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- 2013/10/17 掲載
NECのビッグローブ売却報道にみる、ISP業界の再編と現代のプロバイダの役割
NEC方向転換の意味
NECは4月の段階で、エンタープライズビジネスやインフラビジネスに注力し、コンシューマビジネスを縮小していく事業戦略を発表している。2011年のPC事業分社化、2013年のスマートフォン事業の撤退を実施しており、今回のISP事業の身売りはこの事業戦略に沿ったものと言える。
ビッグローブは、前年比で減収減益傾向ではあるものの赤字企業でない。2012年3月決算での売上は868億7200万円あり、利益も7億7400万円(ともに会社四季報より)とある。今回の売却はNECの事業戦略による積極的な意図が感じられる。
ISPの役割も変わらざるを得ない
会員数で業界4位とも言われる(MM総研などより)ビッグローブの売却報道は、当然ながらISP業界全体に波紋を投げかけている。それは、モバイルネットワーク市場の拡大、スマートフォン・クラウドが与えるビジネススタイルやライフスタイルへの影響によって、ISPの市場での役割や存在意義が問われているのではないだろうか、という議論だ。人々がPCよりスマートフォンやタブレットを使って、モバイルネットワーク経由でインターネットを利用するようになると、そもそもインターネット接続環境とその世界の中でのIDたるドメイン名やプロバイダーのメールアドレス(POP/SMTPによるメール配信システムのアカウント)を提供していたISPの意味や役割も変わらざるを得ないからだろう。
すでに、プロバイダのメールアカウントを取得しなくても、Webメールをはじめ、各種SNSやインスタントメッセンジャー、企業向けグループウェアやクラウドサービスプロバイダーによるコミュニケーションプラットフォームが一般化している。若い世代が固定電話をもたず携帯電話だけで済ませているように、ISPでブロードバンドサービスの契約でプロバイダメールが与えられていてもそれを使わず、GmailやSkype、LINEのアカウントだけで生活・ビジネスをしている人もいまや珍しくない。
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