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  • 2012/09/12 掲載

失業と新規雇用が同時に起こる?イノベーション時代の「雇用の断層」 :篠崎彰彦教授のインフォメーション・エコノミー(46)

労働市場から退出した中高年男性

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企業という組織は、技術(テクノロジー)と労働(ワーク)が生産活動のために出会う「結節点」だ。技術が変化するなら、労働する側(ワーカー)もそれにうまく適応することが求められる。高度成長期の日本のように、人材確保が難しい場合や時間の余裕がある場合は、社内で一から訓練していく連続的な方法も有効だろう。だが、イノベーションのスピードが速く、旧来の仕組みが劇的に変わる時代には、これまでの方法を根本的に改める必要に迫られそうだ。
これまでの連載

企業は技術と労働の「結節点」

 イノベーションの時代に「雇用不安」と「所得の二極化」が同時にみられるのは、技術と労働の結びつきに「不連続な変化」が生じやすいからだ(第43回第44回第45回参照)。産業革命後の近代社会では、生産活動の多くはヒトが素手で行うわけではなく、何らかの形で技術を利用している。この生産活動で重要な役割を果たす企業という組織は技術と労働が出会う場であり、両者をつなぐ「結節点」だ。

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図表1 企業は技術と労働の結節点

 もし劇的な技術変化が起きれば、旧技術と結びついた労働は急速に陳腐化するため、新技術に適応した労働への転換が迫られる。連載の第32回で解説したように、情報技術革新の波にのって、民間企業が積極的なIT投資を行えば、技術と労働の結節点に新しいテクノロジーが次々と導入され、仕事の仕組みや組織のあり方は大きく変わる。したがって、企業という組織で仕事をする労働の側も新技術にうまく適応しなければならないのだ。

 前回解説したように、新技術への適応にはふたつの方法がある。ひとつは、ラーニング・バイ・ドゥーイング(learning by doing)型の対応だ。これは、日々の仕事を実践していく中で古い技術に結びついていた労働者が学びを積み重ね、新技術にふさわしい能力を身に着けていくやり方であり、雇用の断層をともなわない「連続的」な適応といえる。

 労働者の確保が難しい場合や時間的に比較的余裕がある場合、しかも、ほかの競争企業も同じような条件にあるのなら、こういう方法は充分に有効だ。実際に、高度成長期の日本では、義務教育を終えた中学卒業の若者が「金の卵」として都市部に集団就職し、町工場などの中小企業で見習いから始め、年月をかけて技能を身につけ、日本の経済を支えた。

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図表2 技術と雇用の連続的対応

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