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2015年06月19日

なぜ長崎県平戸市が、ふるさと納税「日本一」なのか:篠崎彰彦教授のインフォメーション・エコノミー(63)

ふるさと納税は、国民の一人ひとりが選んだ地域に需要を生み出し、経済の活性化に貢献している。しかも、地元の生産者は、単に特産品の生産を増加させるだけでなく、これを機に、手付かずになっていた業務のIT化を実現するなど、新しい一歩を踏み出すさまざまな動きを加速させている。今回は、2014年度の寄付額が全国1位となった長崎県平戸市の事例を取り上げて、地場産業の自立を促す地方創生にどう活かせるかを考えてみよう。

執筆:九州大学大学院 経済学研究院 教授 篠ア彰彦

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長崎県平戸市は九州本土北部の沿岸部に位置する田平町と周辺の多数の島々で構成されている

(写真提供:平戸市)

ネットの活用で寄付申込みが1000倍に急増

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 長崎県北西部に位置する人口3万4千人の平戸市は、2014年度にふるさと納税の寄付を14億6千万円集めて全国一位となった(2014暦年では12億8千万円)。

 平戸島とその周辺を行政区域とする平戸市は、農業、漁業、観光が盛んな地方都市だが、1955年に7万人を超えていた人口は、現在3万4千人に減少している。2013年度の市民税や固定資産税などを合わせた市税は約27億円で、ふるさと納税による寄付額はその半分以上の規模だ。

 もちろん、当初からこれほどの寄付が寄せられていたわけではない 。2008年度に制度が創設されたころは、全国の平戸出身者らを中心に呼びかけを行っていたが、思うような効果は得られず、2012年度までは申込件数が年間24〜37件、金額は年間85〜240万円に過ぎなかった。

 そこで、2013年度から若手の担当者を中心に、地元の事業者を巻き込んだカタログの発行やポイント制、クレジットカード決済などの導入準備を進めた。

 2013年8月にはお礼の特典を掲載した「ふるさと納税カタログ」のリリースに合わせて、民間のポータルサイトである「ふるさとチョイス」に情報の掲載を開始したところ、連日のように問い合わせが寄せられ、8月の1カ月間でそれまでの1年分に匹敵する27件の申し込みがあった(図1)。その結果、2013年度は1,467件、2014年度は36,967件の申し込みへと1000倍に急増し、寄付額で日本一を達成したのだ。

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図1 平戸市のネット掲載とその後のふるさと納税の推移


地元生産者を巻き込んだ活動で雇用と福祉にも貢献

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平戸を代表する草原「川内峠」。標高約200メートルにあり、東に九十九島、北に玄界灘、西に東シナ海をのぞむ

(写真提供:平戸市)

 準備の過程では、以前から販売用のカタログを作っていた水産加工品の協同組合「平戸瀬戸市場」や市の商工物産課など、外部の団体や市役所内の別の部署との連携を意欲的に行った。

 特典の物産を取り扱う団体として、当初は海産物を扱う協同組合(特典数26種)のみだったが、2014年6月からは、野菜を扱う農事組合法人「ひらど新鮮市場」、商工会議所、観光協会を加えた4団体(特典数83種)に広がった。

 こうした取り組みは地元の雇用にも良い影響を与えているようだ。今年3月に筆者らが行った現地調査によると、申し込みの増加に対処すべく、市役所は担当職員1人体制から担当職員2人とパート職員は3名(注文が増える年末は5名)体制へと拡充したようだが、地域全体としての効果はさらに大きく、18名の雇用が増加した。

 野菜を扱う農事組合法人では、特典品がほぼ毎日発送されるようになり、以前の3人体制では業務が回らなくなったため、地元の福祉施設に依頼してお礼状の封入作業などで障がい者雇用を10人増やしている。

【次ページ】地場生産者にもたらされた意識変化

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