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- 2015/01/22 掲載
IT業界注目の4つの超大型プロジェクト、人手不足へ2つの対応策:篠崎彰彦教授のインフォメーション・エコノミー(59)
マイナンバー、ゆうちょ上場、電力自由化
2つの理由から堅調な需要が見込まれるIT産業
だが、ITという面からみると、2つの理由から比較的堅調な需要の増加が見込まれ、強気の展望もできそうだ。
第1に、日本では、2008年のリーマンショックから景気が回復する過程で、2011年には東日本大震災が、また、2014年には消費増税などが続いたため、過去5~6年の間大型プロジェクトが凍結されてきた。その結果、情報システムの更新が各社とも積み上がってきている。
その間に、ビッグデータやIoT(モノのインターネット)などの新しい技術潮流が生まれ、幅広い業種にその影響が及んでいる。消費増税の前後に漂っていた不透明な状況を乗り越え、企業業績も好調を続けている。5年後の2020年には東京オリンピックというナショナル・ビッグ・イベントが待ち構えており、投資に踏み切る上でよいタイミングを迎えている。
こうした基調要因に加えて、日本では今後数年間は、ITへの投資が避けて通れない大型プロジェクトが目白押しという特殊事情も要因も控えている。これが堅調な需要が見込まれる第2の理由だ。
4つの大型プロジェクト
注目されるのは、次の4つのプロジェクトだ。1つ目は、マイナンバー(社会保障・税番号)制度の導入、2つ目は電力自由化、3つ目は日本郵政(ゆうちょ銀行)の株式上場計画、4つ目は銀行システムの刷新だ。いずれも数千億円単位のシステム投資が必要といわれており、合計すると今後数年間で兆円単位の需要を生み出すと考えられる。
まず、2013年5月に成立したマイナンバー制度は、2016年1月の利用開始に向けて今年の秋には社会保障と税の共通番号が通知され、2017年1月には政府機関での情報連携、同7月には地方自治体で情報連携が開始される予定だ。そのためのシステム開発が急ピッチで進められている。
2016年の全面自由化に向けて動き始めた電力業界では、既存の大手電力会社が域外販売に乗り出すほか、異業種からも多くの参入が計画されている。
1社で需給調整がコントロールできたこれまでの地域独占体制とは異なり、発電設備の稼働状況や各利用者の需要動向をリアルタイムでモニターするシステム開発が不可欠だ。2015年4月に発足した電力広域的運営推進機関は、そのための基幹システムづくりに取り組んでいる。
【次ページ】グループ全体で4,900億円のシステム投資
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