでを作るんです。今では改良を重ね日産50万本の装置に仕上がりました。しかも、1秒間に16本か17本通過する爪楊枝をパソコンのモニターに映し出し自動で全部検品します。まさに手作りITです」と語る会長。

 「15年前までは世界の約半分の爪楊枝を河内長野で作っていました。今は安い中国産に押され、地場メーカーも半減しました。でも、諦めてはあきまへん。先代が積み上げてきた歴史文化や技術に耳を傾ければ必ず行くべき道は見えてきます。商売は牛のよだれのように細くて長くて切れそうで切れない。再びここに爪楊枝の火が戻るまでとことんやり続けますわ」と稲葉会長は使命感を燃やす。




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