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- 2015/10/19 掲載
クールなスタートアップは今、シリコンバレーを目指さない 篠崎彰彦教授のインフォメーション・エコノミー(67)
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シリコンバレーではなくサンフランシスコ
新興ハイテク企業の本拠地といえば、サンノゼやパロアルトといったベイエリア南部に位置するシリコンバレー地区を思い浮かべるだろう。ところが、現在は、そこから60Kmほど北に位置する観光都市としても有名なサンフランシスコ市で新興企業のオフィス拡張が活発になっている。
ただし、広大な敷地が広がる郊外型のキャンパスやオフィス地区では、日々の活動に車を使った移動が不可欠であり、人口密度の高いニューヨーク市やサンフランシスコ市のように、公共交通機関の利用や徒歩による行動範囲で密度の濃い生活を楽しむことは難しい。
仕事を離れてオフィスを一歩出ると、気軽に充実した食事やショッピングを楽しめるという、日本の都市であれば当たり前の「潤いある生活」で魅力に欠ける面があるのだ。この点では、確かにサンフランシスコの魅力は群を抜いており、それが、新興企業によるオフィス拡張の動きに繋がっているようだ。
日米ともに人手不足、優秀な若い人材の争奪戦
人手不足は、海の向こうのアメリカも同様で、特にハイテク企業では、優秀な若いエンジニアの獲得競争が激化している。企業が求める若いエンジニアは、仕事ばかりでなく、食事やショッピングから観劇などのナイトライフに至るまで、楽しい時間が過ごせる都市での生活を好むため、商業や娯楽サービスが充実しているサンフランシスコの中心部に住みたがる。
グーグルなどの大手ハイテク企業が、サンフランシスコ市内から社員専用のシャトルバスを用意してシリコンバレーのオフィスまで約1時間の通勤手段を確保しているのはそのためだ。
ところが意欲ある若いエンジニアは、いくら快適とはいえ、バスに揺られて家と会社とを往復するような生活に満足せず、職住接近の生活を送りたいと考えている。そこで、ツイッターなど多くのハイテク企業がサンフランシスコ市内にオフィスを構え、スペースを拡張しているわけだ。
【次ページ】日本とは異なるベイエリアの躍動感
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