- 2011/05/13 掲載
関西流ベタベタIT商法の挑戦75~異業種ネットワークで名物を次々と開発
合同会社 関西商魂 代表 中森勇人
中森勇人(なかもりゆうと)
経済ジャーナリスト・作家/ 三重県知事関東地区サポーター。1964年神戸生まれ。大手金属メーカーに勤務の傍らジャーナリストとして出版執筆を行う。独立後は関西商法の研究を重ね、新聞雑誌、TVなどで独自の意見を発信する。
著書に『SEとして生き抜くワザ』(日本能率協会)、『関西商魂』(SBクリエイティブ)、『選客商売』(TWJ)、心が折れそうなビジネスマンが読む本 (ソフトバンク新書)などがある。
TKC「戦略経営者」、日刊ゲンダイ(ビジネス面)、東京スポーツ(サラリーマン特集)などレギュラー連載多数。儲かるビジネスをテーマに全国で講演活動を展開中。近著は「アイデアは∞関西商法に学ぶ商売繁盛のヒント(TKC出版)。
公式サイト http://www002.upp.so-net.ne.jp/u_nakamori/
この地で120年に渡り商いを続けている「株式会社せのや」の野杁育郎(のいりいくろう)社長(63)は「大阪らしい混沌とした町並みがミナミの売り、と周囲が言うものだからそれに甘えて何もせずにいた。これがいけません。実際、商店街はここ10年間で50%の店が廃業しています。組合員も減る一方です」と不満を漏らす。
しかし、それは大阪人、ただでは起きない。野杁社長はこのような状況は想定の範囲内だと言ってのける。
業界の垣根を越えて
せのやでは売れる大阪名物を開発するため、15年前に「ええ大人がビジネスも遊びも本気でやっている」をモットーに「なにわ名物開発研究会」を立ち上げた。メンバーは業界人だけでなく飲食や流通業、芸人、文化人、クリエーターなど様々だ。会長を務める野杁社長は「今まではメーカー主導で原価ありきの商品を店に並べていました。でも、これでは売れない。お客さんが欲しがる物を欲しがる価格帯で提供しなければダメです。例えば『たこ焼きようかん』はメーカーが安く売りたいと申し出たのを断り、パッケージデザインを工夫し、価格帯を上げたところ、大ヒット商品になりました」と研究会の成果を話す。
安ければ売れるという大阪人の常識をうち破った異業種ネットワークは野杁社長の活動範囲も広げる。自社で販売する土産物の開発だけに留まらず、「とんぼりリバークルーズ」などの観光資源の立ち上げにも関わってきた。もはや、せのやは一土産物屋の域を超え、大阪の名物工場といった様相を呈している。
大震災で見えたもの
せのやは店舗にも工夫をこらし、「いちびり庵」の看板を上げ、大衆をイメージさせる懐かしい店づくりは大阪の顔になっている。オンラインショップを始め、多いときは一日で500万円近く売り上げる店舗もあるのだという。2010年には東京お台場たこやきミュージアムにも出店し現在5店舗を展開。2000点にも及ぶ商品を並べ、オリジナルアイテムは300点を越える。野杁社長は「商売人が一番商売の事が分かっていません。だから狭い集まりの中でごちゃごちゃ言っていてもアイデアは出てきません。東日本大震災では『がんばろう日本!』をスローガンに復興を唱えています。キーワードは地方とのつながりです。せのやでも地方の名産品を手がけて日本の名物として売り出す試みをしています。売り込み歓迎なので是非、声をかけてください」と明るく話す。
2011年7月28日(ナニワの日)には研究会主催の「第14回なにわ大賞」の発表がある。この大賞はなにわの「いちびりさん」を表彰するというイベント。いちびりとはせり市を仕切る「市振り(いちぶり)」が起源でリーダーシップを取る人のことをいう。我こそはいちびりだ、という大阪らしいユニークな活動をしている個人や団体を6月10日必着で募集している。かつての町衆同士が互いにたたえ合うという主旨が受け入れられ、毎年多くのエントリーがある。地域との密接な関係と人を巻き込む「いちびり魂」が売れる名物を生み出す。
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