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- 2017/09/11 掲載
マッキンゼーが報告、デジタルによる「働き方改革」3つのポイント 篠崎彰彦教授のインフォメーション・エコノミー(90)
篠崎彰彦教授のインフォメーション・エコノミー(90)
好景気でも0%にならない失業率
そもそも、失業には、景気の変動で生じる「需要不足失業」のほかに、企業が求める人材と求職者の技能や属性が一致しないことで生じる「構造的失業」、さらに、採用企業や求職者がそれぞれ相手を探すのに時間と労力を要することで生じる「摩擦的失業」の3つがある。
なぜなら労働市場は、マクロ経済学でお馴染みの3大市場(他に財サービス市場と金融市場)の中で、特に「情報の非対称性」が問題になりやすいからだ。そのため、どんなに好景気でも、情報の問題が解決されない限り、失業率は決して0%にならない。
デジタル・タレント・プラットフォームの効果
情報技術の進歩は、この問題の改善に大いに貢献する。それが、「デジタル・タレント・プラットフォーム」の形成によるマッチング機能の向上だ。「マッキンゼー報告」では、情報技術を巧みに活用することで、検索能力やスクリーニング機能が飛躍的に高まり、透明性の高い効率的な労働市場が生まれると分析されている。同報告によると、アメリカでは家庭内にとどまる子供を持つ女性の4分の3は、柔軟な働き方が可能なら仕事に就くと答えている。こうした人材に能力に合った雇用のマッチングが迅速かつタイムリーにできれば、摩擦的失業や構造的失業の問題が改善し、適材適所の資源配分による生産性の向上で成長が促されるだろう。
「デジタル・タレント・プラットフォーム」で労働市場が効率化すれば、就職を諦めていた人材の労働参加率が高まってGDPの押し上げ効果となるばかりでなく、労働市場の透明性が高まることで、途上国に多くみられる「インフォーマル」な労働を正規の労働市場に導き出すとも考えられる。
技術が可能にする「新しい働き方」
さらに情報技術の活用が新しい働き方を促す点も見逃せない。独立した個人事業者としての働き方だ。個人による独立自営の仕事は、プロ野球選手やフリー・ジャーナリスト、脚本家など以前から存在していたが、今ではその領域がどんどん広がっている。アメリカやEUでは、生産年齢人口の2~3割がインディペンデント・ワーク(Independent Work)に従事しているという。興味深いのは、その7割は自ら選んでこうした働き方を実践していると指摘されていることだ(残る3割は次の職を見つけるまで必要に迫られての仕事とされる)。
「働く」といえば「企業で雇われる形」を思い浮かべがちだが、これは工業の時代に企業という仕組み肥大化したことによるもので、ギグエコノミーが広がる情報の時代には、新しい働き方が生まれているのかもしれない。
実際、インディペンデント・ワーカーの15%が、配車アプリで有名な米国のUberや中国のDidi、手作り販売サイトのEtsyなど「デジタル・プラットフォーム」を利用した活動に携わっており、その割合は急速に高まっているとされる。
【次ページ】まったく想像できない新しい仕事の創出
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