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- 2015/04/17 掲載
熊本県人吉市のハラール対応による地方創生の試みから何を学ぶか:篠崎彰彦教授のインフォメーション・エコノミー(61)
中央大学国際情報学部教授/九州大学名誉教授
九州大学経済学部卒業、九州大学博士(経済学)。経済企画庁調査局委嘱調査員、日本開発銀行ニューヨーク駐在員、ハーバード大学イェンチン研究所客員研究員、九州大学大学院経済学研究院教授等を経て2026年より現職。経済財政諮問会議「成長力加速プログラム・タスクフォース」委員、内閣府経済社会総合研究所主任研究官、総務省参与、社会情報学会理事・同評議員、九州大学経済学会会長などを歴任。貿易奨励会優秀賞、テレコム社会科学賞、ドコモ・モバイル・サイエンス賞などを受賞。専門は情報技術革新の経済効果分析。
・著者:篠崎 彰彦
・定価:2,600円 (税抜)
・ページ数: 285ページ
・出版社: エヌティティ出版
・ISBN:978-4757123335
・発売日:2014年3月25日
過去を省みて今後の潮流を読む
地域経済の活性化は、以前から長く議論されてきたことであり、重要なことは、一時的な効果ではなく「持続可能な」具体策に着手することであろう。高度成長期は、企業や産業を誘致することに力点が置かれ、低成長に入ってからは、公共事業によるテコ入れが盛んに行われてきたが、現在の企業戦略や財政事情に鑑みて、こうした方策は、以前ほどの効果は期待できそうにない。
なぜなら、従来の路線では、人件費や土地代の安さ、あるいは、税金の低さを競い合ったり、国の計画をもとに画一的な事業が各地で展開されたりしがちで、必ずしも、それぞれの地域が長い時間をかけて、地理的・歴史的に築いてきた特性を充分に活かしきれなかった面があるからだ。
たびたび語られてきた活性化策を「絵にかいた餅」で終わらせないためにも、過去の反省に立ち、時代の潮流を読み取ることが大切だ。今後は、地元の特徴や個性とその強みをよく再認識したうえで、「グローバル化と情報化」の波にうまく乗ることが欠かせない。
内なるグローバル化をキャッチした戦略
前回解説したように、このところ訪日外国人旅行者が大きく増加している。今年の春節には、中国人旅行者の“爆買”が注目されたが、実は、この他にも、インドネシアやマレーシアなど、世界で最もイスラム教徒が多い地域の東南アジアから来日する旅行者も増えている。
周知のとおり、イスラム圏では、豚肉とアルコールはタブーであり、食材は「ハラール」という特殊な手順の処理で提供する必要がある。ところが、日本には「ハラール」対応できる食肉加工施設が実はあまり多くない。
国内には、約200か所の食肉加工工場があるとされるが、そのほとんどは、豚肉と牛肉の両方を処理していて、牛肉だけの加工施設は10か所程度といわわる。しかも、ハラール対応の施設はほんのわずかで、そのひとつが人吉市の隣町の錦町(人口1.1万人)にある。
人吉市はそこに着目し、関連する企業などと連携してハラール対応の食材を提供する拠点にしようとしているのだ。
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