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  • 2017/07/13 掲載

雇用の未来を占う「マッキンゼー報告」から何が読み解けるか 篠崎彰彦教授のインフォメーション・エコノミー(88)

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ビッグデータ解析、モノとの連携(IoT)、人工知能(AI)、ロボットの実用化は、新ビジネス創出の有力な原動力だ。その一方で、「技術との競争」により既存の雇用の大部分が高い確率で消滅するという衝撃的な試算もあることから、その将来像には不安や懸念も少なくない。今回は、コンサルティング会社の米マッキンゼーが5月に発表したレポート取り上げて、雇用をめぐるグローバルな現状を概観してみよう。

九州大学大学院 経済学研究院 教授 篠崎彰彦

九州大学大学院 経済学研究院 教授 篠崎彰彦

九州大学大学院 経済学研究院 教授
九州大学経済学部卒業。九州大学博士(経済学)
1984年日本開発銀行入行。ニューヨーク駐在員、国際部調査役等を経て、1999年九州大学助教授、2004年教授就任。この間、経済企画庁調査局、ハーバード大学イェンチン研究所にて情報経済や企業投資分析に従事。情報化に関する審議会などの委員も数多く務めている。
■研究室のホームページはこちら■

インフォメーション・エコノミー: 情報化する経済社会の全体像
・著者:篠崎 彰彦
・定価:2,600円 (税抜)
・ページ数: 285ページ
・出版社: エヌティティ出版
・ISBN:978-4757123335
・発売日:2014年3月25日

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「技術との競争」は労働環境に何をもたらすのか
(© Rawpixel.com – Fotolia)


雇用の将来像を考えるマッキンゼー報告

 技術体系の転換期には、それまで当たり前だった仕事が不要になるのは避けようがない。とりわけ、多目的技術のITは革新の影響が広範囲に及ぶため、さまざまな領域で「技術との競争」が生じ、雇用が奪われるとの議論が盛んだ。

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 そんな中、今年5月にMcKinsey Global Instituteから“Technology, jobs, and future of work”というタイトルの興味深いレポートが出た(Manyika[2017])。

 技術革新は、生産性と経済成長、効率性、安全性、利便性を確実に高める一方で、雇用、技能、賃金そして「労働の本質」について難しい問いを投げかけている、との問題意識から、さまざまな動向を読み解くための基盤を提供するのが目的だ。

 その内容は、第1に、雇用をめぐるグローバルな現状認識、第2に、自動化など技術が雇用に与える影響、第3に、デジタル化の課題と可能性で、全11項目にとりまとめられている。このレポートを参考に、まず今回は、雇用、賃金、技能に関する現状を概観してみよう。

職場で求められるスキルは学力だけではない

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McKinsey Global Instituteが発表した“Technology, jobs, and future of work”は雇用をめぐる興味深い視点が記載されている
 レポートによると、米国やEUでは、労働市場から退出している「未利用」の人口が2億8500万人も存在するという。失業に加えて、こうした未利用の「過少雇用」も含めると、世界全体では生産年齢人口(Working-age population)のうち、なんと30~45%が「不稼働」の状態にあると試算されている。

 その要因の一つは、教育にあるといえそうだ。不稼働労働のうち、失業は若年層に顕著な問題だ(他方、過少雇用は日本も含めて女性に顕著な課題)。マッキンゼーの調査では、エントリーレベルの職が埋まらない理由として、採用企業の4割が能力の欠如を挙げている。この割合は、新卒者では6割に達する。

 問題になるのは、科学、技術、工学、数学などいわゆるSTEM(Science, Technology, Engineering and Mathematics)教育だけでなく、コミュニケーション、チームワーク、時間厳守といったソフトなスキルだと指摘されている。

 前回の連載で触れたように、職場で求められるのは、正解を速く見つけるといった学力だけではなく、分業を担う一員として、さまざまな相手とかかわりながら、意思疎通したり、配慮したりする「社会的知性」ということなのだろう。

【次ページ】これから求められる人材の資質は何か

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